育成就労制度の施行まで半年! 「在留期間」や「業務区分」など、技能実習制度からの変更点は?

従来の技能実習制度に代わり「育成就労制度」が導入される。人手不足に直面する農業現場において、新制度へのスムーズな移行は急務だ。制度施行が半年後に迫るなか、雇い入れ側はどのような準備を進めるべきなのか、日本農業法人協会の高須敦俊さんに話を聞いた。

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実態に即した制度設計へ
技能実習との根本的な違いとは

「目的」「在留期間」「前職要件(復職要件)」の違い

項目 技能実習制度 育成就労制度
目的 技術移転による国際貢献 特定技能1号水準の技能を有する人材の育成並びに人材確保
在留期間 1号:1年、2号:2年、3号:2年
合計3年または5年
3年。試験などに不合格の際は、最長1年の延長が可能。
前職要件
(復職要件)
就業する分野での経験が必要
帰国後は、復職することが前提
前職要件・復職要件は不要

2027年4月に施行される育成就労制度は、従来の技能実習制度からその目的や運用面において劇的な転換を遂げる。

1993年に発足した技能実習制度は、途上国への技術移転を通じた「国際貢献」を建前として掲げていた。しかし、深刻な人手不足に悩む日本の農業現場においては、実質的な労働力の供給源として機能してきた経緯がある。この「国際貢献という建前」と「現場における労働力確保という実態」の乖離が、不適正な労務管理や人権侵害問題など、長年にわたるさまざまな弊害を生む要因として指摘され続けてきた。

新たに創設される育成就労制度では、この構造的な矛盾を解消するため、「特定技能1号」の水準を満たす技能を有する人材の育成と、日本の産業界における「人材確保」を明確な目的として法律に規定している。

日本農業法人協会外国人材支援部の高須敦俊さんは、「技能実習制度は国際貢献という建前と、現場の労働力としての実態との間に大きな乖離がありました。今回の新制度では、外国人材を日本の産業を支える『労働者』として正式に受け入れることが明確に定義され、実態に即した制度設計へと根本から変わります」と、その歴史的意義を強調する。

制度の具体的な変更点として、在留期間の設定や人数枠の管理方法が挙げられる。育成就労制度での基本的な在留期間は3年とされ、この3年間で特定技能1号へ移行可能なレベルの技能と日本語能力を習得させることを目指す。さらに、受け入れ人数枠の管理手法も、従来の「1年単位」から「3年間の合計人数枠」へと変更される。

従来の制度では、実習生が家庭の事情や体調不良などで途中帰国した場合、1年ごとに人数枠が設定されていることから、場合によっては十分な人数を補充することができず、農繁期の人手不足に直面する現場に大きな負担を与えていた。

しかし、3年間を一括した枠として管理する新制度のもとでは、期中に欠員が生じた場合でも柔軟に枠を活用し、スムーズに新たな人材を補充・採用することが可能となる。これは、長期的な営農計画や人員配置に頭を悩ませてきた農業分野の雇い入れ側にとって、極めて大きな弾力性をもたらす運用改定といえる。

稲作や肉用牛を追加
柔軟な人材配置が可能に

「人数枠」「業務区分」「従事できる業務」「分野別協議会」「技能評価試験」の違い

項目 技能実習制度 育成就労制度
人数枠 設定あり 設定あり
業務区分 農業の場合、2業種6作業
(施設園芸、畑作・野菜、果樹、養豚、養鶏、酪農)
農業の場合、2業種6作業
(施設園芸、稲作・畑作、果樹、養豚、家きん、養牛)
従事できる業務 必須業務: 全業務時間の1/2以上
関連業務: 全業務時間の1/2未満
周辺業務: 全業務時間の1/3以下
※ それぞれの業務において従事させる時間の1/10以上を安全衛生に係る業務とすること
全業務時間の1/3以上を必須業務に従事させること
※ 従事させる業務において従事させる時間の1/10以上を安全衛生に係る業務に従事させること
分野別協議会 加入義務なし 加入義務あり
技能評価試験 1年目: 初級(2号移行に合格必須)
3年目: 専門級(3号移行に合格必須)
1年目: 初級(不合格でも継続)
3年目: 専門級もしくは特定技能評価試験

育成就労制度の導入は、制度の理念的な変更にとどまらず、農業経営の現場において数多くの直接的なメリットをもたらす。

第一に挙げられるのが、受け入れ可能な業務区分の抜本的な見直しだ。従来の技能実習制度では、対象となる作業が細かく限定されており、自社の営農スタイルと制度上の作業区分が合致しないため受け入れを断念せざるを得ないケースも多かった。

