環境省の補助金で電動農機を導入。次世代へ紡ぐ安全安心な米づくり

環境省は2025年度から「農業機械の電動化促進事業」を展開している。この補助金を活用して電動抑草ロボットを導入し、環境にやさしい米づくりに取り組む男性を取材した。

メイン画像:井関農機の電動抑草ロボット「アイガモロボIGAM2」。

 

太陽光発電で稼働
自然栽培米の雑草対策

「これまでは手押しの除草機を使っていましたが、真夏の作業は体力が削られるほど大変でした」と話すのは、秋田県南部の大仙市で13haに米を作付けしている富樫佳典さん(63歳)。

富樫さんは3年前、定年退職を機に株式会社三太郎おじさんを設立し、先祖代々の農地を守りながら、環境負荷を低減する米づくりを目指してきた。農薬を9割減とした特別栽培米とともに、農薬と肥料を一切投入しない自然栽培米を70aで栽培している。しかし無農薬での米づくりにおいて最大の難関となるのが、水田の雑草対策であった。

この課題を解決するため、富樫さんは環境省の補助事業を活用し、電動抑草ロボットを2台導入した。このロボットは、太陽光のエネルギーで水田全体を縦横無尽に動き回り、水を濁らせることで雑草の光合成を妨げて生育を抑制する。田植えをして18日後の6月17日に初稼働した。初期は10aあたり1日1時間、苗が育ってからは2時間程度稼働させることで抑草効果を発揮する。

「この田んぼは、土のチカラだけでイネを育てています。電動抑草ロボットは二酸化炭素を排出しないので、自分が目指す方向性にもマッチしています」と富樫さんは笑顔を見せる。

従来型農業機械との
差額の3分の2を補助

環境省は、運輸部門をはじめとするモビリティ分野の脱炭素化を加速させるため、2024年度から「運輸部門等の脱炭素化に向けた先進的システム社会実装促進事業」を開始した。2025年度からは新たに「農業機械の電動化促進事業」が追加され、2027年度までの3年間にわたって実施される計画である。

この事業の補助率は3分の2とされているが、電動農機本体の導入に関しては、購入総額の3分の2ではなく、電動農業機械の販売価格と、対応する従来型 (内燃機関式) の農業機械の販売価格との差額の3分の2が国から補助される。

すなわち、ガソリン車やディーゼル車といった従来の農機に比べて、電動化することでどうしても割高になってしまう上乗せ分のコストについて、その3分の2を国がカバーし、購入側の追加負担を従来の3分の1にまで抑えるという制度設計である。

電子申請で受け付け
早めの計画づくりを


秋田県大仙市の富樫佳典さん

この事業の根底には、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」の存在がある。同戦略では、持続可能な食料システムの確立に向けて農業分野の脱炭素化を強く推進しており、2030年までにすでに実用化されている化石燃料使用量削減に資する電動草刈り機や自動操舵システムの普及率を50%以上に高めるという目標を掲げている。

さらに2040年までには農林業機械の電動化や水素化などの脱炭素技術を確立し、最終的な目標として2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化、すなわち化石燃料の燃焼によるCO2排出量を100%削減することを目指している。

2026年度の公募申請はデジタル庁の電子申請システム「jGrants」を通じて受け付けが行われている。2026年10月6日時点では84機種が対象になっており、今後、メーカーなどからの申請を受けて、対象機材が追加される。

公募の期間内であっても予算の上限金額に達した時点で申請受け付けが終了となるため、事務局の農林水産・食品産業技術振興協会では、「導入を検討しているみなさまは公募要領を早期に確認し、販売店などから従来機との比較見積り書を取得するなど、具体的な計画づくりを迅速に進めていただくようお願いします」と呼びかけている。

電動抑草ロボットを導入した富樫さんは、直線アシスト機能つきのトラクターや田植え機を積極的に取り入れ、農作業の負担軽減と生産性の向上を追求している。「電動農機やスマート農機を上手に活用しながら、環境にやさしくて、子どもたちが安心して食べられる米を届けていきたいと考えています」。

最先端の技術に支えられながら、富樫さんが理想とする安心安全な米づくりへの挑戦はこれからも続いていく。

電動農機・補助事業の概要
◆ 従来型との差額の3分の2を補助
◆ 2026年10月6日時点では84機種が補助対象
◆ メーカーの申請を受けて対象機材を追加
◆ 電子申請システムで受け付け

 

DATA

令和8年度農業機械の電動化促進事業の公募について
令和8年度補助対象電動農業機械一覧


取材・文:アグリジャーナル編集部

AGRI JOURNAL vol.40(2026年夏号)より転載

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