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生産現場の課題を解決! 「サカタフェア2025」で見つけた省力化アイテム&サービスを紹介

サカタのタネが主催する商談会「サカタフェア2025」が、2025年1月9日(木)、パシフィコ横浜で開催された。同社ブース以外にも、資材メーカーのブースが121社・132小間も並んだ。約300社・450名が来場した会場では、活発に商談・情報交換が行われていた。

今回のイベントテーマは「サカタEXPRESS発進!皆さまとともに、みらいへ」。
一昨年に創業110周年を迎えた同社は今、新たな時代に向けて農園芸業界の課題を抽出し、その解決に向けて動き始めている。
今回のテーマ「サカタEXPRESS発進!皆さまとともに、みらいへ」は、同社が農業関係者と共に課題を解決しながら未来へ進んでいく、という意思の表れだ。
 

<目次>
1.農園芸業界が抱える課題を分析 サカタのタネが提示する対応策
2.出荷調整作業を約2割省力化 “ドンドン”穫れるホウレンソウシリーズ
3.農薬との混用にドローン散布も 効率化を実現するBS資材
4.モニタリングと自動制御で施設園芸を省力化する「アルスプラウト」
5.「2027年国際園芸博覧会」を前に特設ブースの出展も

 

農園芸業界が抱える課題を分析
サカタのタネが提示する対応策

記者向けの説明会では、サカタのタネ代表取締役の坂田宏氏が、農園芸業界をとりまく情勢と同社の取り組みの概要を説明した。それに続き「農園芸業界情報~現場の課題とその対応策~」をテーマとした発表が行われた。
発表したコーポレートコミュニケーション部の濱田善之さんは、近年の農園芸業界の現場が抱えている課題を、

●省力化
●病害虫
●豪雨・湿害
●コスト
●輸送
●猛暑

と6つに分類。そのうえで同社は「生産現場が抱える課題を解決できる新品種開発を中心に据えつつ、IoT技術やバイオスティミュラント(BS)資材等を活用して、持続可能な農園芸の実現に資する」と説明した。

商談会の会場には、この6分類に沿った展示スタンドが設けられていた。そのなかから本稿では、省力化に資するソリューションをご紹介しよう。

出荷調整作業を約2割省力化
“ドンドン”穫れるホウレンソウシリーズ

農園芸業界に限らず、日本ではほぼ全ての産業で人手不足に直面している。農業生産現場においては、それが特に顕著だ。人手不足は簡単に解決できないから、作業の効率化が必要となる。

同社によるとホウレンソウ出荷調整作業の割合は全労働投下時間の約7割を占める、という。このホウレンソウの出荷調整作業時間を約2割(サカタのタネ調べ)も短縮できるのが、「ドンドン」シリーズだ。「ドンドン」シリーズは、秋冬どり「ドンキー」、冬どりの「ゴードン」・「ピンドン」、そして早春どりの「ハイドン」の4品種で構成される。

「ドンドン」シリーズのホウレンソウは、絡みにくく、折れにくく、下葉を処理しやすい、という共通した特徴がある。(写真提供:サカタのタネ)

1時間で作れる袋数を比較すると、他社のホウレンソウ品種が33袋であるところ、「ドンドン」シリーズでは41~44袋を実現。優れた効率化で、人手不足という課題の軽減に資することができる。

農薬との混用にドローン散布も
効率化を実現するBS資材

2024年6月、同社はアリスタライフサイエンスとBS分野で協業することを発表した。その狙いと、第一弾製品である「GAXY(ギャクシー)」については、当サイトで既に紹介した。

▶関連記事:「サカタのタネとアリスタがバイオスティミュラント分野で協業を発表。GAXY(ギャクシー)が発売へ」

「ギャクシー」は北大西洋で生育している海藻「アスコフィラム・ノドサム」が原料。水稲・根菜・果樹・果菜類に施用することで、水分や養分吸収の改善による高温乾燥、塩害などのストレス耐性向上、光合成能力のサポート、内生ポリアミン生成による花芽誘導および果実の肥大均一化といった、生産者が抱えている課題解決に広く活用できる。

今回の商談会では、「ギャクシー」が実現する省力化について説明していた。「ギャクシー」は近年利用が拡大しているドローンによる散布も可能であるという。
また独自製法(フィルターによる不純物除去)で一部のアミノ酸を除去することにより、農薬混和時に発生するゲル化沈殿の回避に成功。多くの農薬とBSとを混和して施用できることから、作業の効率化を実現する。

また、「ギャクシー」は粘度が低いことから、例えばハウストマトでのスプリンクラーでの散布も可能。北海道でスプリンクラーで散布したところ、樹の上段まで実が揃って着く良好な結果が得られたという。
同社は現在、イチゴ、サツマイモ、柑橘などで、全国各地で試験を行っているという。

モニタリングと自動制御で
施設園芸を省力化する「アルスプラウト」

当サイトでもたびたび紹介している「Arsprout(アルスプラウト)」とは、複合環境制御システムとIoTクラウドサービスを中核として、スマート農業を実現するための製品・サービスの総称。

「アルスプラウト クラウド」・「Arsprout Pi (アルスプラウト パイ)/DIYキット」を組み合わせることで、施設園芸ハウスや植物工場内で、環境計測と自動機器制御を行うことが可能となるうえ、データをクラウドに連携すれば遠隔から監視と制御が可能となる。

展示パネルでは、窓開閉にかかわる効率化が示されていたが、記者説明会では、「アルスプラウト」を活用して省力化・コスト削減を実現して、所得額を増やした実例が紹介された。北海道西胆振地方において、地域の信用金庫と協力して行われた取り組みが、それだ。
作業時間では、キュウリで105h/10a(時給換算で105,000円/h削減)、ナスで285h/10a(時給換算で285,000円の削減)に成功。複合環境制御技術による燃料使用量の削減による効果もあり、所得の向上を実現したという。

「2027年国際園芸博覧会」を前に
特設ブースの出展も

園芸博のマスコットキャラクター「トゥンクトゥンク」と、園芸博協会の力石さん

やや余談となるが、「2027年国際園芸博覧会」特設ブースに足を運んでみた。園芸博は2027年3月19日(金)~9月26日(日)の期間、神奈川県横浜市の旧上瀬谷通信施設で開催される。その区域は約100ha(うち会場区域は80ha)と広大であり、有料来場者数は1,000万人を見込む。

ご存知の方も多いと思うが、サカタのタネは横浜市で創業し、今も横浜に本社を置く企業。その縁もあり、サカタのタネは2027年国際園芸博覧会に出展予定であることからも、特設ブースが設置されていた。

公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会の力石まり子さんによると、一般の来場者向けには、主に「花と緑あふれる、自然と共生した持続可能な暮らし」を体感できる展示が行われる。
一方、園芸・造園業界関係者は、それらを楽しめるうえ、園芸・造園・農業の参考になるような、あるいは社会課題解決に資するような先端技術等も展示される予定である。園芸博では、未来の園芸に出会うことができるのだ。

参考

サカタのタネ


文/川島礼二郎

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