イチゴを圃場で選果・パック詰め? ウェアラブル選果の実用化に挑戦中!
2025/09/22

イチゴ生産に関わる労働のうちの3割を「選果・調整=出荷作業」が占めている。今後も続くに違いない人手不足対策として開発されている最新技術を搭載したデバイスを紹介しよう。
提供 遠藤みのり(岡山大学)・重宗宏毅(芝浦工業大学)
関連記事:イチゴ栽培を効率化!『夏のしずく』『恋みのり』に見る最新省力化手法
作業時間を14.5%短縮!
ウェアラブルデバイスがイチゴ収穫を革新
今、注目の技術が、農研機構・芝浦工大を中心とする、いちごの輸出拡大SA2-101Lコンソーシアム(代表機関は農研機構野菜花き研究部門)が開発している「ウェアラブル選果デバイス」。
研究グループは大胆に発想を転換した。果実の揃いが良く、傷みにくい品種『恋みのり』などでの利用を前提として、圃場でのイチゴの選別・パック詰めに挑んでいる。作業時間短縮効果について、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域で講師を務める遠藤みのり先生(元・農研機構)は言う。
「2023年4月に高設ベンチで栽培された『恋みのり』で実証を行いました。『ウェアラブル選果デバイス』を利用して圃場でパック詰めすることで、一般的な作業(バットに収穫→作業場で選果してパック詰め)と比較して、作業時間は14.5%短縮されました。本デバイスを利用することで、熟練作業者でなくても収穫・パック詰め作業を担うことができるのもメリットです」。
作業時間計測は、西日本農業研究センター内のイチゴ単棟ハウスにおいて行った。作業者1名。(提供 遠藤みのり(岡山大学)・重宗宏毅(芝浦工業大学))
デバイスは磁石・センサー・制御部・バッテリーなどから構成される。イチゴをつまむ際に指の間隔に合わせて発生する磁力の差異を元に大きさを推定し、その大きさから重量推測、規格判別を行う。デバイスの使用により作業時間は14.5%短縮された。
見逃せないのが、損傷抑制効果。収穫からパック詰めを終えるまでの過程でイチゴに触れる機会が激減するため、オセ・スレの発生を大幅に抑制できる。
「使いやすさの向上、品質データを収穫と同時に収集する機能の追加などができると普及につながります。また、選果ロボットの指に搭載できないか、とも考えています」と遠藤先生は将来を展望した。今後の開発に期待したい。
AGRI JOURNAL vol.35(2025年春号)より転載