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水稲(お米)の病気「いもち病」とは?注意すべき病気と害虫を解説!

「いもち病」は水稲(お米)の生育全期間に発生し、葉や穂首など様々な部位に被害をもたらす恐ろしい病気だ。本記事では「いもち病」の詳細と防除方法について解説し、他の病気や害虫にも対応するためのポイントを紹介していく。

<目次>
1.水稲(お米)の病気で最も怖い「いもち病」とは?かかるとどうなってしまうのか
2.水稲(お米)の病気は他に何がある?防除のポイントも紹介!
3.水稲(お米)に被害を与える害虫とは?
4.お米の病気を起こさないために予防できることは?

 

水稲(お米)の病気で最も怖い「いもち病」とは?
かかるとどうなってしまうのか

水稲の病気は頭を悩ませるものだが、中でも「いもち病」は生育期間の全てにおいて発生するものだ。
さらに、水稲は葉ばかりでなく、籾など様々な場所が侵されるといったまるで悪夢のような病気と言えるのではないだろうか。

水稲の病気の中でも最も恐ろしい病気と言われている「いもち病」。なぜいもち病にかかってしまうのか、大切な水稲に大きな損害が出る前に、防除方法をしっかりと確認しておこう。また、米作りをする上で、注意すべき病気や害虫についても、しっかりと押さえておきたいところだ。

米作りをしている者にとって「いもち病」は最も避けたい病気と言えるのではないだろうか。多湿の日が多い日本は、糸状菌が発生しやすく、「いもち病」が心配で日々田んぼを見回っている人も多い。まずは「いもち病」とはどんなものなのか、かかってしまった場合はどうなるのか、基本的なことを確認しておこう。

水稲(お米)の病気「いもち病」について

恐ろしい病気と言われている「いもち病」は糸状菌であり、いわゆるカビである。

稲の生育期間全てにおいて気をつけなければならないものであり、一度発生すると水滴などを通してどんどん感染していくため、雨が降るだけで感染が広がってしまうのだ。25度以上30度以下の温かく湿度の高い状態だと発生しやすく、発生場所も葉だけではなく、穂首や苗など様々な場所に発生する。そして、発生する場所によってその呼び名も細かく分かれている。

①葉いもち

「いもち病」が葉に発生すると「葉いもち」と呼ばれる。
時期的には6月頃から8月にかけてが最も多く、葉に紡錘形の病斑が多く出てくるのだ。病斑は白や茶褐色で、病斑が出てくると葉が駄目になり、生育に歯止めがかかってしまうだろう。特に多湿の日が続くと水滴を経由して胞子発芽を行うので、蔓延してしまうのだ。

②穂いもち

「穂いもち」は「葉いもち」から感染する場合が多く、時期的には8月以降となる。とはいえ「葉いもち」が発生していない時でも、すでに保菌していれば発生する場合があるため、気は抜けないのだ。
「葉いもち」同様に穂首部分に病斑が出来るのだが、他の部位と異なり、穂への感染は大きな被害につながりやすく、不稔になってしまったり着色米になったり大きな損失となる。「穂いもち」は出穂すぐから1週間ほどが発生しやすいため、出穂後は気を付けて確認しておくべきだろう。

いもち病にかかるとどうなるのか

いもち菌は雨などで水滴がつくと胞子発芽し、稲の細胞を破壊していくので、一度感染すると完全に除去するのが難しく、長く感染が続くと言われている。
「葉いもち」の場合、葉に紡錘形の病斑が出てくるが酷くなると病斑がつながり葉が枯れてしまうのだ。

また「穂いもち」は枝梗部、首部、籾など感染した部位によって細かく分けられるが、穂首部に感染が広がると穂首が変色してしまい米は取れなくなる。さらに箱育苗などは、病班が出る事もなく全体が変色し枯死するときもあるのだ。いずれにしても、そのまま放置すれば稲は枯死するだろう

水稲(お米)の病気は他に何がある?
防除のポイントも紹介!

稲には様々な品種があるが「ゆみあずさ」や「おきにいり」などいもち病に強い品種も存在する。

しかし、水稲の病気は1つではなく、他の糸状菌による病気も忘れてはならない。糸状菌は一度感染すると、完全に除去するのは難しいのだが、出来るだけ早期に防除したいものである。

①紋枯(もんがれ)病

紋枯病も水稲の病気として有名なもので、糸状菌による病気である。病斑の多くは葉鞘に出るが、葉などにも現れ「いもち病」と区別がつきにくい場合もあるだろう。
感染すると葉鞘などが柔らかくなってしまい、倒れやすくなるのだ。紋枯病は前の年に土壌に残った菌がそのまま越冬し、翌年に水面に近い方の葉鞘から感染が広がってしまうようだ。「いもち病」同様に、早期に発見し防除しなければならない。

