ハクビシンから“傘”でブドウを守る! 毎日の被害を減らした10万枚ヒットの獣害対策【4Hクラブ員の活動報告】
2026.09.14
「第64回全国青年農業者会議」にて発明製品「ぶどうまもーる®」と、製品にまつわる取り組みを発表し、「農林水産経営局長賞」を受賞した原昌紀さん。経営者としての手腕も光る、注目の農家だ。
メイン画像:現在、3名の社員と15名ほどのパートスタッフとともに農園を運営。
PROFILE
長野県4Hクラブ(2021年卒業)
原 昌紀さん(写真中央)

「株式会社丘の上ファーム」代表。長野県下伊那郡豊丘村にて「丘の上ファーム 原農園」と観光農園「丘の上さくらんぼ園」を運営。
果実を物理的に守る“傘”が
10万枚以上売れる人気製品に
厚さ0.2mmながら、野生動物の歯や爪がとおりにくい。
「ぶどうまもーる®」は、鳥獣害対策を目的とする製品。本製品は、切れ込みが入った四角形のプラスチックシートで、果実の房をすっぽりと覆える構造となっている。設置すると、ブドウ棚や支柱に登った野生動物が手を伸ばしても、果実に触れることができなくなる。果実を物理的に保護し、食害を減らすというのが、「ぶどうまもーる®」の大まかな製品概要だ。
「ぶどうまもーる®」を設置したところ、食害が13%減ったという検証結果も。
本製品を開発したのは、長野県の南部に位置する豊丘村にて果樹農園を営んでいる原昌紀さん。原さんが就農した頃より、自身の農園や地域農家では、鳥獣害による食害が多数発生していたという。
「うちの農園では毎日、10〜20房のブドウが食害されていました。毎日1〜2万円の損失が発生していたので見過ごせず、獣害対策のネットを張るなどしましたが、思うように効果が得られなくて。『一つずつの果実に対策を施すのが、もっとも効果的なのでは』と考えるようになり、その後、“傘”で果実を保護するというアイデアを得ました」と、原さん。
アイデアをかたちにしようと、何十社ものメーカーに製品の開発協力を打診したものの、断られたそう。しかし1社のみ、依頼を引き受けてくれるメーカーが現れたため、まずは試作からスタート。約3年間、改良を重ね、特許申請や商標登録を済ませた後、「ぶどうまもーる®」を発売した。本製品を発売した2022年から現在にかけ、すでに10万枚以上が売れたという。
雇用を維持するため
栽培品目と品種を拡大
大玉で糖度が高いナガノパープルは人気商品の一つ。
就農する前は、大手飲料メーカーで営業マンとして働いていた原さん。会社での営業成績はよく、責任あるポジションを任される機会もあったものの、以前より経営に関心があったことから、自身が30歳の時に親元就農した。
就農後、栽培品目と品種を段階的に増やし、現在は20種類以上のリンゴ、モモ、ブドウなどを作っている。さらには観光農園も新たに開き、一般消費者を対象に6〜7月にかけてサクランボ狩り体験を提供している。原さんいわく、スタッフの雇用の維持が、栽培品目や事業を拡大してきた理由の一つだという。
サンふじやシナノホッペなどを生産。
「はっきりとした農閑期があり、その時期に仕事がなくなる農園では、人がなかなか定着しません。人が定着しなくともスポットワークなどを活用すれば、極端な人手不足に陥ることもないですが、人を駒のように使う農園は、私が目指すものではありません。スタッフの雇用を守り、働きたい人はしっかりと働ける環境をつくるのが、経営者として私が目指すところです」。
原さんは、労働環境の整備にも力を入れている。社員に対しては賞与を支給するなどし、一般企業で勤める場合と同程度の収入が得られるようにしているそう。休日もしっかりと取れる環境があり、現状、社員の有給取得率は100%だ。また、土日は繁忙期を除き、休日としている。
このような働く側にとっても理想的な環境をつくるうえでは、安定した経営が欠かせない。「原農園」の経営が安定している最たる理由は、高品質な農産物にあるのだとか。
「うちの農園では、どこに出荷しても高評価を得られる農産物を生産できています。生産量も多いですが、品質にバラつきがなく全体的に高品質なので、JAに全量を出荷したとしても、十分な利益を確保できます。また、ECサイトでの販売などをとおしても利益が得られているので、経営を安定させることができています」。
長野県4Hクラブは2021年に卒業。「第64回全国青年農業者会議」には特別枠で参加した。
今後は農園の知名度向上などをとおし、さらに経営を安定させたいという。
文/緒方よしこ
AGRI JOURNAL vol.39(2026年春号)より転載
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