食品事故のリスクを下げる! 農家が知っておくべき「一般衛生管理」と「HACCP」とは?
2019/09/26
基本的な衛生環境を整え、維持する「一般衛生管理」と、食品が製造・加工されるうえでの全行程において、清潔を保つことを目的とした「HACCP」を同時に行うことで、消費者に安全な食品を提供できる。今一度見直し、食品衛生法に対応しよう。
一般衛生管理とは?
基本的な衛生環境を整え、維持する仕組み。HACCPによる食品衛生管理を行う際、この仕組みを整備する必要がある。施設内外の定期的な清掃などを指す「施設の衛生管理」、従業員の健康管理や衛生状態に関する「従業員の衛生管理」など、複数の実行項目がある。
HACCPとは?
食品が製造・加工されるうえでの全行程において、清潔を保つことを目的とした管理手法。製造・加工においてリスクとなる点などを見極め、問題が起きないよう徹底的にコントロールする。全部で12の手順が用意されているため、段階的に進めれば、初心者でもHACCPを完遂できるはずだ。
Step1
一般衛生管理
食中毒の発生をはじめとする食品事故により、人の生命が脅かされる場合もある。安全な食品を作り、消費者からの信頼を得るためには「一般衛生管理」を行うことが大切だ。難しく捉える必要はなく、当たり前にやるべき衛生管理を行うだけで「一般衛生管理」は守られる。当たり前にやるべき衛生管理とは、「整理」、「整頓」、「清掃」、「しつけ(習慣)」、「清潔」の「5S」。「5S」を合言葉にすれば、これらを習慣化しやすいはずだ。また、この「5S」に加え、「洗浄」、「殺菌」の「2S」も実施すれば、食中毒の発生をより遠ざけることができる。
一般衛生管理の方法・手順
1. 衛生計画の作成
(現場情報の整理・見える化)
2. 衛生計画の実行・運用
(ルールの策定と運用・実施)
3. 実行内容の記録・確認
まずは「見える化」からはじめよう!
上記の手順のうち、今回は最初に手をつけるべき現状の「見える化」についてポイントを紹介。衛生管理チームを作り、情報整理を行おう。
1.「製品概要」の見える化
製品関連情報を一覧化(名称・種類・原料包材情報・製品規格・表示・賞味期限・飲食利用方法・流通時注意事項など)
2.「製造工程」の見える化
加工や製造のフローを見える化する(工程フロー図・工程条件など)
3.「製造場所」の見える化
加工や製造場所や機器の配置を見える化する(配置図など)
4.確認作業
上記の整理された情報の現場確認・点検を行い、必要に応じて情報の修正を行う
Step2
HACCP
「一般衛生管理」と「HACCP」を同時に行うことで、「食品衛生法」の「HACCPに沿った衛生管理の制度化」を遵守できるが、事業規模によって「HACCP」の取り入れ方は異なる。
出典:「HACCP入門のための手引書(平成27年10月)」厚生労働省
中大規模の事業者には、12の手順に沿った「HACCP」の実施が求められるが、小規模事業者である場合、12の手順を忠実に行う必要はない。
しかし、12の手順をきちんと踏むことで、業務における生産性の向上、保健所による調査内容の簡略化といったメリットが得られる。「HACCP」を始めるうえで重要なのは、事業所にいる全員が項目を把握し、正しく実施すること。「HACCP」を事業所の方針に設定するのが、ファーストステップだ。
【おさらい】HACCPは、すべての食品事業者(製造・加工・調理・販売等)が対象!
教えてくれたのはこの人!
株式会社津々浦々
森崎秀峰さん、小林真由子さん
「地域と共に、食の未来をつくり、届ける」をコンセプトに、食品会社へのコンサルティング事業、地域産品の食品販売支援事業などを手がける。商品情報をバイヤーに発信するデジタルカタログ「あきnow」も運営。
text: Yoshiko Ogata
AGRI JOURNAL vol.12(2019年夏号)より転載