いちご栽培の養液システムを因数分解! プロから教わる高設栽培の設備
2021/05/12
潅水部材
潅水部材にも色々な物があります。最も多く使われているのは点滴チューブで、これを使うメリットは、潅水量が均一に揃うことです。
海外では、点滴チューブよりもポリパイプとドリッパーが多く、こちらのメリットは耐用年数が長く点滴チューブよりも潅水量が均一になりやすいです。ただ、初期コストはこちらの方が高くなります。
点滴チューブ/散水チューブ
チューブには、厚さや穴の間隔などが異なる様々なタイプがあります。1列のベンチに1本もしくは2本の点滴チューブを設置することが多く、水にごみや砂が混ざっていると詰まりやすくなるため注意が必要です。詰まり予防のためにはフィルターを使うと良いでしょう。
また、点滴チューブはビニールマルチの下に設置できるので、ビニールマルチを使うベンチ栽培との相性が良いです。中には散水チューブを使うシステムもあります。
ポリパイプとドリッパー
ドリッパーはボタンタイプとピンタイプがあります。ポリパイプに直接ドリッパーを固定するのではなく、ポリパイプから細いチューブを出してその先端にドリッパーを付けます。ボタンタイプもピンタイプも培地に棒を挿してドリッパーを固定していきます。ポリパイプとドリッパーは袋栽培との相性が良いです。
液体肥料
養液栽培に使う液体肥料は、色々な肥料メーカーが販売しています。名称は様々ですが、肥料のバランスは似ています。
理由は養液栽培に使う肥料のバランスはいくつかのパターンが決まっていて、どのメーカーもそのパターンに合わせた肥料を販売しているから。なので、いちごを養液栽培する場合には、いちご用か野菜全般用の液体肥料を使えば大きな問題は起きません。
液体肥料は2種類の液体肥料を混ぜて使う2液式が多かったのですが、近年では1種類の液体肥料だけを使う1液式も増えてきました。
1液式のメリットは液肥混入機が1台だけで済み、コストが下がることです。ただし、1液式の場合には肥料成分の結晶化を防ぐために、1液式専用の特別な肥料を使う必要があります。
また、中には固形肥料を培地に混ぜて使うシステムもあります。原水や液体肥料によっては、pH調整が必要になることも。その場合には、ダウン剤やアップ剤と呼ばれるpH調整試薬を混ぜて使用します。
廃液の処理方法
廃液の処理方法も様々なタイプがあります。
かけ流し
最も多いのはかけ流しでしょう。かけ流しであってもハウスの中に排水するのではなく、ハウスの外に流すことが多く、そうすることで、ハウスの中の湿度を下げることができます。そのため、高設ベンチの栽培槽に用意された排水溝や雨樋、ビニールフィルムなどで廃液を集めます。
底面給水
底面給水は高設ベンチを二重構造にするか、ベンチの下に容器を用意して廃液が溜まる構造にします。そこに給水紐などを設置して底面から上部の培地へ給水させます。こうすることで、水や肥料が無駄になりません。ただし、多湿状態になりやすいので注意してください。
循環
循環の場合には、廃液を回収して、再びそれをいちご栽培に使用します。使う水や肥料の量を減らせることがメリットです。しかし、水で媒介する病原菌が混入すると、圃場の全体に感染が広がってしまうので、菌処理を行う必要があります。
手作りもできる
養液システムは手作りもできます。複雑な制御盤を自分で接続させるのは大変ですし、作業によっては電気工事士の資格が必要なので、簡易的なタイマーがおすすめです。
タイマーを電磁弁と接続させて時刻で制御するか、タイマーと一体型の電磁弁が良いでしょう。
液肥混入機はドサトロンで液肥を混入させるのが簡単でおすすめです。潅水部材は点滴チューブが設置が簡単でコストも安いです。プランターや袋栽培であればドリッパーでも構いません。
PROFILE
株式会社イチゴテック
代表取締役
宮崎大輔
いちご農園の新規立ち上げや栽培改善、経営改善をサポートしている。