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「AIって農業にも必要?」前職はベンチャー企業、就農して7年目の農家コラム【マシュー農LABO】

宮崎県新富町で露地野菜の栽培を行うマシューさんによる農業コラム『マシュー農(の)LABO』。7年前に就農したマシューさん、前職はベンチャー企業。異なる分野から農業の世界に飛び込んだからこその、新しい視点のコラム。第一回目のテーマは「AIって農業にも必要?」

ご挨拶

はじめまして、宮崎県新富町でさつまいもを6ha、大根や人参などの露地野菜を1ha栽培しているマシューと申します。
このたびアグリジャーナルで、【マシュー農(の)LABO】というコラムを執筆させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

簡単な自己紹介をさせていただきますと、私は就農して7年目の新米農家です。 前職はベンチャー企業で働いており、まさに文字通り畑違いの仕事をしていました。
しかし、異なる分野から農業の世界に飛び込んだからこそ、新しい視点での挑戦が可能だと考えています。

読者の皆様にとって有益な情報を、新しい挑戦とともに共有していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

<目次>
1.農家もAIの波にのるべき?
2.AIは敵じゃない!
3.ハードとソフト
4.AIと農業について話してみよう
5.忙しいを楽しいに

 

農家もAIの波にのるべき?

さっそく初回のテーマは「AI」です。AIを農家がどのように活用すべきなのか?使い方がわからない、使ったことがないという方に、ぜひ興味を持っていただきたいと思います。

農業界には有名なAIがありますよね。そう、「えひめAI」です。

私は就農当初から土作りを学ぼうといろんな書籍を読む中で、このえひめAIに出会いました。
えひめAI?! 「農家はもうAIを活用しているのか」と壮大に勘違いした思い出があります。

ご存知の方も多いと思いますが、えひめAIは自作できる微生物資材で、このAIは開発者が感銘を受けた本の作者の名前から取った名称でした。でも、耳に残る素晴らしい名称ですよね。

少し話がずれましたが、本線に戻ります。
私は、今の農家もAIの波に乗るべきだと考えています

就農して最初に感じたことは「農家ってこんなに頭も使うんだ…」という衝撃でした。
もちろん朝から晩まで肉体労働もしますが、それ以上に、作付け計画という複雑なプロジェクト立案、土壌診断や施肥設計という科学、天候や社会情勢などの情報収集、野菜の卸先や機械メーカーとの営業交渉、地域の先輩方や周りの農家との関係構築。

あげればきりがありませんが、農家ってベンチャー企業で働くよりも多様で複雑な能力が必要なのではないか…と愕然としました。

同時に、農家へのリスペクトの念も大きくなりました。
就農当初に書籍で読んだのですが、農業はまさに「脳業」であり、経営そのものだと痛感したのです。

AIは敵じゃない!

私は宮崎県の中小農家です。

この【マシュー農LABO】も中小農家や新規就農者、また農業に興味がある方を想定して書いています。

そのため、法人の方や大規模な農家の方にはあまり参考にならない部分もあるかもしれません。
中小農家が元気になれば、日本の農業全体が元気になると信じて書いていきたいと思いますので、その点はご理解ください。

まず、確認したいことはAIは敵じゃないということです。
頭のいい人たちがAIについて語っているのを見て、「難しそう」「自分には関係ない」と思っている方こそ、ぜひ読んでいただきたい。
AIは農家にとって、最高の味方になりうる存在です

もちろん、これまでの農作業を劇的に変えるようなAIの活用方法はまだ開発段階かもしれませんが、その時はもうすぐそこまで来ています!