新制度ではこの範囲が大きく拡充され、耕種農業と畜産農業における主たる技能の対象領域が拡大された。これにより、これまで制度活用のハードルが極めて高かった稲作や肉用牛といった分野においても、外国人材の本格的な受け入れが可能となる。

第二の利点は、募集・選考プロセスにおける条件緩和である。従来の制度では、母国での同種作業の従事経験(前職要件)や、帰国後に日本で得た技術を母国で生かす見込み(復職要件)が必須となっていた。

新制度ではこれらの前職要件や復職要件が全面的に撤廃された。これにより、母国で農業経験がない人でも「日本で農業技術を学び、長く働きたい」という強い意欲を持つ幅広い層から広く募集することが可能となり、雇用対象の拡大が期待されている。

第三の利点として、現場の作業配分における必須業務割合の緩和が挙げられる。従来は全労働時間の2分の1以上を主たる指定作業に割り当てなければならなかったが、新制度ではこの基準が「3分の1以上」へと緩和された。農業は天候や季節によって作業内容が大きく変動する産業だ。収穫期には全員で農作業に集中し、農閑期や出荷期には加工や仕分け、配送などに時間を割く必要がある。必須業務割合の緩和により、農繁期の現場作業から農作物の加工、直売所での業務に至るまで、より柔軟で適材適所の人員配置が可能になる。

日本農業法人協会の高須さんは、「必須業務割合の緩和や作業範囲の拡大により、自社農場に併設された農家レストランや加工場での業務など、日本人スタッフと同等の多様な作業に従事させることが可能になります。単なる農作業の補助員ではなく、6次産業化を含めた経営全体の発展を担う人材としての活用が期待できます」と、経営戦略上のメリットを語る。

転籍解禁と語学支援
現場が直面する2つの課題

「三役の主な要件」「転籍」「転職」「特定技能への移行」の違い

項目 技能実習制度 育成就労制度
実習責任者など
三役の主な要件
技能実習責任者: 講習の修了
技能実習指導員: 実務経験5年以上
生活指導員: 要件なし
※ 各人とも常勤でなければならない
育成就労責任者: 講習の修了
育成就労指導員: 講習の修了、実務経験5年以上
生活相談員: 講習の修了
※ 各人とも常勤でなければならない
転籍 ※1 やむを得ない事情がある場合を除き、原則不可 一定の要件を満たせば本人の意向で転籍が可能
転職 ※2 原則不可 育成期間が2年以下で途中帰国した者は、異なる職種での再入国が可能。
特定技能への
移行
技能実習2号を良好に修了している場合(実習期間2年10ヶ月以上、専門級試験合格等)、日本語試験・技能試験が免除され、そのまま特定技能の申請が可能
※ 要件を満たした場合でも、実習期間中は特定技能への移行不可
日本語試験(N4以上)の合格ならびに技能試験に合格が必要
※ 育成期間中に要件を満たした場合、特定技能への移行が可能

※1 転籍:同一の職種内で移籍すること
※2 転職:異なる職種に移籍すること

多くのメリットが期待される一方で、農業現場が危惧している課題も存在する。雇い入れ側が最も懸念している変更点の一つが、「本人意向による転籍(転職)」の解禁である。従来の技能実習制度では、原則として実習生の自己都合による転籍は認められていなかった。しかし、人権保護やキャリアアップの観点から、新制度では一定の条件を満たせば「本人意向による転籍」が可能となる。

具体的な要件としては、同一の受け入れ機関で1年以上勤務していること、一定の技能試験に合格していること、そして必要な日本語能力(N5程度以上)を有していることなどが挙げられる。悪質な引き抜きを防止するための規制策や、受け入れ農家が初期育成に投資した費用(渡航費や初期講習費など)を新たに受け入れる側の事業者が一定額補填する措置なども法律に組み込まれている。しかし、「丹精込めてゼロから仕事を教え込んだ人材が、給与条件の良い都市部や他経営へ流出してしまうのではないか」という地方の農業法人の不安は依然として拭えていない。