防除ポイント

まずは薬剤の散布だが、葉鞘をめがけて下の方をめがけて散布するといい。初期の段階での薬剤の散布が効果的なので、こまめに確認しておくといいだろう。

さらに、事前に紋枯病を防ぐ方法として、前年に収穫した後に残った稲や雑草などをそのままにせず腐食させてしまうといい。紋枯病を引き起こす菌が越冬できなければ、翌年に紋枯病にかかるリスクも大幅に減るだろう。

②ごま葉枯れ病

ごま葉枯れ病は、苗時期に発症すると葉鞘にゴマのような黒い病斑が現れ、酷いと苗は枯死してしまうが、苗の段階では大きな被害は出ないのではないだろうか。
しかし、他の病気同様に本田での感染には気をつけたいものだ。初期の段階なら葉などに小さな黒っぽい病斑が現れ、周りが黄色になるので、ごま葉枯病だと判別できる。

しかし、気づかずに放置してしまうと病斑がつながってしまい、他の病気と区別がつきにくくなってしまうのだ。この病気が進むと米が変色したり、稲自体が枯死する。

防除ポイント

ごま葉枯れ病は、老朽化水田に多く発生し肥沃な場所ではほとんど発生しないものだ。土壌を改善するのが最優先で、窒素やカリ、ケイ酸などを利用しつ農薬の散布なども好ましいといえる。農薬散布に関しては茎の先端がふくらむ穂ばらみ期ごろが好ましいが、地域によって使用農薬のルールがあるので事前に確認しておくといいだろう。

水稲(お米)に被害を与える害虫とは?

水稲が被害を受けるのは、糸状菌による病気だけではない。稲が50㎝から60㎝ほどになると、害虫の被害にも頭を悩ませることになるのではないだろうか。
害虫には養分を吸うことで被害を出す吸汁性害虫と、稲を食べてしまう食害性害虫の2種類が存在する。れらの虫は駆除の対象になるが、害虫を食べる蜘蛛やトンボ、ゲンゴロウなどは稲作にとって心強い味方といえる。

吸汁性害虫

水稲にとって天敵となる吸汁性害虫には、カメムシ類やウンカ類がいる。昔から最も怖い害虫と言われているウンカも、吸汁性害虫に分類され、一説では江戸の天保の大飢饉は、吸汁性害虫のウンカが引き起こしたともいわれている。まずは吸汁性害虫たちを知り、駆除の方法を確認しよう。

①カメムシ類

カメムシの中でも斑点米カメムシは、穂を狙って汁を吸い取り、黒色の変色米に変えてしまう害虫だ。当然米の価格は落ち、大きな被害をうけてしまう。あぜ道にハーブを植えるなどして、カメムシの好きなイネ科の雑草を除去する方法も注目されているようだ。
特にカメムシは7月頃に発生するので、7月頃に殺虫効果のある農薬を使用するのが理想的である。

②ウンカ類

稲作で最も恐ろしい害虫と言われているウンカは、田んぼすべてをダメにするほどの繁殖力を持っている害虫だ。

越冬できず冬には消えるのだが、毎年梅雨前線の気流で温かい地方からやってくる。ウンカは葉や茎から汁を吸い取り、一気に稲をからしてしまう。ウンカの中でもトビイロウンカは、秋に繁殖し甚大な被害を与え、ヒメトビウンカは病原菌を移す害虫だ。ウンカの駆除には殺虫効果のある農薬の使用が一般的だが、中には耐性のついた抵抗性ウンカも存在する。

このような抵抗性ウンカに対しては、昔ながらの廃食油が役に立つのではないだろうか。ウンカが発生したら、廃食油1L(5a)を目安に、5メートルほどの間隔をあけ水田に垂らす方法だ。さらにブロワーなどで落とせば、ウンカは溺死するだろう。

食害性害虫

稲をダメにする害虫には、食害性害虫と呼ばれるものもいる。害虫は種まきから数えて80日目くらいが発生の目安だが、食害性害虫も稲が60センチを超えたあたりから発生するので質が悪い。直接稲を食べてしまうので、発育不良や空穂などの被害につながってしまうのだ。

①イスミズゾウムシ

イネミズゾウムシは国内で越冬をし、葉鞘部分に産卵をする。幼虫は根と葉を食害し成虫になると、主に葉を食害するため葉は短冊状に裂け発育不良の被害が出てしまうのだ。

イネミズゾウムシが産卵するのは6月上旬粒剤を散布して防除し、成苗の移ごろ、この時期が防除適期と言える。産卵は畦畔沿いに多く見られるので、田植えの後はしっかりと観察をつづけるべきだ。一般的には粒剤を散布して防除し、成苗の移植をすることで被害が押さえられる。

