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フルボ酸の効果とつくり方を解説!話題の「フルボ酸」は農作物を活性化させる?

近年、土壌改良に最適としてフルボ酸が話題になっている。自然界では、腐植土層や水の中にわずかに含まれている希少だが、うまく活用し土壌改良、生育促進作用などが期待できると注目されている。

<目次>
1.土壌改良に有効といわれるフルボ酸とは?
2.フルボ酸の効果とは?
3.フルボ酸のつくり方とは?
4.フルボ酸を手軽に取り入れる方法は?
5.フルボ酸を導入し地力を回復させよう

 

土壌改良に有効といわれるフルボ酸とは?

近年、土壌改良に有効なフルボ酸が話題となっているが、フルボ酸とはどのような物質なのだろうか。

フルボ酸は、抗酸化作用があると話題になり、農業従事者のみならずサプリメント業界でも期待が高まる物質で、今後需要の増加が見込まれる。

まずは、フルボ酸がどのような物質かを確認しよう。

フルボ酸とは?

フルボ酸は、動物や植物の死骸、排泄物が微生物などによって分解され、その途中で化学反応がおきて生成された腐植物質のひとつだ。

茶褐色や黒に近い色をした有機物で、電解質の性質を持つため土壌に含まれるミネラルを根に届ける作用があると注目されている。

そのため、近年では土壌改良に活用されているが、フルボ酸が含まれる腐植土層は100年間ほどかけてやっと1センチつくられるという希少なものなのだ。

フルボ酸とフミン酸の違いとは?

フルボ酸と同様にフミン酸という腐植物質があり、これらはよく間違えられるのだが、そのチカラには大きな差がある。

そもそも腐植物質はフルボ酸、フミン酸、ヒューミンという3つに分類されるが、その中で最も粒子が小さいのがフルボ酸である。

腐植物質には、金属との結合によってミネラルを水に溶けない状態で運び、根に吸収させるキレート作用があるが、フルボ酸はこの作用が極めて高いといわれているのだ。

フミン酸にもこのキレート作用はあるが、フルボ酸と比較するとその作用は低い、その一方で水分の保持にはフミン酸が効果を発揮する。

フルボ酸は微量しか生成されない?

土壌改良に大きな期待が持てるフルボ酸だが、自然界でフルボ酸を生成するのは難しい。

自然界では、腐植土層や水の中にわずかに含まれている希少な物質だ。

腐植土層は地表わずかに存在する貴重な層で、1センチ堆積するのに100年ほどもかかるため、奇跡の物質とも呼ばれている。

フルボ酸にはどんな効果がある?

フルボ酸は電解質であり、ミネラルなどを包み込むようにして植物の根に届ける。

ミネラルなどの栄養分を受けとった植物は、生育が促され根もより強くなっていく

根に活力が出ると植物は栄養をさらに吸収しやすくなるのだ。

土壌改良という観点でも、腐植物質のある土壌は保水力や通気性が高く、微生物が多いことからアミノ酸の含有量も多い。

一般的には堆肥などで土壌改良するケースが多いが、堆肥が腐植物質になるにはかなりの時間を要してしまう。

しかしフルボ酸を利用することにより、短期間で腐植物質のある肥沃な土壌へと改良できる

フルボ酸の効果とは?

