下水から肥料を生み出す自治体の挑戦!こうべ再生リンプロジェクトとは?【神戸市】
2026.08.12
リンは肥料の3大要素の1つと言われており、食料生産に不可欠な資源だが、現在、日本ではその多くを輸入に頼っている。その現状を打破するべく、神戸市では下水から効率的に回収し、肥料として有効活用する試みが早くから行われていた。今回はそのこうべ再生リンプロジェクトについて解説する。
持続可能な未来を目指す
神戸市の取り組み
2026年8月6日(木)、神戸市が取り組む「未来につなぐ持続可能なまちづくり」を説明するラウンドテーブルが実施された。神戸市は大都市でありながら、海や山といった身近にあり、コンパクトなエリア内で様々な魅力が集積されている。その魅力を未来につなげていくために、課題になっている空き家、空き地、資源など様々な課題に神戸市は積極的に取り組んでいる。そのうちの一つが「こうべ再生リンプロジェクト」だ。

下水からリンを回収して再利用する
こうべ再生リンプロジェクト
リンは作物の栽培に必要な肥料に利用され、農業には欠かせない肥料の一つだと言っても過言ではない。だが、日本ではその多くを輸入に頼っているため、食料安全保障上の課題となっている。事実、昨今の国際情勢を受けてリン酸アンモニウムの価格は高騰し、農家の負担となっている。神戸市は2011年からこの課題に取り組むべく、こうべ再生リンプロジェクトを実施してきた。
神戸市「未来につなぐ持続可能なまちづくり」ラウンドテーブル資料より
MAP法によるリン回収
神戸市はりん回収においてMAP法を採用している。MAP法とは下水に含まれるリンやアンモニアにマグネシウムを加えることで、「リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP:Magnesium Ammonium Phosphate)」の結晶として固形化させ、下水汚泥から効率よく回収する手法である。これによって肥料となるリンを効率よく回収するだけでなく、結晶化による下水道管内の閉塞のリスクを軽減させることができる。
出典:農林水産省特集「輸入原料に頼らない国内資源由来の肥料をつくる」
左の下水管ががリン除去・撤去処理なし。処理ありの右の下水管と比べると内側にびっしりと結晶が。これが悪化すると、下水道内を閉塞させるほどの結晶になり、破裂などの原因になる可能性も
作物に適した配合によって誕生
こうべハーベスト
こうして回収されたリンは不純物を除去し、洗浄、乾燥することで粉末状になった「こうべ再生リン」として生まれ変わる。これはリン、窒素、マグネシウムが豊富であるため、そのまま肥料として利用可能だ。だが、農作物によって最適な肥料バランスが異なるため、神戸市はそれに適した配合を実施するべく、農業事情に詳しい関係者(JA兵庫六甲、兵庫県神戸農業改良普及センター、市内の農業関係者など)と協議、肥料ニーズを収集することで肥料「こうべハーベスト」が誕生した。
これらの肥料は化学反応でリンの結晶を取り出す手法を採用しているため、不純物の影響を受けにくく、また年間を通じて安定した品質を確保している。従来の肥料と同等の肥効になるように設計・改良されている。現在は神戸市内の農家で使用され、肥料を地産地消し、10種類以上の野菜や米に適用している。
使用用途に合わせて配合した4種類のこうべハーベスト
進化するプロジェクト
現在、リン回収設備は東灘処理場に加え、2025年3月に新設された玉津処理場(西区)の市内2基でリン回収を実施している。さらに東灘処理場において、市内3基目(東灘処理場としては2基目)のリン回収設備の増設工事を行っており、2027年度には供給を開始する予定だ。これにより供給量は年間200tから300tに増加する見込みだ。今後は需要を見ながら年間の供給量を500tまで増やし、神戸市内だけでなく市外へも供給していくことを目標としている。
また、下水汚泥の処理の際に発生する「消化ガス」を利用した発電など、副産物の二次利用の拡大にも取り組んでいるという。神戸市は様々な形で持続可能な未来を目指している。今後の展望に注目だ。
神戸市「未来につなぐ持続可能なまちづくり」ラウンドテーブル資料より
取材・文:AGRI JOURNAL編集部
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