JAは、独占禁止法問題にどのように向き合うべきか
2018/05/11
JAの独占禁止法問題に引き続き焦点が当たっている。中央大学大学院戦略経営研究科教授 杉浦宣彦さんが、各JAがとるべき対策について解説する。
公取からのメッセージと
JA組織の在り方について
公正取引委員会(以下、「公取」とする)が不公正取引の摘発を行う場合、そのかなりの部分は、実際に経済的な不利益を受けた企業なり人が、公取に通報、相談することが調査のきっかけになっている。前に紹介したJA土佐あきの場合もそうで、生産部会を除名された農家が公取に相談したところからスタートしている。
独禁法や下請け法を所管する公取は基本的に「弱者の味方」という位置づけになっており、彼らは、契約書の中身等だけではなく、実際に何が発生しているのかという事実に基づいて最終的な判断を行っている。これまで数多くのJA組織で独占禁止法関連の講習講師をしてきたが、規定の中にある「全量出荷」とか、「JA○△からしか資材は買わない」というような、いかにも法への抵触が明らかであれば、その部分をとにかく修正しておけば大丈夫ですよねという、文章テクニック的な質問も多く、そのたびに愕然とするばかりだ。
事実に基づき総合的に不公正取引があると判断されるかどうかがポイントであることは忘れてはならない。だからこそ、農家や納入先等としっかりした契約を結び、双方の合意があることを前提とした取引関係の構築を急ぐことは重要な課題だ。また、先ごろの公正取引委員会の発表によると、JAグループの取引に関連して、公取への通報が1年で100件をゆうに越しているようだ。
多くの講習会が行われている中で、この数字には驚いたが、この中身を見ると、資材等の納入業者に対して、JAサイドで間違ったオーダーを出したのに、返品・返金になかなか応じないなど、納入業者関連からの通報が種類別では一番多くなっている。こういった問題は担当者レベルで発生していて幹部に報告されていないケースも多いようで、この部分の問題意識は各JAもまだ希薄なのではないだろうか。まさに各JA内のガバナンス問題であり、各職員への教育問題も含め、急ぎ取り組むべき課題であろう。
PROFILE
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦さん
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
AGRI JOURNAL vol.07より転載