営農型太陽光の省令改正・告示を公布 2027年4月施行の新制度をわかりやすく解説
2026.10.15
営農型太陽光発電に関連する省令改正や告示が10月9日に公布された。従来の通達による運用から、省令や告示に基づく法体系へ格上げ・厳格化された背景や、2027年4月に施行される新制度の変更点、農業者や発電事業者に求められる対応をわかりやすく解説する。
メイン画像:©Piyaset/Shutterstock.com
1.省令や告示に基づく 法体系へ格上げ・厳格化
2.地域共生と農地維持 3つの基本理念を明示
3.営農形態の多様性に配慮して 例外的な運用が可能に
4.事前の問い合わせは 事業実施予定の市町村へ
省令や告示に基づく
法体系へ格上げ・厳格化
営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数(出典 農林水産省)
農地の上に高い架台を立て、支柱を設置して太陽光パネルを並べ、農業生産を継続しながら発電を行う営農型太陽光発電は、ソーラーシェアリングとも呼ばれ、同じ土地から農作物の販売収入と電気の販売収入という2つの収益を得ることができる仕組みとして発展してきた。本来は農業経営の安定や地域活性化、脱炭素社会の推進を同時に引き受ける手法として大きな期待を集めており、全国の生産現場で導入が進められてきた。
しかし、運用の拡大に伴い、全国各地でさまざまな懸念や問題点が浮上することとなった。具体的には、発電設備の設置許可を得たものの、パネルの下部にある農地で必要な営農活動が適切に行われず放置されてしまったり、日照不足や不適切な栽培管理によって農作物の大幅な減収や生育不良を引き起こしたりする事例が発生した。さらに、売電収入のみを目的として農業経営に対する配慮を欠いた案件や、事業終了後に設備が未撤去のまま残されるといったトラブルも散見され、農村地域での農業生産活動や地域住民との共生関係を損なう課題として認識されるようになった。
こうした背景から、農林水産省は有識者や専門家による検討会を設置し、営農型太陽光発電の望ましい姿と制度の健全化に向けた議論を慎重に重ねてきた。検討会での議論では、営農型太陽光発電が発電主導に偏重している現状を適正化し、本来あるべき営農主導へと転換させる方向性が確認された。これまで一時転用許可などの手続きは、主に国からの通知や手引きを中心として運用されてきたが、不適切な事業者を効果的に排除し、農業と再生可能エネルギーが長期的かつ調和して共生できる環境を整えるためには、法的な裏付けを強固にすることが重要であると結論付けられた。
検討会などの議論を踏まえて政府は、10月9日付の官報(号外第223号)において、関係する省令および告示の改正を公布した。従来の行政指針による運用から、省令や告示に基づく法体系へと位置付けを格上げ・厳格化することで、ルールを明確化し透明性を高めることとなった。不適切な事例に対しては指導や勧告、許可の取り消しといった処置を厳格に講じる一方で、地域の農業振興や農業者の所得向上に寄与する優良案件を確実に支援・促進していくことが、今回の国による制度改正のねらいである。

地域共生と農地維持
3つの基本理念を明示
営農型太陽光発電の基本理念(出典 農林水産省)
今回の制度改正にあたり、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律に基づく基本的な方針(告示)や、農地法施行規則などの関係省令が改定された。改定された基本方針のなかでは、営農型太陽光発電の根本的な位置付けとして、適切な営農の継続を大前提とし、特例的に農地の一時転用を認めるものであるという原則をあらためて再確認している。
そのうえで、制度の軸となる基本理念として
「将来にわたって食料生産の基盤である農地の機能が維持され、食料安全保障にも資する取り組みであること」
「発電事業者だけでなく、農業者の所得向上や経営発展に資する取り組みであること」
「地域と共生し、地域活性化に資する取り組みであること」の3つの基本理念が明確に定められた。
基本理念実現のために求められる営農型太陽光発電の形状・形態(出典 農林水産省)
これらの理念を現場の事業において具現化するため、設備形状や営農条件に関する具体的な判断基準が数値を含めて明確に提示された。
まず、下部農地における営農の健全性を評価する基準として、栽培される農作物の単位面積あたりの収穫量(単収)が、同じ年産の市町村区域内における平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少するおそれがないことが求められる。
また、発電設備に関しても一般的な農業機械の走行や農作業の支障とならない構造であることが条件となり、ほ場からの最低地上高はおおむね3m以上、支柱と支柱の間隔はおおむね4m以上を確保することが規定された。さらに、パネルによる遮光率については原則として30%未満(遮光率での判定が難しいため日射量で評価する場合は、生育期間を通じた日射量の減少率が20%未満)と定められ、作物の生育に必要な光環境を維持することが義務付けられた。
営農者や栽培品目に関しても確実な継続性を担保するための要件が盛り込まれた。下部農地で営農を行う者は、農業経営基盤強化促進法に基づく地域計画において農業を担う者として明確に位置付けられていることが必要となる。加えて、栽培する農作物に関しては、年間50万円以上の生産・販売実績を有するなど業としての持続性が確保されていることが求められる。
