新資材の積極的な活用で働き方改革!地域の白ネギ栽培の課題解決へ
2025/01/23

大分県湯布院町の農家「ネギの坂田」坂田章太さんは、31歳という若さで大分県中部地区の白ネギ栽培の指導員を務める。三方良の考えのもと、大分県の白ネギ部会を牽引する取り組みについて聞いた。
1.固化培土での研究成果がネギ農家の働き方を変えた
2.高冷地でのネギ栽培若手農家の挑戦
固化培土での研究成果が
ネギ農家の働き方を変えた
大分県湯布院町で白ネギ栽培を行う「ネギの坂田」代表の坂田章太さんは、農業大学校の卒業後に、豊後高田市で白ネギを周年栽培・出荷している大規模ネギ農家の仲井農園に就職。独立したいという目標を持って仲井農園で働く一方、豊後高田地区の営農青年同志会に入会し、白ネギ栽培についての情報交換や研究に励んでいた。
同地区での白ネギ栽培のネックになっていたのが、白ネギの育苗・定植についてだった。「ネギは根が発達するまでに時間がかかるため、播種から育苗に約90日と長い時間がかかります。また、根が発達していないまま定植するので根鉢が崩れやすく、それを防ぐため固化材を入れるなどの手間がかかっていました。さらに定植時も、根鉢が崩れやすく欠株がでるため、手で補植作業を行わなければなりませんでした」。
この育苗期間の長さと、定植にかかる手間。この問題を解決するため、坂田さんは青年同志会のメンバーとともに、2016年から育苗の研究を開始した。
目をつけたのが「固化培土」だ。「淡路島で玉ねぎ用培土を作っているメーカーに問い合わせて、白ネギ用の培土を作れないか相談しました。そこで完成したのが、白ネギ専用の固化培土『スミソイル』です。固化材を使わず、栽培過程で固化。根が巻かずとも根鉢を形成し崩れない、という特性を持つスミソイルについて、3年かけて効果検証を行いました」。
坂田さんの苗(横浜植木株式会社 龍みのり)
検証の結果、育苗期間が60日に短縮。根鉢が固まっていることにより、補植作業が減り定植時間が半分以下に減少。さらに元肥が入っているため太くがっちりした苗ができ、活着もよく反収が1.5倍に増。M、L率がアップし販売額も増加。育苗期間短縮により苗の生産性が向上し、規模拡大につながるなど、想像以上の効果が見られた。
この結果を2020年に佐賀県で開催された九州・沖縄地区青年農業者会議の「プロジェクト発表部門」で発表し、坂田さんは最優秀賞を受賞。この結果を踏まえ、産地で固化培土「スミソイル」の研修会を行い、多くのネギ農家が導入することとなった。
2017年には固化培土出荷数が1.5ha分だったものが、2019年には約120ha分の出荷数となり、「働き方改革に沿った資材」として産地に普及している。
高冷地でのネギ栽培
若手農家の挑戦
このような活動を続けながら、独立への目標に向けても歩みを進めていた坂田さん。由布院の高冷地にある、40年間耕作放棄地となっていた牛の放牧場を紹介されたことをきっかけに、2021年にはその土地で白ネギ栽培を行うことに決め、「ネギの坂田」として独立を叶えた。
現在は、坂田さん夫婦とスタッフ、さらに繁忙期には神奈川県から両親が手伝いに来て、由布院で白ネギの栽培・出荷を行っている。
坂田さんが白ネギを栽培する圃場は、高冷地や傾斜地ばかりだ。それでも技術があれば、白ネギの栽培は可能だと坂田さんは言う。そして、坂田さんは固化培土だけでなく、肥料や新しい資材、散布方法など全てにおいて作業省力化や反収アップを考え常にチャレンジし続けている。
「現在は、デンカ株式会社のバイオスティミュラント『レコルト』で実証をしています。その他にも、自分が試して良かったことは部会で共有し、地域農業の発展を目指しています。自分だけが良い、ではいけない。生産者や市場、さらには消費者の方々も喜んでくれる三方よし、の気持ちで、これからも大分県の農業の発展を目指します」と意気込む。
坂田さんの圃場
PROFILE
大分県4Hクラブ事務局長 坂田章太さん
1993年神奈川県生まれ。大分県立農業大学校農学部卒業。2021年に独立し、「ネギの坂田」代表を務める傍ら、大分県中部地区の白ネギ栽培指導員、大分県由布市の白ネギ生産部会の特別指導員、大分県農業青年連絡協議会の事務局長などを務める。
写真・文/株式会社LaTo
AGRI JOURNAL vol.34(2024年冬号)より転載