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専門家が解説! なぜ今、輸出が注目されているの? 農作物の輸出を考えるときのポイントは?

いま、政府では食品輸出額5兆円という目標を掲げ、農産物も含めて輸出強化の様々な取り組みを行っている。なぜ輸出が注目されているのか、そして農産物を輸出する際のポイントを流通経済研究所・折笠俊輔氏が解説する。

農産物の輸出が注目されるワケ

現在、日本では少子高齢化が進んでいます。内閣府WEBサイトによると、日本の総人口は、令和元(2019)年10月の時点で、1億2,617万人、65歳以上人口は、3,589万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は28.4%です。そして、このままいくと総人口は令和47(2065)年には8,808万人になると予測されています。

つまり、日本人のうち3人に1人は65歳以上の高齢者で、今後40年程度の間に総人口は25%減少する、ということになります。農産物など、「食料」の需要は、当然ながら人口=胃袋の数に比例します。そのため、人口減少と高齢化で、日本国内の食料消費は確実に減少していくと言えるでしょう。

縮小していくマーケットだけを見ていたら、そこで生産を行う事業者が成長することは難しくなります。行きつく先はパイの奪い合いにしかならないためです。そこで検討していきたいのが、海外のマーケットでの販売です。東南アジアやアフリカなどには、日本よりも人口が多く、高齢化率が低い国が多く存在しています。とはいえ、東南アジア諸国では、高齢化が進みつつありますが。そういった国も販売先と考えると、すごく販路となる候補が広がると思いませんか?

そう、「輸出」は、自分の作った農産物の販売マーケットを日本国内だけではなく、海外の別の国まで対象とすることで、自社の売上や利益を創出していこうとする活動なのです。「輸出をする」ことが大切なのではなく、海外まで販路を広げるための手段が「輸出」だと言えます。



 

農産物輸出のポイント

 農産物輸出を考えていくうえで、ここでは大きく3つのポイントについて説明します。このポイントだけ抑えれば大丈夫というものではなく、本当に基本となる3つのポイントだと考えていください。

ポイント①
何のために輸出をするのか、経営上の目的や意義を考えること

輸出に取り組んでいくにあたって、自分の農業経営において輸出をどのように位置づけるかをしっかり考えていくことが重要です。これには、「将来の国内と海外の売上比率をどれくらいにしたいか」「輸出をすることによって、何を達成したいのか(売上拡大?利益創造?雇用促進?)」といった経営上の目標をしっかり立てることも含まれます。

国内で余ったものを輸出に回して現状よりも利益をあげようとする輸出と、海外を将来のメインマーケットとしてとらえて、最終的に海外の売上比率を90%にしたいと考える輸出では、取り組むべき内容(連携先・輸出方法など)が大きく変わってくるためです。経営における輸出事業の在り方を考えていくことは必須事項となります。

ポイント②
輸出商社との連携など、輸出の仕組み(体制)を考えること

輸出には、大きく「自社で輸出の手続きなども含め、全て行う“直接輸出”」と、「輸出の手続きなども含め、商社などに間に入ってもらう“間接輸出”」の2つのパターンがあります。直接輸出の場合は、自社で完結するため余計な手数料などがかからないこと、自社内で輸出のノウハウが蓄積できること、などのメリットがありますが、代金回収を現地通貨等で自社で実施する必要があること、専門的な人材の配置が不可欠なこと、などのハードルがあります。間接輸出の場合は、間に入る商社などへ手数料の支払いは必須となりますが、連携する商社が国内企業の場合、通常の国内取引と同じ流れで輸出が可能になるといったメリットがあります。

輸出したいが、どうすればよいか分からないといった所からスタートする場合は、まずは間接輸出を検討することをお勧めします。輸出の商談会や、政府機関などで開催される輸出相談会やセミナーに顔を出し、輸出商社などを発掘していくことから始めると良いでしょう。いま、生産者を探している輸出商社はたくさんあります。

ポイント③
輸出先の国を想定すること

漠然と「輸出」と言っても、輸出する先の国によってマーケットは大きく異なります。例をあげるまでもなく、小麦・パンを主食とする欧米と、米を主食とするアジアでは、売れる農産物や商品が異なります。輸出を検討していく場合、「自分の持っている商品(農産物)では、どの国をターゲットにするべきか(=どの国で売ることが最もヒットしそうか)」を考えることが重要です。そのためには、輸出先の候補として考えている国の人々の生活や、流通の状況、ビジネス環境などを調べる必要があります。間接輸出を考える場合でも、どの国に、どういう風に持っていくのかを具体的に考えておくことが求められます。機会があれば、輸出先候補となった国には、1度、足を運んで現地を見ることをお勧めします。現地に行かないと気付かないことも少なくありません。

以上、3つのポイントについて整理しました。今、輸出に取り組んでいない方も、一販路の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。



 

筆者プロフィール

公益財団法人 流通経済研究所

主席研究員 折笠俊輔氏


小売業の購買履歴データ分析、農産物の流通・マーケティング、地域ブランド、買物困難者対策、地域流通、食を通じた地域活性化といった領域を中心に、理論と現場の両方の視点から研究活動・コンサルティングに従事。日本農業経営大学校 非常勤講師(マーケティング・営業戦略)。

 

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