②イネドロオイムシ

国内すべてに発生するのだが、特に寒冷地と呼ばれる北日本に大きな被害が出ている。イネドロオイムシは5月下旬頃から発生、梅雨明けまで葉に食害を続ける害虫だ。乾燥には強くないために、雨の降らない日が続くと減少していくだろう。水田が白くなるともいわれるが、成虫よりも幼虫時の被害が大きく、葉脈を削り取るので被害を受けた稲は白く変色したように見えるのだ。イネドロオイムシの食害で稲が枯死することは殆どないが、穂数が減るなど被害は大きいだろう。殺虫効果のある農薬で防除するのが一般的である。

③コブノメイガ

コブノメイガは、主に7月以降に西日本で発生することが多く、葉を食害する害虫だ。穂部分に産卵をするため、孵化した幼虫は穂の中で育ち穂が発育不良になってしまう。
成虫は葉を食害し、被害を受けた稲は白色になって収穫に大きな被害を与えるのだ。

殺虫効果のある農薬を使用するのが一般的だが、天敵となる蜘蛛やトンボ、ハチなどで害虫を駆除する農家も増えている。また、事前の予防策として雑草管理や排水施設を整えるなどの対策も有効だろう。

お米の病気を起こさないために
予防できることは?

水稲の病気は一度かかると蔓延しやすく、収入に大きなダメージを与えてしまうものだ。可能な限り未然に防げるものなら、防いでいきたい。病気を起こさないために、何をしておけばいいのか確認しておこう。

①無病種子の使用

無病種子を使用することで、病気を起こさない水稲(お米)作りが可能になるだろう。無病種子は発病地から種をとらないことで栽培できる、また熱や薬を使用して種子を消毒して栽培する。病気のリスクは格段に減るのではないだろうか。

②補植用の取り置き苗は早めに処分する

補植用の取り置き苗は放置されていることが多いが、いもち病にかかる可能性は十分にある。
補植用の取り置き苗から感染することも少なくないのだ。土に埋めるなどして早めに処分をしておこう。

③いもち病に強い品種を選ぶ

近年は、稲自体をいもち病に強い品種にしようという取り組みが進んでいる。味を落とさずに、いもち病に強い抵抗性遺伝子を組み込むのは素晴らしい取り組みだ。

また、いもち病に強い品種を生み出すために、稲をあえて病気にかかりやすい環境下に置き、その中で病気にかからなかったものを抵抗性の強い稲としている。

いずれも、100パーセントの抵抗性を保証するものではないが、殺虫剤の散布を減らせるなど、農家にとっては大きな経費削減につながるだろう。

④育苗ハウス周辺で、籾殻や稲わら等を放置・使用しない

籾殻や稲わらは意外に無頓着になりがちだが、放置することで病気の伝染源になってしまうのだ。籾殻や稲わらの処理に頭を悩ませている農家も多いようだが、収穫後に速やかにすき込みを行うことで、じっくりと堆肥化し土壌が安定するのではないだろうか。

特に乾燥状態で保管しておくといもち菌は繁殖しやすくなり、病気が発生するリスクが高まる。また、育苗ハウスの周辺には使用しないことが望ましい。

⑤高温多湿を避け、風通しを良くする

いもち病は、高温多湿の環境を好む糸状菌が原因で発生する病気だ。

穂場は簡単に移動できるものではないが、周囲の雑草を抜くなどして、常に風通しを良くするべきだ。周囲に木が生い茂っていたりする場所は、こまめにチェックしておくなど、特に注意が必要になる。

⑥適正な施肥量を守る

適正な施肥量を守ることは、いもち病のみならずすべての病気を防ぐことにつながっていくだろう。

過剰な追肥は窒素肥料過多になりやすく、菌の発生を促してしまうのだ。良かれと思ってやったことが、いもち病の発生リスクをあげてしまうこともある。適切な適正な施肥量の枠を出ないようしっかりと管理するべきだろう。

⑦ケイ酸質肥料を施用する。

ケイ酸肥料は作物を強くし、高品質米を生みだすものだ。稲を倒れにくくし、葉を厚くするので多くの農家で使用しているのではないだろうか。さらにケイ酸には病気の原因となる菌を防ぐ効果も確認されており、いもち病対策としても使用されるのだ。

正しい対策で「いもち病」から
水稲(お米)を守ろう

水稲には「いもち病」をはじめ、様々な病害虫による被害がつきものだ。
しかし、事前の予防と正しい対策で病害虫のリスクを下げることは出来るだろう。

さらに早期の発見で被害を最小限にとどめることもできるので、日々のチェックは欠かせない。苦労も多い米づくりだが、それゆえ高品質の米を収穫したときの喜びも大きいのではないだろうか。

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