イチゴ観光農園が開業すぐにランキング入り? 環境統合制御で高品質・高効率生産を実現
2025/04/28

味と収量にこだわり、オープンからたった3年で人気イチゴ観光農園の地位を確立した「アグリモンスタースペシャル」。その高品質・高効率生産と省人化のために、同社とオムニア・コンチェルトの高度な技術が投入されていた。
メイン画像:代表取締役を務めるのは村松明子さん。ご主人の淳さんのバックアップのもと2020年に新規就農した。施設面積は観光農園が48aでハウスは3棟。他に直売や市場販売向けのハウスが17a。観光農園には2.2万人/年(2024年)が訪れる。
気持ちよく楽しめる工夫と
味と収量のバランスに注力
「アグリモンスタースペシャル」は、特別に立地が良いわけでないし、SNS映えする注目スイーツもない。一見すると、どこにでもあるイチゴ観光農園のようだ。ところが2020年に設立されると、すぐにイチゴ好きの間で絶大な支持を集めるようになり、じゃらんによる「いちご狩り施設グランプリ」では、東海エリアの敢闘賞を3年連続で受賞している。
「アグリモンスタースペシャル」は富士山の麓、静岡県御殿場市にある。じゃらんの「いちご狩り施設グランプリ」で3年連続敢闘賞を受賞した人気イチゴ観光農園だ。
その秘訣を、代表取締役の村松明子さんを陰から支える、ご主人の村松淳さんが教えてくれた。淳さんは、岐阜県に本社を置く農業コンサルティング・農業資材販売・農業ハウス設計施工などを行う株式会社山正の社員でもあり、イチゴのスペシャリストである。
アグリモンスタースペシャル 村松淳さん
「当園は、本当にイチゴが好きな方に愛される観光農園です。お客様に気持ちよく楽しんでいただけるようにハウス内は土足禁止にするなど清潔にし、安全で高品質な農業生産を目指してグローバルGAPも取得しました」。
土足禁止と日々の清掃によりハウス内を徹底的に清潔に保ちつつ、インパクト溢れるピンクのロゴの採用、フォトフレームの設置などで、園の存在を知ってもらう工夫を施している。
「しかし一番大切にしているのは、おいしいイチゴを心ゆくまで食べて満足していただくことです。その上で利益を出していくためには、味と収量をバランスさせることが不可欠です。糖度を上げるのは簡単ですが、それでは甘いだけで美味しくないですし、収量も上がりません。甘くておいしいと感じる糖度13~15に入れつつ、収量を最大化する。それを実現する独自技術を開発して、投入しているのです」。
「紅ほっぺ」「きらぴ香」「恋みのり」「パールホワイト」の4品種を栽培。いずれも糖度、酸味、旨味、瑞々しさ、のバランスが整っている。
その独自技術とは、浸透圧栽培法「MOPP(モンスターベリー・オスモティック・プレッシャー・プログラム)。糖度、食味、収量などを任意に制御できる栽培技術だ。理想的な環境を作り出すハウス設備、酸化還元能力の高いベンチ、浸透圧をコントロールする潅水システムなどで構成される。
いかに浸透圧を掛けるかが大切、と村松さんは力説する。浸透圧を調節しやすいよう、培地は防虫ネットで保持し、水抜けしやすくしている。「コストは掛かりますが、味と収量の両立には、これが欠かせません」。
環境統合制御機器
「コンチェルト」で綿密な制御
そこで使われているのが、オムニア・コンチェルト(以下、オムコン)の環境統合制御機器「Concerto(コンチェルト)」。
ハウス内にセンサーを設置して温度・湿度・CO₂濃度を計測。それらパラメータを最適な条件に保つことができる。それとともに村松さんは給液を日ごと、時間ごとに細かく制御して、甘くておいしいイチゴの高収量化を実現している。
ハウス内環境データ(温度・湿度・CO₂濃度)をセンサーで収集する。
「モニタリング機器や環境制御機器は多数ありますが、『コンチェルト』は細かなニーズにも対応できるのが魅力です。構造がシンプルでわかりやすいから、さまざまな機器の設定を組み合わせることで、生産者の『こうしたい!』を実現してくれます。他社製品では意図しない制御が入ってしまったり、ヒューマンエラーが起こるのですが、『コンチェルト』は意のままに制御できるのです」。
「アグリモンスタースペシャル」のハウス内環境の統合制御に利用されているのは環境統合制御機器「コンチェルト OCES-1000」。最大20ヶ所を独立制御できるから、多棟管理にも最適である。
見逃せないのは、オムコンの環境制御技術と栽培環境の見える化(遠隔監視制御)技術が、工数の劇的な低減を実現している点だ。
淳さんは「当園では毎日、日の出とともにハウスを全開にしてから5分後に閉めて、それから温度を調整しています。こうした作業を毎日スタッフに任せた場合の人件費を考えると、自動化できるだけで導入費はすぐにペイします」と話す。
今は地下部の制御はオムコン製品とは切り離しているが、ここについても将来は統合していく展望もあるとのこと。恐らく現状以上の成果が得られる事が可能となる制御技術であり、更なるアップデートが期待される。
「山正の社員の立場から一般の農業生産者さんに仕組みを説明すると、『スフマート』の3Dイラスト表示のわかりやすさに、皆さん驚かれます。直感的に把握できるから、環境制御初心者の方にも使いやすいのです」(村松さん)。
村松夫妻のイチゴへの情熱と知識・経験とオムコンの高度な技術力が、イチゴの高効率かつ省力的な生産を実現していた。
DATA
環境監視制御システム
Sfumato(スフマート)
環境統合制御システム「Concerto(コンチェルト)」と連携させることで、栽培データや環境データ、機器の稼働状況を、スマートフォンやPCなどから閲覧できる。実際の栽培室を模した3Dイラストだから視覚的に把握できる。将来の機能拡張も期待される。
問い合わせ
文:川島礼二郎
写真:都築大輔
AGRI JOURNAL vol.35(2025年春号)より転載
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