事例①:農作物の収量がアップ

農作物の栽培を繰り返せば、土壌は弱り一般的な堆肥を使用しても、土壌のチカラを回復させるのには時間がかかる。

しかし水に溶けやすくキレート作用の高いフルボ酸は、豊かな土壌を効率的につくり上げることが出来る。

さらに植物の根に、最も効率よくミネラルや微量要素を届けるといわれているのが、フルボ酸だ。

実際にフルボ酸を使用したところ、害虫被害も減り土壌に微生物が増えたことで作物の生育が良くなったという事例もある。

フルボ酸は「土壌」という、最も基本的かつ重要な場所から農作物の収量をあげ土地生産性を高める効果があるのだ。

事例②:植物の根が活性化

フルボ酸の持つキレート作用は、ミネラル・アミノ酸を根まで運び、効率よく吸収させるチカラを持っている。

ミネラルなどの栄養分は根から効率的に吸収され、植物全体へ運ばれていくので、活発な光合成を促し、作物の生育も良くなるのだ。

果樹農家では根にフルボ酸を散布したことで、葉が丈夫になり果実の糖度が上がったという事例もある。

フルボ酸による効果のひとつは、発根などを促進し根を活性化させることで、肥料の吸収が良くなることだ。

事例③:土壌の品質向上

フルボ酸の最も重要な効果としてあげられるのは「土壌の品質向上」だ。

フルボ酸を使用することで土壌中に微生物が増え、それらの分泌物が団粒構造をもつ良い土壌をつくり出す。

水持ちが良いだけでなく、水はけも良い団粒構造の土壌には、根に酸素がいきわたり、根がしっかりと張るといった効果がある。

フルボ酸を使用した結果、「根の張りが良くなり、作物の生長スピードが上がった」、「土壌が改善したことで収穫量が増えた」という報告もある。

フルボ酸のつくり方とは?

自然界では希少なフルボ酸だが、自分でつくることもできる。市販のものよりも鮮度の高い状態で使用できるというメリットがある。

しかし、フルボ酸をつくる際は、手袋などを用意し換気の良い場所で作業をするなど、安全に注意する必要がある。

フルボ酸を効率良くつくりたい場合は、品質の良い有機物を材料として使用すれば分解速度もあがるのではないだろうか。

それでは、フルボ酸のつくり方を詳しく紹介しよう。

フルボ酸のつくり方

まずは枯れ葉や草などの材料となる植物、糖蜜、培養土を用意し、温度管理ができる空間も必要だ。

枯れ葉や草などを均一の大きさにそろえるため細かく刻んでいき、糖蜜を加えたらよく混ぜ、培養土を加えて密封した容器内で発酵させる。

培養土を加えることで微生物が増えていくので、発酵途中のモノを素手で触るのは避け密封容器は空気に触れないように気をつけよう。

さらに温度管理に関しては冷暗所が適しているので、直射日光のあたる場所や高温多湿を避けるようにしよう。

気をつけながら完全に分解するまで温度管理を続け、最後に濾(こ)してフルボ酸を抽出する。

フルボ酸を手軽に取り入れる方法は?

自分でつくることで費用を抑えることが出来るフルボ酸、一般的に市販されているものは液体状になっている。

フルボ酸は植物活性剤と呼ばれ流通しているが、手軽に取り入れることが出来るのも利点のひとつだ。

方法①:水に溶かして使用する

フルボ酸は、水に溶かし希釈して使用するが、市販の場合は指示されている濃度に従い、自作の場合はpH6程度まで希釈して使用するようにしたい。

希釈したフルボ酸は、植物の根元に散布することでミネラルや肥料の吸収を促進するのだ。

この時のフルボ酸の濃度は高ければ良いというわけではない。濃度が高すぎれば作物をダメにしてしまう恐れもあるので、適切な濃度を守ることがポイントだ。

方法②:フルボ酸が含まれている土を使用する

フルボ酸を手軽に取り入れる方法は、水に溶かし散布するほかに、フルボ酸が含まれている土を購入し植物を育てるという方法もある。

国内では「地力の素」や「カナディアンフルボ」そして「フルボ鉄」が、化学的に合成されていないとして有機JAS規格別表1適合資材となっている。

これらの資材にはフルボ酸はもちろんフミン酸も含まれており、土壌改良の点からも大きな効果が期待される。

フルボ酸を導入し地力を回復させよう

いま注目を集めているフルボ酸は、これまでの農業を大きく変える可能性がある。

限られた場所で栽培を繰り返すことで弱っていく土壌、そんな土壌の回復をスピーディーに行うフルボ酸を導入すれば、農作物の収量は確実に上がっていくことが期待される。

フルボ酸には土壌の有用な菌を増やす効果もあるので、病害の予防にも期待が持てそうである。

フルボ酸を導入することで、農業の基本となる「土壌づくり」を見直してみるのも良いだろう。


監修:山門昭雪
Xアカウント:@yasaidaisuki6
野菜と多肉のぴー農園園主 幼いころから祖母の畑で遊び、国立T大学農学部卒。種苗会社で育種、産地開発、園芸相談などを担当。土壌医。

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