ハードとソフト

何にでも、ハードとソフトの側面があります。
たとえば、ゲーム機のSwitchがハードで、ゲームソフトがソフトという具合です。

AIにもハードとソフトがあります。ハードでいうと、自動運転のトラクターやドローン、自動収穫機などです。

このハードの技術も日々進歩しています。ちなみに私が農業をやっている宮崎県新富町には、ピーマンやきゅうりの自動収穫をロボットで実現しているAGRISTというすごい農業ベンチャー企業があります。気になる方はぜひ調べてみてください。

このハード面のAI活用には、多くの資金と時間、人材が必要になるため、私たち中小農家がすぐに活用できるものは今はまだ少ないかもしれません。

トラクターの自動運転など、本当に使いたいのですが、高額すぎます。こういった高額な農業機械を複数農家で共有できるような法整備や、JAがハブとなって農機のリース事業を展開してくれないかなと思ったり。。と、希望的な要望を書いたりもします。

さて、私がこれから記事で紹介していくのは、どちらかというとソフト面のAI活用です

これはハードとは違い、今すぐに使い始めることができ、しかも大半は無料で活用できるものです。
わかりやすく言うと、ハーバード大学を卒業し、100か国語以上を話せ、24時間365日休みなく働いてくれる超優秀なパートナーをあなたの農園に”無料”で雇えるようなものです。

どうでしょうか? 農作業こそしてもらえませんが、使ってみたいと思いませんか?
なぜなら、このAIを活用することで、最も貴重な資産である「時間」を生み出すことができるからです。

これまでは新しい作物を栽培しようと思ったらまず栽培方法を検索して情報を集めたり、機械の故障時には説明書を倉庫から探してページをめくって故障原因を探したり、道具の置き場所を皆で探し回ったり、去年の病害の記録を日誌を探し出してから探していた、そんな時間。
そんな時間をもっと作物と向き合える、農業経営に集中できる時間をAIは作り出してくれます。

AIと農業について話してみよう

まずは体験してみてください。

すぐに無料でAIを試してみれるサービスをご紹介します。
Googleが開発しているGeminiと会話できる「Gemini LIVE」です。

基本的には無料で利用できますので、まずは試してみてください。
通信量が気になる方はWifi環境がある場所でのご利用を推奨します。

 

アプリをダウンロードできたら、質問や会話をしてみてください。
iphoneでしたら、Liveのマークをタップすると会話を開始できます。

なんでも、質問してみてください。今の農業の悩みでもいいですし、作物の栽培方法でもいですし、家族経営の悩みでもなんでもいいです。
感動すると思います!

ちなみに僕はこんな質問をして会話してみました。

「宮崎県新富町の1月の平均気温は?」
そこから平年との違いなど会話が膨らみました。一瞬でこの情報を会話できるのは感動です。

注意ですが、AIの情報については精度が格段にあがっているものの、100%正確な情報とはまだ言えません。
最終的にはご自身で情報の精度を確認する必要がありますので、その点ご承知おきください。

忙しいを楽しいに

©Warren

私も就農当初は、農業の生活リズムや重労働に慣れず、「会社員に戻りたい」「こんなはずじゃなかった」と思う日々が続きました。(そのあたりはまた別の機会に書きたいと思います)

しかし、就農して7年目の今でやっと、農業は苦しいけれど人生をかける価値のある楽しい仕事だと覚悟を決めて取り組めるようになりました

そこまでには、農業を経営として捉え、経済的に安定できる仕組みを作り、一緒に働く家族との信頼関係を構築するなど、様々な挑戦が必要でしたが、農業が素晴らしい仕事であることは間違いないと感じています。

農家の仕事は確かに忙しく、環境要因に大きく影響を受けるのは宿命です。

でも、そんな中でも楽しく農業をされている先輩方や、農業の素晴らしさを発信してくださっている農家さんのように、私もこれまでの失敗を経て得た「これは良かった」「これは共有したい」という小さな成功体験を皆さんと共有していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

次回予告:「超有能な秘書を無料で雇える!? notebookLMのすゝめ ①notebookLMの紹介と使い方」

 

プロフィール

藤井マシュー武雄

宮崎県新富町にて、7年前に就農。現在はさつまいもを6ha,大根や人参などの露地野菜を1ha栽培しながら、さつまいも観光農園 GOOD TIME FARMを運営。収穫する喜びを多くの人に体験してもらおうと、日々活動しています。GOOD PEOPLES代表。
HP:https://gdps.jp

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