熊本の果樹部会が挑戦! 「ドリップファーティゲーション」で天候に左右されない高品質な栽培へ
2024/07/24
熊本県農業法人協会会長と副会長が注目する、果樹栽培に最適なサンホープ社の最先端潅水技術「ドリップファーティゲーション」について語る。
メイン画像:(右)熊本県農業法人協会 香山勇一会長(有限会社コウヤマ 代表取締役会長)、(中)熊本県農業法人協会 副会長/果樹部会会長 牛島清市氏(農業生産法人ウシジマ青果株式会社 代表取締役)、(左)株式会社サンホープ 益満ひろみ社長
天候に左右されない
高品質果実の栽培実現に向けて
国内有数の農業県、そして柑橘の産地である熊本県で、柑橘の新しい栽培技術について熊本県農業法人協会の香山勇一会長、副会長であり果樹部会会長の牛島清市氏、灌水機器資材の輸入販売を行う株式会社サンホープの益満ひろみ社長にお話を伺った。
近年、柑橘の新しい栽培技術として広がりを見せている「マルドリ方式」に、牛島副会長は注目をしているという。マルドリ方式とは、「マルチ」と「ドリップ(点滴)」を利用し、効率的に潅水施肥を行える栽培技術である。その栽培技術で重要になってくるのがドリップファーティゲーション(点滴潅水)だ。ドリップチューブによる点滴潅水で流れる水に、液体肥料を混入させて施肥を行うシステムで、サンホープ社はそのドリップファーティゲーションを得意とする会社だ。既に水田での実証実験や愛媛のみかん栽培で効果が出ており、サンホープ社はその潅水資材だけではなく、栽培技術までも広めている。
点滴潅水で流れる水に液体肥料を混入させ効果的に潅水・施肥を行うシステム。柑橘栽培において、マルチングとあわせて導入することで、高品質化に高い効果があるとされている(マルドリ方式)。
実は今年3月、牛島副会長の声かけで「果樹栽培に最も重要な最先端ドリップファーティゲーション技術」というセミナーが熊本で開催され、益満社長が登壇した。
今年3月の「果樹栽培に最も重要な最先端ドリップファーティゲーション技術」セミナーの様子。
「サンホープ社のドリップファーティゲーションは、土壌水分検知センサーや果実の肥大センサーからの数値を用いて最適な給水量を導き出し、その数値を元に潅水施肥を行えるシステムです。こういった数値に基づくデータ管理でドリップファーティゲーションを使用することで、誰でも高品質の柑橘を安定して栽培できるんです」と益満社長は話す。
熊本の果樹部会に変革を起こす!?
ドリップファーティゲーション導入へ
近年、地球温暖化による異常気象が続いており、農産物全般の栽培において、収穫量や品質の安定という課題がつきものである。熊本もその例に漏れず、また栽培管理の問題以外にも後継者問題などの課題を抱えている。そこで牛島副会長が期待を寄せるのがドリップファーティゲーションだ。
「ドリップファーティゲーションのようなスマート農業の取り組みを進めることで、誰でも安定生産をすることができ、農業の後継者問題の解決の糸口になるのでは、と考えています。しかし、新しい取り組みをする際、現場では費用や操作面で不安が生じがちな現実もあります」(牛島副会長)。
それに対し香山会長は「新しいモノや技術に飛びつく人と、現状の栽培方法を頑固に守る人のどちらもが存在していることで、農業が進化しながら続いていく」と話す。
「熊本には、頑固者という意味の“もっこす”と、新しいもの好きという意味の“わさもん”という言葉があります。今回は牛島副会長が“わさもん”として、このドリップファーティゲーションを導入することで、今後の熊本の果樹部会に変革が起こることを期待しています」(香山会長)。
牛島副会長のドリップファーティゲーション導入予定地。
既に生産から販売までの工程管理をクラウド化している牛島副会長は、「栽培にも最先端のシステムを導入することで、熊本の柑橘類の高品質化・安定生産・自立した農業経営者の育成を実現したい」と意気込む。
「自らドリップファーティゲーションシステムを導入し、費用対効果や操作性などの情報をオープンにすることで、次世代の農家の育成と、農業の衰退化抑止に尽力したいです」(牛島副会長)。
さらに香山会長は「熊本は施設園芸や酪農も盛んですから、サンホープ社の潅水資材や技術は認知されることで“生き残るためのスマート農業”としてさらに広がっていくのではないか」と話す。
J AGRI KYUSHUで展示されていたサンホープ社の頭上潅水システム。潅水だけでなく、牛舎の温度調整などにも幅広く活用できる。
それを受けて益満社長は「まずは新しい技術を実践して効果を実感していただきたい。そこでの信頼をもってじっくりと地域に広がり、皆さんの手助けができると嬉しい。さらに熊本は、“水”が豊富な地域なので、ドリップファーティゲーションを活かした栽培方法で最先端のスマート農業のモデルケースとして発展する可能性があると思います」と笑顔を見せた。
問い合わせ
株式会社サンホープ
日本に初めて散水用スプリンクラーを持ち込んだ散水用スプリンクラーの会社。スプリンクラーを使った茶園を霜から守る散水氷結システムで農業技術省受賞。その後もアメリカやヨーロッパ各地を回り、豊富な知識と経験で日本の農業界に最新の情報を発信している。
TEL:0120-405-660
AGRI JOURNAL vol.32(2024年夏号)より転載
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