生活クラブと農園、消費者が連携して誕生! 未来型のソーラーシェアリング施設
2026.09.01
農産物と電力の双方を生産する仕組みである、ソーラーシェアリング。神奈川県にある「さがみこファーム」は、企業や消費者の協力を得つつ、設備の増設をしている。ファームを訪問し、ソーラーシェアリングがもつ可能性を探った。
メイン写真:ファーム内にあるソーラーシェアリング設備。当ファームは「食とエネルギーのテーマパーク」とのキャッチフレーズを掲げている。
持続可能なエネルギーを
市民の手で管理するための試み
「さがみこファーム」は、2019年に営農型発電所「ソーラーシェアリング」の運営に着手。農園内のブルーベリーやイチジク、ワイン用ブドウの畑に支柱と太陽光パネルを設置し、農産物と電力の両方を生産・提供するビジネスを展開してきた。2025年夏には、ソーラーシェアリングの開発や運営を主事業とする「たまエンパワー株式会社」、「生活クラブ」の首都圏4単協などの協力を得て、ソーラーシェアリングの新施設「たまエンパワー生活クラブ前戸発電所」を設立。
「たまエンパワー生活クラブ前戸発電所」の建設資金の一部は、クラウドファンディングで調達された。生活クラブの組合員などから出資があり、約700万円の支援金が集まったそう。
本設備は、ファームで7番目に誕生した7号機発電所となる。食品の開発や共同購入、宅配事業で知られる「生活クラブ」は、じつはこのほかにも、複数の事業を手がけている。うち一つが、電力供給事業。2014年には電力小売会社「株式会社生活クラブエナジー」を設立し、「生活クラブでんき」というブランドを立ち上げている。
「東日本大震災の発生後、生活クラブ内で『原発の電力への依存度を減らすべきでは』という問題提起がありました。議論のすえ、『電力を市民の手でコントールする』『再生可能エネルギーで電力をまかなう』といった目標が打ち立てられました」と語るのは、「生活クラブエナジー」の半澤 彰浩さん。
その後誕生したのが、省エネルギーと再生可能エネルギーの利用をすすめる「生活クラブでんき」だという。
「生活クラブエナジー」は、全国にある再生可能エネルギー発電所から供給された電力を、消費者に提供。これと並行して、関東圏や北海道に再生可能エネルギーの発電所も新設してきた。近年は、「たまエンパワー株式会社」と事業提携をし、合弁会社「たまエンパワー生活クラブ前戸発電株式会社」を設立。そのうえで、「さがみこファーム」内に再生可能エネルギー発電所を新設した。
発電された電気は、生活クラブエナジーを通して消費者に送られる。
農業と相性がよく、
副次的効果もある設備
「さがみこファーム」「たまエンパワー株式会社」の代表、山川勇一郎さんによると、ソーラーシェアリング型農業には副次的な効果があるという。例えば、太陽光パネルによってつくられる“日陰”がそう。日陰には、作業者の負担を減らすほか、作物の高温障害を防ぐ効果があるという。
「気候変動により夏場は異常な高温が観測されています。屋外で作業する農業生産者にとって、高温対策は近々で取り組むべき課題。作業者や作物を直射日光から守るパネルは、一つの対策になります。見学のため『さがみこファーム』を訪問した農家には、日陰に注目する人が多くいます」と、山川さん。
「たまエンパワー生活クラブ前戸発電所」の竣工式でスピーチした山川勇一郎さん。「農地を生かしつつ、エネルギーを生み出せるのがソーラーシェアリング。地域を活性化し、課題解決にも貢献できる素晴らしい取り組みです」などとコメント。
さらにはパネルの架台は、防鳥ネットの支柱やブドウ棚としても活用できるため、将来的には経費を抑えることも可能に。パネルの架台を活かして防鳥ネットを設置した場合、専用の支柱を立てて防鳥ネットを設置したケースと比較して、設置コストが1/4程度に抑えられるという試算もあるという。
「さがみこファーム」で栽培されている、大粒のブルーベリー。
太陽光パネルの下で、ブルーベリーが養液栽培されている。
「まずは圃場の一部にソーラーシェアリングの設備を設置し、費用対効果をみながらパネルの設置箇所を増やしていくといいのでは。すでに所有している圃場で小さな設備を設置する場合、経営に無理はでないと思います」と、山川さんはアドバイスする。
「環境との調和や地域との関わり、消費者からの理解が、ソーラーシェアリングを営むうえでのポイントになります」と農林水産省の木村崇之さん。
取材・文:緒方よしこ
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