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3分でわかる農家トレンド『ソーラーシェアリング』

農作物をつくりながら、電気までつくってしまう──それが、これからの農業スタイル「ソーラーシェアリング」だ。太陽の恵みを余すところなく活かし切る、環境調和型システム。そこには、様々な日本の課題を解決する、大いなる可能性が満ちている。

ソーラーシェアリングとは……

ソーラーシェアリングは、別名「営農型太陽光発電」とも称される。耕作地の上に太陽光パネルを設置して、1つの土地で農業と発電事業を同時に行おうという取り組みだ。

農地の上に太陽光パネル
それが新しい農村の風景になる

農家の経営安定と自然エネルギーの普及を両立させる一石二鳥のシステムとして、いま多方面から期待を集めているソーラーシェアリング。少し前までは、農地法の運用が厳しく、農地を農業以外に使うことは原則としてできなかった。しかし2013年、農林水産省が一定の条件のもと、これを認める方針を打ち出したことで、着実に広まってきた。一般の認知度はまだまだ低いが、既に実証段階を終え、いまや日本全国1000ヶ所以上で導入されている。

作物に過剰な光は必要なし
パネルの下でもよく育つ

気になるのは、太陽光パネルの下で、農作物がちゃんと育つのかということだろう。しかし、心配はご無用。ソーラーシェアリングでは、一定の間隔を開けて太陽光パネルが設置されるので、生育に必要な光は十分に降り注ぐ。どの程度の間隔で太陽光パネルを設置し、どの程度の遮光率を確保すれば良いのかも実証されている。

そもそも植物は、種類ごとに必要とする光の量に上限があり、強すぎる光は成育の役には立っていない。普通に栽培されている大半の野菜は、ソーラーシェアリングによって悪影響を受けることはない。むしろ遮光することで、成育状況が良くなるものも少なくない。

日本農業の課題と
エネルギー問題を一挙解決

長らく日本の農業は、儲からない職業とされ、後継者不足に悩まされてきた。耕作放棄地は増え続け、農村地域の活性化はままならない。一方で、地球温暖化が進み、自然エネルギーの普及加速化は世界的な要請だ。特に日本にとっては、エネルギー自給率を上げるためにも、自然エネルギーへの転換は不可欠だろう。ソーラーシェアリングには、問題解決への大きな可能性が秘められている。

農家は、農地を守りながら、発電事業で安定した収入を得ることができる。農村は、環境を犠牲にすることなく、活力ある地域を蘇らせることができる。そして日本は、自然エネルギー導入拡大への新たな道筋を描くことができるのだ。

用語解説

太陽光パネル(太陽電池モジュール)
太陽の光を電力に変える、発電システムの主役。ソーラーシェアリングでは、作物に 適度な光があたるよう、すき間を空けて設置される。

パワーコンディショナ
太陽光パネルで作られる「直流」の電気を、電力系統(電線)に流せる「交流」に変換する設備。

架台(支柱)
太陽光パネルを支える骨組み。トラクターなどの農業機械が支障なく動けるよう、充分な間隔をあけて立てられる。


illustration: Chisato Hori text: Kiminori Hiromachi

AGRI JOURNAL vol.05(2017年秋号)より転載

 

 

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