育成就労制度の「日本語能力の向上支援」について

入国前区分 育成就労1年目 育成就労期間中 特定技能1号への移行 特定技能2号への移行
A1合格者
(N5相当)
特になし ① A2試験合格
(JLPTのN4レベル)
② A2不合格の際は、A2相当講習の受講
(注) 試験不合格の場合などは、最長で1年以内で延長可能
A2合格が必須 B1(JLPTのN3レベル)合格が必須
(ただし、経過措置として施行から3年間は特定技能1号から特定技能2号に資格変更するときはB1合格を課さない)
A1未合格者 ① A1相当講習を100時間受講
(入国前または入出国後講習で実施)
② 1年以内にA1受験
(不合格でも育成就労は継続)

 
そして、もう1つの大きなハードルとなっているのが「日本語教育への対応と支援の義務化」である。育成就労制度では、入国時のみならず、日本での在留期間全体を通じて外国人材の日本語能力を向上させることが受け入れ機関に明確に義務付けられる。具体的には、認定日本語教育機関などによる講習の受講やオンライン学習環境の整備などが必須となり、それに伴う講習費用や教材費、試験の受検費用などは、原則として農業法人などの受け入れ機関が負担しなければならない。

日本農業法人協会の高須さんは、「現在、日本語教育の受け皿となるべき認定日本語教育機関や登録日本語教員の数が全国的に不足しています。特に都市部から離れた地方の農業現場では、近隣に日本語学校が存在しないケースも多く、オンライン教材の活用や費用の負担、体制整備への不安が高まっています。さらに、日本語能力試験や技能試験の申し込み枠が公募開始の直後にすぐに埋まってしまうという現状もあり、受検機会の確保そのものが困難になっている点も深刻な課題です」と現場の窮状を指摘する。

施行半年前にすべきこと
円滑な制度移行への準備とは


育成就労制度の導入で農業現場はどのように変わるのか(©BearFotos/Shutterstock.com)

2027年4月の制度施行が半年後に迫っている。現在、外国人材を雇用している、あるいは今後の雇用を検討している農業法人や農業経営者は、具体的にどのようなステップで準備を進めるべきなのだろうか。

まず理解しておくべき重要なポイントは、「制度施行日を迎えたからといって、その日から即座に新制度での育成就労外国人を直接雇い入れられるわけではない」という点だ。新制度のもとで外国人を受け入れるには、事業主としての「育成就労計画」を作成し、国の認定を受ける必要がある。その手続きには一定の期間を要するため、実際に育成就労外国人として現場に新規入国して着任するまでには、施行後数ヶ月単位の時間的ラグが発生する。

ただ、現在雇用している技能実習生に関して過度に心配する必要はない。制度の施行日以降も経過措置期間が設けられており、現在在籍している技能実習生はそのまま従来の技能実習生としての在留資格を維持して就労することができる。現場の稼働が即座にストップするような事態は避けられる仕組みになっている。

そのうえで、雇い入れ側が「いますぐ」取り組むべき具体的対策としては、まず現行の監理団体への確認と協議が挙げられる。新制度では監理団体も基準が厳格化された「監理支援機関」へと移行しなければならないため、現在取引のある監理団体が新制度の要件を満たして許可を取得する見込みがあるのか、また新制度移行に伴う監理費用や手数料体系がどのように変化するのかを早急に確認しておく必要がある。

さらに、自社における社内体制の整備と必要な講習の受講も急務だ。事業所ごとに配置が義務付けられる「育成就労責任者」や「育成就労指導員」、「生活相談指導員」などの選任要件を確認し、計画的に講習を受講させなければならない。施行直前になると受講予約の申し込みが急増して希望時期に受講できなくなるリスクがあるため、早い段階からの準備をおすすめする。

こうした現場の動きに合わせて、日本農業法人協会では言語の壁によるトラブルや解雇・離職を防ぐため、5ヶ国語に対応した外国人向けの相談窓口を開設している。雇入れ側の相談にも随時電話などで対応しており、受け入れ事業者と外国人材の双方が安心して雇用・就労できる環境づくりをサポートしている。

日本農業法人協会の高須さんは、「外国人材を単なる人手不足を埋めるための『作業力』として都合良く捉える時代は終わりました。新制度のもとでは、ひとりの人間として、そして未来の農業を支えるパートナーとして迎え入れる姿勢が求められます。日常のきめ細かなコミュニケーションを通じて現場での満足度と信頼関係を高めることこそが、結果として転籍を防ぎ、自社に定着してもらうための最も確実な対策といえます。まずは信頼できる監理支援機関と早急に情報を共有し、半年の猶予期間をフルに活用して準備を進めていただきたいです」と呼びかけている。

DATA

農林水産省 農業分野における外国人の受け入れについて


取材・文/アグリジャーナル編集部

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