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総合的作物管理「ICM」とは? IPMやIBMとの違いは?

品質が良く収量も多い農作物を生産することを目指す「総合的作物管理」=「ICM」。今回は、ICMについての基本からIPMとの違いまで、農林害虫防除研究会 元会長の山本敦司さんにわかりやすく解説してもらった。

ICMとIPMとはどう違う?

最近、農業現場で ICM という英略語を耳にします。でも、IPM(病害虫雑草管理)とはどう違うのでしょうか。ICMは総合的作物管理(Integrated Crop Management,以下 ICM )のことです。簡単に言うと、上手に農作物を作るためのノウハウ大辞典とイメージできるかもしれません。IPMが病害虫雑草による被害ゼロを目的としているのに対して、ICMでは品質が良く収量も多い農作物を生産するのを目指しています。

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ICMを最近よく目にするのは…

ICMは昔からある作物生産のための技術ベースの管理法ですが、なぜ最近になって注目されるようになったのでしょうか?
その一つには、ICM資材の一部であるバイオスティミュラントや、微生物由来の菌根菌やバチルス菌などが実用化・製品化され、手に入るようになってきたからでしょう。でも、普通にあたりまえのように使っている化学肥料や有機肥料もICM資材なのを忘れてはいけません。また、みどりの食料システム戦略が化学肥料の削減や有機農業の拡大を目的としていることも、ICMを後押ししています。

 

そもそもICMとは?


ICMとは、上でも説明したように、上手に農作物を作るための技術ベースの管理法のこと。農作物の品質と収量の向上を目的に、作物を栽培管理する技術を幅広く開発し、資材も実用化してきました。ICMには主に、土壌管理、肥培管理、栽培・作付管理(輪作)、そして病害虫雑草管理(IPM)の4つがあります。それに加えて、水分管理、品種開発、野生動植物と景観の保護・保全、化石燃料などのエネルギーの効率的な利用や作物残渣の管理も含まれます。この中でも、土壌管理は、作物が定着する住み家である土壌の環境や衛生を健康に保つ点では基本的なものです。

このようにみると、IPMはICMに含まれ、その管理技術の一つであることがわかります。特にIPMの一つである耕種的防除は、ICMの技術と共通する点が多くあります。耕種的防除は、病害虫雑草を作付け前に発生させない予防的な技術で、ICMの主要な技術を利用しています。

 

ICMの実践

海外では、ICMの考え方を分かりやすくかみ砕いて農業指導をしている国や地域もあります。また、宮崎県では、宮崎ICM方式を掲げて、作物生産だけでなく生物的防除の効率的な推進を提案しています。また、最近の農薬企業の中には、ICMを社内の組織名に組込んで事業モデルや研究開発を展開している例もあります。

 

ICMをさらに広げると

ICMは農業生態系と自然生態系の両方に関わる管理技術です。ICMをさらに広げると、総合的生物多様性・生態系管理(Integrated Biodiversity/Ecosystem Management: IBM/IEM)になります。IBM/IEMはとても大きな管理方法の考え方で、自然生態系全体の保全を対象とします。言葉だけでも知っておくと知識が広がります。今回は詳しく説明しませんが、生物多様性管理は最近になってよく耳にするようになりました。

 


まとめ

私たち人間でも、良い家に住み、栄養のあるさまざま種類の食べ物をバランスよく食べ、運動し、病気になれば薬や手術で治療する。このようにして健康で楽しい生活を営みます。農作物で言えば、作物の健康を保つのがICMと言えるでしょう。そして、ICMは自然や環境と共生しながら、ムリムダなく美味しい農作物の生産に貢献し続けています。
 

PROFILE

農林害虫防除研究会 殺虫剤抵抗性対策タスクフォース
農学博士

山本 敦司


名古屋大学大学院 害虫学研究室にて害虫の総合防除を学んだ後、日本曹達(NISSO)に就職。農林害虫防除研究会では会長を務めた。現在、同研究会で「殺虫剤抵抗性対策タスクフォース」を立ち上げ情報発信や解説を担っている。


【参考文献】
山本敦司(2023):「化学農薬・生物農薬およびバイオスティミュラントの創製研究動向/シーエムシー出版」, 516~550.
與語康洋(2019): 植調 53(3): 66~73.

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