【生分解性マルチの最新動向】人気の色や厚さは? みどり戦略での支援内容は? 普及状況や業界動向を解説

生分解性マルチの開発と利用、普及を促進する「農業用生分解性資材普及会(ABA)」が、今年2月に「農業用生分解性資材普及セミナー2026」を開催。プラスチックにまつわる世界的な動向や、国内における生分解性マルチの普及状況などが説明された。

<目次>
1.FAO(国際連合食糧農業機関)も農業由来の廃プラスチックに注目
2.廃プラスチックの排出抑制を目標に生分解性資材などの使用を推奨
3.脱プラ生産資材の開発のため複数の事業が進行中
4.約10年前から現在にかけ生分解性マルチの出荷量は2倍ほどに

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FAO(国際連合食糧農業機関)も
農業由来の廃プラスチックに注目

「農業用生分解性資材普及セミナー2026」では、生分解性プラスチックに焦点をあてた、複数の講演が実施された。

まず登場したのは、農林水産省・農産局農業環境対策課にて、プラスチック削減対策企画係を務める小西雄貴さん。農業由来の廃プラスチックをめぐる状況や、プラスチックにまつわる農林水産省の取り組みなどを説明した。

「農業用生分解性資材普及セミナー2026」の会場の様子。生分解性マルチの開発に携わるメーカー担当者などが参加。

日本国内では、2020年にプラスチック製レジ袋が有料化されるなど、プラスチックの資源環境をさらに進める動きが活発化している。もちろん、プラスチックの資源環境は世界においても注目のトピックだ。FAO(国際連合食糧農業機関)は、「農業分野における持続可能なプラスチック使用に関する自主ガイドライン(VCoC)」を策定。そして2024年10月の第29回FAO農業委員会において、各関係者による活用の推奨を決議した。

「このガイドラインには、次の内容が記載されています。まず、このガイドラインには法的拘束力がないこと。各国の状況を考慮しながらガイドラインに沿って行動すること。ガイドラインの適用範囲は、生産現場におけるプラスチックとその代替品である、といったことです」と、小西さん。

2024年に日本国内で排出された廃プラスチックの総量は、約911万トン。農林水産業者からは、全体の約1.4%にあたる約13万トンの廃プラスチックが排出された。ちなみに、農業分野からの廃プラスチックの排出量は減少しており、現在の排出量は30年前の半分以下まで減っているというデータもある。

廃プラスチックの排出抑制を目標に
生分解性資材などの使用を推奨

海洋に流出するプラスチックごみによる環境汚染は、懸念事項となっている。これをふまえ、日本政府は令和元年、「3R(リデュース、リユース、リサイクル)+ Renewable」を基本原則とする「プラスチック資源循環戦略」と、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指した「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定。こうした状況を鑑み、農林水産省でも、廃プラスチックの排出抑制と適正処理を推奨するとともに、廃プラスチックの流出防止にも取り組んでいるという。小西さんは、具体的な方針を次のように説明した。

「生分解性をもつ素材でできた資材や、耐久性に優れており使用可能期間が長い資材、従来の耐久性を維持した薄膜化した資材が、廃プラスチックの排出抑制に資するものであり、これらの使用を促進していく予定です。今後も農林水産省は、こういった製品の動向を注視していきます」。

生分解性マルチは、土壌に漉き込むと水と二酸化炭素に分解される、廃プラスチックの排出抑制に貢献する資材。収穫後のはぎ取りや回収作業が不要になるため、作業の省力化が叶うほか、マルチの処理費用も不要になる。いっぽう、ポリマルチをはじめとする農業由来の廃プラスチックは、土汚れがあったり劣化しているために再生利用が難しい場合がある。廃プラスチックが発生する地域が分散されがちなことや、排出される時期が偏っていることなども、廃プラスチックを適正に処理するうえで妨げとなっているという。

脱プラ生産資材の開発のため
複数の事業が進行中

2021年に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」では、脱プラ生産資材の開発も、戦略の一つとして掲げられている。また、これらの促進を目的として、令和8年度に対策事業「みどりの食料システム戦略推進総合対策のうち農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業」が設けられている。

「プラスチック代替資材実用化推進事業」の概要。(出典:農林水産省資料)

この対策事業は、複数の事業で構成されている。まずは、うち一つの事業である「プラスチック代替資材実用化推進事業」について。これは、紙や生分解性プラスチックといったプラスチック代替資材の現場実証や情報発信の支援事業。現場実証や情報発信に取り組む民間団体などが支援の対象で、400万円または800万円を上限に補助金が支給される。

「農業由来の廃プラスチック対策モデル地域形成事業」の概要。(出典:農林水産省資料)

次に、「農業由来の廃プラスチック対策モデル地域形成事業」について。これらの事業では、新たなリサイクル技術や回収システムの実証などを支援する。加えて、紙や生分解性マルチの排出抑制に資する資材への転換も支援する。最終的には、廃プラスチックの資源循環と排出抑制の好循環を生み出す、「農業由来の廃プラスチック対策モデル地域」を形成したいという。
本事業に取り組む団体や企業には、150万円から最大1,250万円の補助金が支給される。なお補助金は、課題解決の実証など事業内容に応じて支給される。

約10年前から現在にかけ
生分解性マルチの出荷量は2倍ほどに

「農業用生分解性資材普及セミナー2026」では、「農業用生分解性資材普及会(ABA)」が実施した生分解性マルチの出荷量調査の結果も発表された。

「生分解性マルチの利用状況 樹脂出荷量(t)」(出典:農業用生分解性資材普及会ホームページ)

生分解性マルチは、最終的に水と二酸化炭素に分類される生分解性樹脂でできている。国内における生分解性樹脂の年間の出荷量は、年によって多少の増減はあるものの、約10年前と比べると2倍ほどにまで増加している。なお、2024年度の生分解性樹脂の出荷量は、3,723tとなった。

「2024年度 生分解性マルチの利用状況 地域別」(出典:農業用生分解性資材普及会ホームページ)

地域ごとの生分解性マルチの出荷量を現したのが、上の図だ。もっとも出荷量が多かったのは関東甲信越地方で、全体の36%の生分解性マルチが当地で出荷された。次に出荷量が多かったのは、全体の23%が出荷された九州地方。その次に出荷量が多かったのは、全体の19%が出荷された北海道だ。

また、生分解性マルチの厚みに関する傾向もある。従来、0.018mmの生分解性マルチの使用量がもっとも多く、出荷量全体の半分を0.018mmのタイプが占めていた。しかし2024年度は、0.018mmのタイプの出荷量がやや減少し、代わりに0.018mm以下の薄膜の生分解性マルチの出荷量がやや増加した。これは、生分解性マルチが市場に浸透し始めた兆候とみられている。
加えて、マルチの色に関する傾向もある。2022年度までは、黒色マルチの出荷量が全体の半分以上を占めており、透明マルチも20%程度のシェアを占めていたが、2023年度と2024年度は黒色マルチのシェアがさらに増え、透明マルチのシェアが減少した。温暖化や夏場の高温が顕著になったため、地温を上げる効果がある透明マルチから、黒色マルチに切り替える農家が増加したと考えられている。

「農業用生分解性資材普及会」では、国による施策を追い風に、今後も生分解性マルチの普及を進めていく予定。2030年までに、国内における生分解性マルチの出荷量を5,500~6,000tまで押し上げるのが目標だという。


文=緒方よしこ

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