JAとのやり取りがスムーズに! 作業効率が上がる”営農支援システム”
2019/04/12
農業のIT化で語られやすい、ドローンや無人トラクターなど"ハードのIT化"。もちろんそれも大切だが、中規模以下の農家では、より始めやすい&業務時短につながる"ソフトから進めるIT化"が重要だ。
ハードではなくソフトから
進めるIT化を
前回、農業技術の継承とAI活用のための、栽培技術等のビックデータ化の必要性を指摘したが、この正月にテレビや新聞等で出てくる農業のIT化関連の報道内容は依然、ドローンだとか、無人トラクターなどのハードの話が多かった。これらのハード強化型のIT化も、就農人口が減っているわが国にとって意味あることだが、大規模農家ならともかく、中規模以下の農家にはあまり関係がなさそうなものも相当数あったように思う。
むしろそれ以前に、健康志向の高いわが国の消費者向けにどのように農作物が栽培されているのかが見えづらいこと、また、現在も人的つながりで構成されているパートが大きい卸売市場等とは別に、スーパーや消費者が生産者やJAから直接質の高い農作物を買えるネット上でのマッチングシステムの必要性、さらには、JAと農家との間で未だに多く残っている紙のやりとり(生産計画書等)をどのように削減していくかといった、今そこにある問題を解決するためのIT活用の余地が農業の場合には多く存在する。
営農支援プラットフォーム
「あい作」が登場
昨年末、その問題を部分的に解決することができる営農支援プラットフォーム「あい作」がNTTデータから提供され、すでに茨城県の一部のJAなどで活用され始めている。
現段階では、生産者がスマートフォンやタブレットに入力した栽培情報をJA担当者が把握できるようになることで、産地の栽培情報の見える化を実現、双方のコミュニケーションも促進し、営農活動の質の向上と効率化を図ることができるものだ。将来的には農作物を買う側の方とも結び、タイムリーに必要な農作物の売買(場合によっては予約)ができる形にしていくことも検討されている。
実際に利用実態も見てきたが、農家もJAとのやり取りのかなりのパートをタブレットなどを利用してペーパーレスで行うことができており、農家・JAの業務の「時短」にもつながっている。手近な部分からできる農業のIT化のよい実例と言えるだろう。
PROFILE
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦さん
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
AGRI JOURNAL vol.10(2019年冬号)より転載