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植物のしおれ状態をAIで見える化! 的確な水やりで高糖度トマトの安定生産・省力化に

高糖度トマトの生産において、重要で作業負担の大きい潅水管理。その負担を大きく取り除く、クボタが開発した自動潅水制御システムの内容と、導入者の声を紹介する。

プロ農家の潅水技術を
忠実に再現

長年の経験と勘が重要となる高糖度トマトの生産。植物のしおれ状態を観察しながらの潅水管理となるため頻繁に葉の状態を確認する必要があり、生産者の負担は大きい。また潅水管理に要する時間は多く、他の作業に十分に手をかけられないといったこともよく聞く悩みのひとつだ。そのような課題を解決するためにクボタが開発したのが、しおれ検知式自動潅水制御システム「Hamirus(ハミルス)」だ。

Hamirusでは生産者の代わりにカメラとAIによって葉のしおれ状態を見える化し、生産者の設定した潅水タイミング(しおれ率)で潅水が実行される。目標糖度に合わせてしおれ率を設定し、安定した高糖度トマト生産を実現することが可能だ。また常に作物を監視する必要がなく、潅水管理の時間を削減できる。人の眼ではわからない微細なしおれも検知するため、目が行き届かないと生じやすい「しおれの見過ごし」を回避することができ、減収・品質低下の防止にもつながる。


生産者のイメージ通りの
栽培が可能に

Hamirusでは、しおれ監視カメラが植物を一定時間ごとに撮影し、撮影した画像データを元にAIを利用しながらしおれ率としてグラフ化。目標糖度に合わせて任意に設定したしおれ率になると自動で潅水が実施される。系統ごとに、潅水時間・しおれ率を変えることも可能なので、高品質重視や収穫量重視など目的に応じた潅水ができる。最大6台のカメラでハウス内を測定することが可能だ。

カメラ下での作業などが画像分析に影響しないのか気になるところだが、カメラの領域に人が通ったり、つる下ろし・誘引・葉かき等で草姿や葉の茂り具合が変化した場合でも、計測への影響がないよう自動的に補正するので安心だ。

日中はスマホからリアルタイムに植物の状態を確認可能なため、ハウスから離れたり休日を取得することが可能になる。常に葉の状態を気にかけるといった精神的な負担が軽減されることは、生産者にとって大きなメリットではないだろうか。

 

栽培計画を実現する潅水と
作業の負荷軽減で高収益化

潅水パターンは次の4つ。


1.自動潅水
2.手動潅水
3.スケジュール潅水 
4.臨時潅水機能

臨時潅水機能は、曇天や雨天時など一定期間しおれがなく自動潅水が実行されない場合にも、一定の間隔で潅水を行う機能。臨時潅水機能を応用し、普段は設定した間隔で定期的に潅水し、急な晴れ間や温度上昇で急激にしおれた時だけ自動潅水するような使い方も可能だ。

潅水履歴はしおれ具合と共に記録することができる。従業員へ数値に基づいた的確な潅水タイミングを伝達できるようになり、これまでの「経験と勘の栽培」から「データに基づいた栽培」、そして技術伝承が可能になる。

栽培管理に
なくてはならない存在

農業ではなかなか休みが取れない問題があるが、沖縄県で高糖度トマトを生産するクボタファーム糸満では、Hamirusの導入により休日ができたという。
「植物を常時見ながら潅水管理を行う必要がなくなり、休みが取れるようになりました。難しい水の管理をHamirusが人間に代わってやってくれるので、専門家を一人雇っているのと同じことになります。一人雇用したときの年間コストに比べると、非常に安価だと思います」と農場長の山元部長。

栽培担当の新垣さんは、Hamirus導入前は仕事時間の半分以上を潅水管理に使っていた。最初の頃は水やりを覚えるのに一生懸命で作業どころではなかったという。それが、Hamirus導入により潅水にかける時間が大幅に減ったことで、芽かきや葉かきなど他の作業に集中できるようになり、水管理のストレスから解放された。
「水やりは5年10年かけてできるようになるものだと思いますが、それが自動でできるという素晴らしさ。休みのときでもスマホから植物の状態を確認できるので、とても助かっています」(新垣さん)

沖縄は天候が頻繁に入れ替わる気象条件のため、急な植物のしおれが発生することもあるが、臨時潅水機能によって急なしおれにも対応することができている。
新垣さんは、「人が見るより高い精度で見てくれるので、疑う必要もありません」と話す。糖度も目標に近い数値が出ており、収量も1棟(約10a)で約10tの目標を達成できているとのことだ。
「皆さんがおいしいと言ってくれるものを、量的に安定して供給できるよう、今後も続けていきたい。そのためにはHamirusが不可欠です」(山本部長)

Hamirusはアイメックシステムの高糖度トマト栽培が対象ではあるが(2022年現在)、他の栽培システムや作物への適用拡大も検討中だという。
「高品質作物の安定生産、省力化に貢献したい」というクボタの施設園芸への挑戦に期待したい。

クボタファーム糸満 インタビュー映像はこちら

 

問い合わせ

株式会社クボタ
TEL:0120-131-391
※平日9:00~16:00(12:00~13:00を除く)

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