生産者の取組み

独自の取り組みでファンを呼び込む! 人気イチゴ観光農園の秘密とは?

農業では、美味しい作物を育てるのは大前提だ。しかし、それと同じくらい収益をどう上げるかも重要。今回は、全国に数あるイチゴの観光農園の中でも、独自の工夫で人気を集める農園の取り組みを覗いてみよう。

“空飛ぶいちごハウス”で
楽しむピクニック

本州と四国を結ぶように瀬戸内海東部に浮かぶ淡路島。台風こそ多いものの年間平均気温16℃と温暖な気候で、漁業と共に農業が盛んな地域だ。その淡路島に、話題のイチゴ観光農園がある。農業生産法人・淡路の島菜園が経営する、”空飛ぶいちごハウス”で知られる『グリナリウム淡路島』だ。

淡路の島菜園は、観光農園専業ではなく、むしろ農業生産が主業であり、メインのトマトと共にイチゴも生産している。

淡路の島菜園を立ち上げたのは代表の大森さんだ。外食産業の現場を学んだ後、有機栽培を行う農業法人での勤務を経て、有機肥料の老舗企業に転職。ここで有機の袋栽培『うまトマト』の立ち上げに参加した。2008年に淡路島へ渡って独立就農し、淡路の島菜園を立ち上げた。今では、有機肥料で育てたこだわりのトマトを年間約100tも生産・販売するまでに至っている。

そんな淡路の島菜園が今年からスタートさせたのが、レストランを併設し、収穫体験やイチゴ狩りができる施設。畑からテーブルまで、様々な形で淡路島ならではの魅力的な体験を届けよう、という試みだ。

そもそも、淡路島の農業で有名なのはタマネギである。その淡路島で何故、イチゴ観光農園を始めたのだろうか?

「代表が好きで始めたトマトの生産はおかげさまで軌道に乗っておりまして、その美味しさのみならず、淡路島で大切に育てられたという背景を含めて、高く評価していただいています。一方で『淡路島だからこそできることがある』『栽培へのこだわりと畑で食べる美味しさを伝えたい』と考えて、イチゴを選んで観光農園を始めました」とスタッフの石原さんが教えてくれた。

 

収穫体験だけではなく、
イチゴに囲まれる感覚を体験して欲しい

淡路島は神戸からクルマで30分、大阪からも1時間程度と近いため、近畿圏からのドライブスポットとなっている。イチゴ観光農園であれば、通常でもコンスタントに来場者を見込める。ところが淡路の島菜園は、普通の手法のイチゴ観光農園にはしなかった。

「『グリナリウム淡路島』は食べ放題のイチゴ観光農園ではありません。ハウス内の上空に、温度や日差しによって上下に動く吊り下げ式(ハンギング)のイチゴ棚が設置してあります。私達は、それを『空飛ぶいちごハウス』と名付けました。来場される方は収穫体験だけでなく、空飛ぶイチゴの下でのピクニックもお楽しみいただけます」(石原さん)。


「空飛ぶいちご」を実現する収穫棚は、海外に視察に出掛けた代表の大森さんがスペインで発見したもの。1列おきに入れ違いに上下させることができるため、スペース効率が2倍になる優れモノでもある。

ピクニックエリアへの入園料は、4歳以上1000円、3歳までは無料と安価な設定だ。イチゴ狩りの料金は量り売りで、200g あたり500円〜/1名(4歳以上)。レジャーシート・テーブル・ミニチェアなどのピクニックアイテムは無料で貸し出しを行っている。収穫したイチゴはもちろんのこと、レストランで販売しているスイーツやコーヒーなども、ピクニックをしながら楽しむことができる。


施設内にはレストランが併設され、イチゴを使った見た目にも楽しめる様々なメニューが提供されている。

「世界的にも珍しいハンギング+可動式ベンチを用いるイチゴ栽培では、ハウス内に広いスペースをつくることができます。お花見のようにシートに座って見上げると、全方位をイチゴに囲まれているような感覚になれるんです。この体験はおもしろいですよ!」(石原さん)。

今年の1月にサービスを開始したばかりの『グリナリウム淡路島』だが、早くも1日で500人の来場者を集める日もあるほど盛況なのだという。今後は、ハウス内で提供するスイーツを増やすなど、さらなるサービス向上を目指している。

また、『グリナリウム淡路島』では美味しいイチゴを堪能できるが、その魅力は美味しいイチゴが採れることだけではない。イチゴを収穫する行為やそれを楽しめる空間であることが、より重要なのだ。『グリナリウム淡路島』はイチゴ観光農園の新しいあり方を示している。



 

グリナリウムを運営する
「淡路の島菜園」

淡路の島菜園の主業はトマトの生産農家。ハウスの環境(温度・湿度・炭酸ガス・日射)を見ながら、水や肥料、窓の開閉を調整。フルーツトマトとは違う甘味と旨み、どこか懐かしい味のするトマトが人気を博している。

高度な技術的背景を有しているからこそイチゴ栽培もうまくいくのだ。グリナリウム淡路島では、10種以上のトマトの収穫体験なども楽しむことができる。

DATA

グリナリウム淡路島
〒656-1726
兵庫県淡路市野島常盤1550-10
TEL:090-7556-3244


text: Reggy Kawashima

AGRI JOURNAL vol.12(2019年夏号)より転載

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