青パパイヤ栽培を通じて消費者に魅力発信! 地域活性化にも貢献する農園の取り組みとは
2020/03/27
日本ではあまり馴染みの無い「青パパイヤ」を生産する「オラ ソル アシエンダ」。消費者に青パパイヤの魅力を伝えるために行っていることとは?
昨年開催された「農と食のSDGs~女性の起業と復興」では、フードビジネスに関わる女性が登壇し、活動内容などを発表。本記事では「地域と農業」をテーマに講演したパパイヤ農園「Hola Sol Hacienda(オラ ソル アシエンダ)」の取り組みを紹介する。
華やかなイベントをつうじ
青パパイヤの魅力を発信
茨城県古河市にあるパパイヤ農園「Hola Sol Hacienda(オラ ソル アシエンダ)」の阿部美穂さんは、医療の現場で20年以上にわたり、病理・細胞診検査業務などに携わった経験をもつ。
退職後、夫である直人さんに付き添ってメキシコに在住し、帰国後、直人さんとともに就農した。
青パパイヤは、日本においてはあまり馴染みのない食材。青パパイヤを生産物として選んだ意図として、阿部さんはこう話す。
「私たちは旅行が好きなので、『旅する野菜』を農園のコンセプトにしたいと思いました。世界の料理を食したとき、その地に旅した気分になりませんか? 海外の料理をご紹介し、日本にいながら旅をしているような体験を提供したいと思ったんです」。
パパイヤ農園「Hola Sol Hacienda(オラ ソル アシエンダ)」の阿部美穂さん
青パパイヤの原産地は、メキシコ南部から西インド諸島にかけての地域。阿部さんによると、現地では7〜8mもの高さにまで成長し、およそ25年間にわたって生息し続けるという。関東で栽培した場合は、15cmほどの苗が4〜5ヶ月で2〜3mになるのだとか。
「パパイヤの木は、霜があたると枯れてしまいます。日本では、寒い時期を迎えると枯れてしまうので、毎年苗から木を育てています」と、阿部さん。
霜が降りる前に収穫をするため、「オラ ソル アシエンダ」でおもに販売しているのは、完熟前の青パパイヤ。しかし、青パパイヤには、実が熟する際に使われるエネルギーが蓄えられているため、完熟したパパイヤよりも多くの栄養素が含まれているそう。特に、消化を助けるパパイン酵素、抗酸化力が高いポリフェノールなどが豊富だという。
青パパイヤや「オラ ソル アシエンダ」の農園の魅力を伝えるため、阿部さんご夫妻は、都内で定期的にイベントを開催してきた。イベントでは、地元シェフが手がけた、青パパイヤを使った創作フレンチを提供したり、青パパイヤ料理と日本酒とのペアリングを提案したりと、趣向を凝らした内容を提供。
さらには、古河市内にある農園でも、苗の植え付けや収穫のイベントを実施。地元で活躍するシェフや地元の酒蔵とコラボレーションすることで、都心を中心とする各地から多くの人がやってきた。青パパイヤや農園の魅力はもちろん、地域の魅力を発信している点が、「オラ ソル アシエンダ」の特徴の一つといえる。
「旅するイベント」の様子。「旅する野菜」のフルコースとともに地元酒造会社の日本酒のペアリングを楽しむ参加者。(写真提供:オラ ソル アシエンダ)
「オラ ソル アシエンダ」は、今後も継続してイベントを開催する予定。
「台風15号と19号により、農園では、秋と冬に出荷を予定していた野菜のほとんどを失いました。そんななか青パパイヤのみ、木に実った状態で残っていました。青パパイヤは比較的病気に強いため、殺虫剤を必要としません。
また、暑さや台風にも強く、優れた保存性を持ちます。ただ、食べ方が浸透していないため、明確な販路がありません。これからも、イベントを通じ、食べ方を広めていきたいと考えています」(阿部さん)。
「旅するイベント」で提供されたタイ料理のソムタム。(写真提供:オラ ソル アシエンダ)
また、パパイヤの栄養価にも着目している。
「毎年、5万人台の人々が新たに就農していますが、生活が安定しないことから、そのおよそ3割が5年以内に離農しています。そして、私たちの前にも、販路の確保が“壁”として存在しています。
一般消費者や飲食店などを対象とした販路は、もはやレッドオーシャン化しており、参入しにくい状況です。こうした状況を鑑み、新たな販路として、青パパイヤの6次加工品を防災食として販売したいと考えています」(阿部さん)。
DATA
Photo&Text:Yoshiko Ogata