農家専門ウィキペディアがいよいよ登場!?
2016/11/16
“疑心暗鬼”な消費者、“暗中模索”な農家。両者を繋ぎ農業を盛り上げるSNSが登場!農家の見える化でファンが生まれ、購入や農作業等の具体的な応援に繋がる仕組みだ。
消費者と農家を繋ぐWEBサービスといえばファーマーズマーケット、定期宅配、アグリツーリズム等のオンライン・マーケットプレイスをイメージする方もいるだろう。ところが今回紹介する「my菜(マイサイ)」はそうした取引前後でも、農家と消費者が繋がる機会を作り出すという。その開発をする株式会社ファームプロ代表の竹内さんに、開発経緯と描く未来を聞いた。
竹内さんは前職で家庭菜園SNS「菜園ナビ」を発案・運営。2015年に株式会社ファームプロを設立しmy菜を開発。
「my菜は“農家を紹介するウィキペディア”。農家さんがどんな想いでどう作物を作っているのか、消費者も参加して皆で作る農家紹介がmy菜のコアです」。
さらに農家の取引先情報や困りごと情報も登録できるのだという。そうしてmy菜が目指すのは、外食先やスーパーを作り手で選べたり、ファンになった農家で農業体験ができたりと、消費者が農家を楽しく応援できる仕組みだ。これは農家にもメリットがあるだろう。消費者との繋がりをより明確にイメージできればモチベーションも上がり、ニーズを捉えた販売もできそうだ。my菜は現在開発中で、この秋にβ版として一部機能をリリース予定だという。
my菜開発のきっかけは竹内さん自身の体験からだ。
「好きな農家さんの野菜を食べるのは美味しくて楽しいので、この経験をいろんな人にしてもらいたいと思いました。例えば果物を贈る時に、どんな作り手でどこにこだわっているのかも伝えるとすごく喜んでもらえます。また自分が好きな農家さんの野菜を扱う飲食店は他の食材もこだわっていて美味しいし、人を連れて行って作り手の話をすると喜ばれます。そこで農家さんの情報をシェアして、皆が美味しくて楽しい経験をできるプラットフォームを作ろうと考えました」。
その後竹内さんはmy菜のアイデアをビジネスコンテストで発表し、グランプリを受賞。それが全国を対象にした「世界農業ドリームプラン・プレゼンテーション」だ。その時の経験を元に、竹内さんは九州版として「九州農業ドリームプラン・プレゼンテーション(九州農業ドリプラ)」の立ち上げを進めている。2017年夏に福岡国際会議場で開催予定で、今年10月からエントリーを受け付けるという。
「エリアを限定することで、プレゼンターや協賛者の間で新しい事業や取引が生まれやすくなるのでは。全国版では距離的に遠いために実現が難しいケースがあったんです。今回は生産から販売までいろんな農業分野の参加者を募って、新しいビジネスを実際に作れる機会にしたい。消費者にとっても、農業と食の今とこれからが分かる面白いイベントになるはずです」。
my菜のユーザーは当面の間、この九州農業ドリプラの協賛者に限定するという。農業を積極的に応援する消費者と農家のコミュニティからスタートし、徐々にコミュニティを育てながらサービスを拡大していく考えだ。
九州農業ドリプラに協賛する「ぶどう園OKURA」の大蔵さんに、my菜の開発進捗を伝える竹内さん。
九州農業ドリプラの協賛は農家と消費者がWIN-WINになる仕掛けになっている。竹内さんはここにも「農業を楽しく応援したい」という想いを込めたという。協賛農家にはmy菜を通じて農産物を販売できる特典が付き、協賛消費者は協賛農家の作物がもらえるのだ。そうしてmy菜や九州農業ドリプラで繋がりが生まれたら、消費者には農作業での応援もぜひして欲しいと竹内さんは考えている。というのも「自分の好きな農家さんを手伝って働いたものを食べるのは美味しいし、幸せ」だから。農業を応援する楽しみを広げようとするmy菜の今後に要注目だ。
Photo: Misa Shigematsu Text: Shigemichi Itamura
『AGRI JOURNAL』 vol.1 より転載