JA初! 農産物の販売戦略を考える研究会が誕生!
2017/01/06
作った農産物を、どのように売っていくのか? JAグループではいま、生産者の立場に立った取組みだけではなく、買い手の視点を重視した取組みを進めていこうという機運が高まっています。
多様なバックグラウンドで
新しい形の農を生み出す
いま注目を集めているのが、今年8月に立ち上げられたJA茨城県中央会の「マーケッティング研究会」です。
JAの研究会というと、従来はJA関係者だけで行われることがほとんどでしたが、この研究会は違います。40人ほどのメンバーのうち農協関係者は半分もおらず、残りはJAに直接関係のない人。
食品加工メーカー、流通業者、地元小売業者、あるいは元ソムリエの新規就農者など食に関わる様々な立場の人々です。こうした人たちに、農産物をどんな形にすれば活用しやすいかを提案していただき、買い手のニーズを生産サイドにフィードバックしようというわけです。
一次産業・二次産業・三次産業の人たちが、農産物を買ってもらうための戦略=出口戦略を一緒になって考える、これまでにない試みです。
まだ始まったばかりの取組みですが、地元の製菓メーカーさんとJAが商品の開発にあたり直接に対話を始めるなど、これまでにないコラボレーションの動きがスタートしています。
お菓子の材料にしやすいフルーツの生産、食材の魅力を引き出す加工、作ったお菓子を売るための工夫など、それぞれの視点が結び付いた大掛かりなプロジェクトになることが期待されています。
インターネットで
買い手とつながる
新しい流通は売り手と買い手のニーズがリアルタイムでわかる
マーケッティング研究会では、流通のデジタル化にも力を注いでいます。誰が何を作っているのか、誰が何を欲しがっているのかといった情報を、インターネットで簡単に検索できる仕組みを作ろうとしているのです。
農作物の「オーブンプラットフォーム化」、いわば農作物のマッチングサイトのようなものですね。開発を進めている大手ベンダーにも研究会に参加いただき、近いうちでのパイロット実験の開始も検討されています。
例えば、一般には流通しにくい規格外のイチゴの情報を公開する。それを目にした東京のお菓子屋さんが、ショートケーキ用のイチゴとして購入する。そんな風に、これまでのJAにはなかった新しい「流通」が生まれようとしているのです。
現時点では、JA茨城の取組みが先行していますが、既にスタートしている「福島モデル」のデジタル版でもあり、今後に向けて、愛知や福島にもオープンプラットフォーム構築に向けた検討の動きがあります。
将来的には、各地のJAがオープンプラットフォームを構築し、それらが連動して機能するようになることが理想でしょう。そうすれば、ある地域の不作を別の地域でカバーすることができるし、余った作物の買い手を広範囲に見つけることも可能です。インターネットですから、海外から買い手がつくことも期待できます。
新しい流通が、これからの農業を育んでいくことになるでしょう。
杉浦宣彦氏 Nobuhiko Sugiura
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
Text:Kiminori Hiromachi
※『AGRI JOURNAL』vol.1より転載