成功する農業!農福連携での『共有×可視化』の重要性
2018/07/04
作業スケジュール表というツールで
「共有事項」を効果的に「可視化」する
私たちは、週間・月間・年間のステップで共有の範囲を広げて、農福連携での業務を進めている。週間・月間については、作業スケジュール表を作成し、そのスケジュールを追って作業を行っている。
めぐみの里 社内の様子
作業スケジュール表(ツール)を作ることは、一見、面倒に感じるかも知れない。しかし、共有することの手間を惜しんでしまうと、全ての業務が場当たり的になってしまう。
作業スケジュール表の役割は、お互いが作業スケジュールを理解することだけに捉えてしまいがちだが、一番重要なのは、「スケジュール通りに進まなかった場合の挽回策を考える」ということである。
作業が遅れているのか、予定通りできなかった場合にどんな影響がでるのかは、こういった作業スケジュール表がなければ、意外にも把握できないものである。
業務の連携方法は未だに確立したと言い切れず、今も進化を続けているが、現時点で最良だと考えている方法について紹介する。
ポイント1.週間の作業スケジュールを共有!
私たちが取り組む農福連携の業務では、出荷作業を中心として考えている。農業生産の考え方は、それぞれの農業者によって異なるため、福祉事業者へ委託する作業において、何を中心にするかは、それぞれの農業者において考えてもらいたい。しかし利用者は、複雑ではなく、繰り返し行う作業が取り組みやすいだろう。
この中心作業を決めたら、今度は業務委託する作業において、週間スケジュールを考える。基本的に福祉事業者は必ずこの週間スケジュールを守る前提で業務を行う。成果を定めておくことで、「何となく作業する」ということを減らすためだ。
また、福祉事業者での作業は、基本的に「時間」で動くため、「時間内に取り組めた分でOK」という認識を持っている場合も多い。農福連携の中では「時間内にやれただけ」という考えを前提にしてしまうと、いつまでも、作業能力の向上に結びつけることができなくなってしまう。
そのため「出来高での評価=効率よく作業すること」に対して、福祉事業者の職員がいかに意識を高くもって取り組めるかが必要となってくる。逆に考えると、意識向上のためにもゴール設定(私たちで言うと出荷作業量)を定めておくことが重要だといえる。
そして、この週間予定は口頭での伝言ではなく、曜日ごとに作業量を示す表形式にしておく。状況によっては、その日の作業量が想定していたより進まないケースも出てくるだろう。そのため、その週間内で作業量のズレを修正できるということを念頭に置いて表を作成しておくと、イレギュラーな事態にも対応しやすいだろう。
<福祉事業者の週間作業イメージ>
① 週間予定の確認
→前週末に翌週の作業スケジュール表の作業内容(出荷量)を確認し、難しい点や疑問点があれば農業者へ確認しておく。
② 翌日のシミュレーションを行う。
→作業量や方法などを職員間で確認しておく。
③ 当日朝の状況を確認し、必要があれば農業者と共有する。
→人員数や利用者の体調を踏まえ、前日のシミュレーション通り進められるか確認する。
④ 午前作業が終わった時点で進捗状況やその他必要な情報があれば共有する。
→シミュレーションより作業が遅れている場合は何が原因(機械の問題・野菜の品質・体制など)なのかを分析し、必要があれば農業者へ相談をする。
⑤ 午後作業終了時の引き継ぎ
→作業が終わらなかった場合や予定数より多く在庫が出てしまった場合など、状況を細かく共有する。
⑥ ②に戻る。
ポイント2.月間の作業予定を共有!
週間スケジュールで、ある程度スムーズに進めるようになったら、今度は中心となる作業以外で、取り組むことが可能なものを考えていく。
農作業は時期によって、播種・育苗・定植・施肥・除草・収穫など、様々な作業がある。そのなかで、利用者が取り組みやすい作業を探っていく。当初は依頼が難しいと思っていた作業も、経験を積むことで任せられる可能性が見えてくる。
基本的に、週間スケジュールを中心として進めるなかで、余裕がある日があれば、月間スケジュールの作業にも取り組んでいくとよいだろう。月間の作業スケジュールでは、作業内容について事細かに決めるのではなく、ざっくりとした期限を決めておくと取り組みやすい。
例えば、5月末に6月の予定を立てるとする。その際に、6月15日頃までに〇〇圃場の除草を終わらせる、6月20日頃までに資材の片づけを行う、などといった具合だ。
月間のスケジュールは、ひとつの目安とし、天候や進捗具合によって、農業者と福祉事業者が相談しながら進めていくと良い。もちろんこの月間作業においても、ツールを利用する。カレンダー形式のものに期限を記入すると活用しやすいだろう。