栽培品目についても、その地域で一般的に栽培されており、一般市場や確立された流通ルートを通じて販売できる作物が前提とされた。実体がない取引や発電事業者が買い取るような事例は認められず、原則として毎年収穫可能な作物を栽培することが義務付けられている。なお、基本方針では、米や麦、大豆についてはこれまでの実証研究などにより遮光環境下であっても適切な管理によって必要な単収を確保できる作物の例として記載されている。
地域との共生という観点においては、事業計画の初期段階から地域の農業者や住民の理解と合意を得ることが重要視されている。発電事業者から営農者や地権者に対して適正な利益還元が行われる仕組みを構築することや、土地改良事業の実施や農業経営の規模拡大といった地域の農業施策の妨げにならないことが求められる。また、強風や地震などの自然災害による設備の損壊事故に備えた保険加入や自己資金による補償体制の明確化、さらには事業終了時における発電設備の不法放置を防ぐための確実な撤去費用の確保が誓約書などの文書によって確認されることとなった。
営農形態の多様性に配慮して
例外的な運用が可能に
現行制度と新制度の違い(出典 農林水産省)
2027年4月からの施行に伴い、営農型太陽光発電の導入手続きは大きな転換期を迎える。これまでは都道府県知事などによる個別の農地一時転用許可審査が手続きの中心であったが、新制度においては市町村が主導して作成する基本計画をベースとした地域一体型の枠組みへと移行する。
事業を行うことを希望する発電事業者は、市町村が設定した促進区域や基本計画の内容に沿って自らの設備整備計画を作成し、市町村に対して認定申請を行うことが必要になる。市町村が基本計画を作成し事業を認定するプロセスでは、協議会の設立と運営が大きな役割を担う。協議会は、市町村の担当者や農業委員会、地域の農林漁業者、住民代表、学識経験者、さらには発電事業者などで構成される。
この協議会の場を通じて、事業が地域の農業振興に資するかどうか、地域住民の生活環境に悪影響を与えないか、災害対策や撤去費用の担保が適切かといった点が検討され、関係者間での合意形成が図られる。地域主導でスクリーニングと合意確認を行うことにより、事業の透明性と信頼性を高め、地域に根差した再生可能エネルギーの導入を実現することがねらいである。
その一方で、統一的な規則の適用によって地域の多様な農業や新たな試みが阻害されないよう、制度には柔軟な特例措置も組み込まれている。原則的な数値基準である遮光率30%未満や特定の施設配置要件については、地域ごとの気候風土や作物特性、営農形態の多様性に配慮した例外的な運用が可能とされている。具体的には、複数年の試験栽培結果などから公的機関や大学、あるいはそれらが設置する研究機関が得た科学的根拠に基づき、基本理念である営農の継続や収量の確保が着実に実現されると判断できる場合には、国や都道府県の適切な助言のもとで、市町村が独自に特例的な基準を定めることができる。
この特例措置の対象となり得る具体的な例としては、茶やセンリョウといった作物の栽培が挙げられる。茶のように適度な遮光環境が品質向上に寄与する作物や、日陰を好む観賞用植物であるセンリョウなどは、一律の遮光率30%未満という基準を機械的に当てはめると、かえって栽培に適した環境をつくり出せなくなるケースがある。また、都道府県の試験研究機関などと連携して行う試験的な栽培活動についても同様に特例が認められる。科学的な知見に基づいて地域や作物の特性に適合していることが立証されれば、地域の実情に応じた柔軟な運用が認められる仕組みとなっており、健全な営農の発展を支える技術や工夫の道も確保されている。
事前の問い合わせは
事業実施予定の市町村へ
既存事業者への対応の厳格化について(出典 農林水産省)
今回公布された改定省令および告示は、周知期間と準備期間を設けたうえで、2027年4月1日から全面的に施行される。新たな制度への円滑な移行を達成するため、農水省や関係省庁は全国の自治体や関係事業者に対する情報提供と支援策を順次展開していく方針だ。
今後の取り組みとして、農水省は全国を複数のブロックに分けたオンライン説明会を早期に開催する。まずは制度の運用主体となる地方自治体や市町村の担当者を対象として、基本計画の作成手順や協議会の設置方法、設備整備計画の認定審査における留意点などを解説し、自治体側の受け入れ体制の構築を後押しする。さらに、自治体向けの説明会にとどまらず、実際に現地で事業を計画・実施する農業者、発電事業者、施工事業者、架台やパネルなどの部材メーカーといった幅広い業界関係者を対象とした説明会の開催についても検討が進められている。
新制度の導入にあたっては、現地での適切な運用体制の整備が今後の課題となる。特に市町村においては、専門的な知見を有する職員の不足や、協議会運営の労力、地域計画との整合性をいかに図るかといった実務上の負担が大きくなることが予想されている。また、既存の事業者に対する適切な指導監督や、不適切案件に対するFIT・FIP交付金の一時停止措置の厳格な適用など、現場での対応を高めていくことも課題である。
農水省大臣官房環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室では、「新制度のもとで営農型太陽光発電の導入や更新を検討しているみなさまは、事業実施予定地である市町村へ事前に問い合わせを行い、地域の基本計画の策定状況や協議会の設置予定について確認していただきたい」と話している。関係者が一体となって早期から相談と調整を重ねることで、地域の持続的な発展と農業振興に寄与する質の高い営農型太陽光発電の推進が期待されている。
DATA
農林水産省 営農型太陽光発電について
農林水産省農山漁村再生可能エネルギー法
取材・文/アグリジャーナル編集部
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