生産者の取組み

遠隔監視&遠隔潅水システムをDIY! 参考にしたい低コストな作り方

低価格で遠隔管理&潅水システムをDIYする方法は? ネット通販で購入した製品を組み合わせて作り上げたというシステムの全貌を探るべく、島根県出雲市の曽田園芸を訪ねてみた。

遠隔管理&潅水システムをDIY
それは試行錯誤と
創意工夫の賜物だった

2018年より始まったグッドアグリアワードは、本誌が主催する次世代農業の担い手を応援するプロジェクトだ。次代を担う農家様の取組を各部門優秀賞として幅広く表彰する。その第1回グッドアグリアワードのテクノロジー部門で表彰されたのが、島根県出雲市の曽田園芸。DIYで遠隔管理&潅水システムを構築したという。それは実際に、どのようなシステムなのだろうか?

曽田園芸では、早春にはクリスマスローズ、母の日にはアジサイ、冬にはシクラメンと、年間を通じて多様な鉢花・花苗を育てている。農場長を務める曽田寿博さんに話を聞いた。
「曽田園芸は曾祖父の代から創業で、私で4代目になります。造園業を主にしていた時期があったり、野菜苗、花苗そして今は鉢花生産が主となっています。15年ほど前に父から引き継ぎ現在このハウスは私が中心となって運営していまして、父は現在ハウスの補修を依頼したり、もう一つの稼業である「シジミ漁」をしています。今はアジサイの最盛期です。もう少ししたら一気に出荷作業に入ります」。


コチラが曽田園芸で育てている島根県オリジナル品種アジサイの万華鏡。国内最大規模の新品種コンテストであるジャパンフラワーセレクションの鉢物部門において、最高賞となるフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した品種なのだという。

曽田さんは何故、DIYで遠隔管理&潅水システムを作ったのだろうか?
「簡単に言えば、作る必要があり、利益に見合ったコストで作りたかったからです。2012年頃に着想したのですが、ちょうどその頃、一般農家向けの遠隔管理システムが日本市場にも出始めていました。ネットで調べて、展示会にも足を運びました。それで……コストが合わなかった(笑)。
必要があった、というのはウチがクリスマスローズを育てているからです。クリスマスローズは夏の暑さには弱いので、ここから60kmほど離れた広島県の高地にハウスを借りて、そこに”山あげ”する必要があるのです。そこまで通って作業するのは大変ですから、遠隔で管理潅水作業ができれば効率化できる。ただし、このシステムをフル稼働させるのは”山あげ”している数ヶ月だけ。ですから市販のシステムを導入してもコストが合わない。ならば作ってしまえ、となったのです」。

遠隔管理システムについて説明しよう。その核となるのはスマートフォン。誰もが持っているスマホである。もちろんノートPCなどでも良い。スマホにアプリを入れることでシステムの頭脳として働いてくれる。


もう一つの必需品は監視カメラ。農業向けの専用品ではなく、いわゆるIPカメラと呼ばれる一般家庭用品だ。IPカメラはカメラ単体でネットワークやインターネットと接続できるから、その撮影画像・動画をスマホやノートPCなどで確認したり、カメラを操作できる。極論すれば、スマホにアプリを入れてIPカメラと接続すれば、これで遠隔監視システムが完成する。IPカメラの前に温度計・湿度計・吹き流しを設置しておけば、温度・湿度・風向を知ることが出来る。首振り機能を有するIPカメラを選んでおけば、こうした使い方に対応できる。


この監視システムにリモートスイッチを介すことで、曽田さんは遠隔でのスプリンクラーのオン・オフを可能にした。リモートスイッチとは、Wi-fiかモバイルネットワーク上で作動して電源をオン・オフするもの。リモートスイッチをスプリンクラーを作動させる電磁弁と接続しておけば、アプリを通じてスプリンクラーを遠隔操作できる。


リモートスイッチをネットワークに繋げるにはモバイルルーターを使用する。ちなみにモバイルルーターとは、スマホやタブレットを出先でインターネットに接続するアレのこと。

これらが、曽田園芸が構築した遠隔管理&潅水システムの全貌である。このシステムのお陰で、週2~3回の往復潅水作業(5時間)が、月2回程度の動作チェックのみとなった。その結果、交通費と人件費を大幅削減(約1/5)でき、もちろん時間の節約にも繋がった。絶大な効果を発揮した。


試しにスプリンクラーを作動してもらったが、スマホをササっと操作すると、あっという間に散水を始めた。その間ものの数秒。お見事!

曽田さんが使用している構成要素は、どれも一般家庭向け・室内使用を前提とした商品であり、防水・防塵性能は低い。そのため普段は水槽を逆さにして被せることで、保護している。IPカメラは水槽内から撮影することになる。カメラが黒く塗られていたのは、自己反射するのを防ぐためなのだ。

IPカメラを用いることで遠隔管理&潅水システムは構築できたものの、ハウス内環境を知るにはIPカメラを通じて画面を確認する必要があった。そこで、より簡単かつ迅速・正確にハウス内環境を知るためのシステムも構築した。


NETATMO(ネタトモ)の親機


NETATMO(ネタトモ)の子機

そこで利用したのは一般家庭向けの環境計測機(センサー)、NETATMO(ネタトモ)。親機は温度・湿度・気圧・CO2濃度・騒音を、子機は温度と湿度を計測できる(親機・子機どちらも防滴仕様)。これもWi-fi環境が必要な商品だが、それは上述のシステムで対応できる。追加オプションの雨量計を使うことで、潅水を実施できたのか確認することもできる優れモノだ。

ネタトモで得られる温度・湿度などのデータは、専用アプリを介してスマホで確認できる。こうして休憩中に愛車を眺めるかたわらササっとハウス内環境を確認できる。グラフ表示やアラート機能もあるから便利なのだという。

ここまでに登場した機器は電気を必要とする。電源をしない乾電池駆動の製品は何処でも誰でも使えて便利だが、曽田さんはソーラー発電システムも併用している。50Wのソーラーパネルと自動車用バッテリーの組み合わせだ。


曽田さんに今後の目標を聞いてみると、意外な答えが返って来た。
「確かにDIYで色々と作って運用していますが、本当はずっと植物に触れていたいのです。だからシステム作りに目標なんてありません(笑)。でも、土壌水分センサーの良い製品が市販されたら……それを使って自動潅水システムを作りたいなと思いますね。それが出来れば、さらに作業時間の短縮が可能になりますから」。
創意工夫と試行錯誤を繰り返しながら次々と便利なシステムを作り出してしまう曽田さん。今後もDIYでスマート農業を推進して行くようだ。新しいシステムが出来たら、是非また取材させて頂きたい。


photo&text:Reggy Kawashima

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