高精度な位置情報補正力を持つ農薬散布ドローンが登場! 正確な散布で農薬浪費の削減へ
2020/11/13
株式会社旭テクノロジーは、完全自律飛行ドローン「EA2020」の販売を開始した。一般的に利用されるGPSでは位置情報に1~2mの誤差が生じるが、誤差10cm程度までに修正。農薬散布に用いることで、誤散布防止や農薬浪費の削減をサポートする。
位置情報の誤差を小さく
正確な薬剤散布へ
株式会社旭テクノロジーは、位置情報取得において誤差の小さい、完全自律飛行ドローンの取り扱いを開始した。農薬の散布エリア設定範囲内で、より正確な散布ができるので、設定範囲外への誤散布防止や農薬浪費の削減が実現する。
これまでのドローンは、GPS情報のみを頼りとする飛行が一般的であり、受信できるGPS数が少ない場所や、繋がりにくい時間帯の場合は、位置情報に1~2mの誤差が生じるなど、正確性に欠けていた部分があった。
一方、本機体は大手通信キャリアのネットワークを使用することで、国土地理院が提供する電子基準点の座標データを取得。その結果、今まで必要だったドローンの基地局を現場に設置することなく位置情報の補正を行い、誤差10cm程度の制度を可能にした。
2021年度には、株式会社スカイマティクスが展開する、作物の生育状態の解析ソフト「いろは」との連携を予定。葉色を解析する「いろは」との連携により、生育のばらつきへの対応が期待できる。
作物に合った高さで農薬散布
気流も利用し飛散散布を実現
本機体は、EAVISION社によって開発された完全自律飛行ドローン「EA2020」。自動障害物回避機能を搭載しており、前方の2眼カメラと下部のレーザーレーダーで障害物を検知して、回避する方向や高さを瞬時にAIが判断する。状況に応じて垂直や水平にも移動できるので、高レベルでの安全運用が実現する。
異なる地形や段差などに対しても、設定した高さで農薬散布することで高度の調整ができるので、飛散散布の割合減少も期待できる。
さらに、4枚の大型プロペラにより下方向に強力な下降気流を起こして(ダウンウォッシュ)農薬を下に流すため、横に流れる薬剤を最小限におさえる。既に使用している農家からも、隣にある作物に影響しないことが好評のようだ。
完全自律飛行ながらも、スタート時などは専用のタブレット端末にて機体をコントロール。不測があれば、緊急用のコントローラーにより、すぐに自動から手動に切りかえられるようになっている。飛行スピードは、秒速5m(時速17km程度)、飛行時間は積載量により変わるが10~15分となる。
本機体で農薬散布を実施することにより、事故の防止が期待される。散布用ドローンの事故や墜落は、人の操作ミスにより起きることが多いからだ。また、手動散布の場合は、パイロットの疲労でムラが生じやすくなるが、自動の場合はムラが生じにくい。農薬散布作業の効率化、減薬野菜の育成を実現することが狙いだ。
現在は液剤のみが散布可能で、タンク容量は、15リットル。粒剤タンクは2021年春頃より販売開始予定。
DATA
文:竹中唯