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雑草のプロフェッショナルに聞く! 草をマルチにするメリットと留意点

草をはじめとする有機物は、マルチとして活用できるうえ、多様な効果をもたらしてくれる。その効果の詳細と有機物マルチを施す際の注意点を、雑草のプロフェッショナルである伊藤幹二さんに教えていただいた。

 

草をマルチにした場合の効果

 

有機物マルチの定義

草マルチは、歴史的に日本農業を支えてきました。その効果とメリットを現在の科学的視点で説明する前に、有機物マルチがどのように定義されているのかを説明します。

地表の被覆に用いる資材は多岐にわたり、大きく以下の3つに分類することができます。
①雑草、落枝落葉、剪定枝葉などが該当する有機物マルチ材
②雑草、芝生、カバークロップなどが該当する植物マルチ材
③塩ビやポリシートといった合成化学製品である無機物マルチ材

無機物マルチ材であるポリシートも化学的には有機合成化学物質になりますが、ここでは植物由来のマルチ資材を用いることを有機物マルチと呼ぶことにします。なお、有機物マルチ材に含まれる物質はそれぞれ異なり、土壌に与える影響も異なります。今回はイネ科雑草にスポットを当てて、マルチとしての活用とその効果を説明します。
 

雑草マルチのメリット

刈り取ったイネ科雑草で覆われていない土壌に雨滴が当たると、土壌粒子が破壊され泥の状態になり、その後乾燥すると、土壌表面の固化が進みます。固化した土壌表面は風で飛ばされやすく、豪雨によって容易に流出します。土壌にイネ科雑草を敷く第一の目的は、雨滴で土壌に衝撃が加わり、土壌とそこに含まれる栄養塩基類が流亡することの防止です。

もちろん、刈り草をはじめとするマルチには、雑草の発生抑制、地温や土壌湿度の安定、土壌微生物の活性化と土壌の団粒化、有機炭素の補給など副次的な効能も認められますが、あくまで一義的な効果は表土の保全なのです。

 

雑草マルチの留意点

広葉雑草、とくに多年生の広葉雑草をマルチ材として使用するのは避けましょう。多年生の広葉雑草は栄養繁殖する機能をもち、茎葉を圃場に施用すると発根して根付く可能性が高いです。また、これらの雑草の茎葉から溶脱する物質が、作物の生育を妨げることも知られています(「アレロパシー現象」といいます)。推奨できるイネ科雑草は、夏に生じるススキ、カヤ、ヨシ、チガヤや、冬に生じるイヌムギ、ネズミムギなどです。

なお、3cm程度の厚さの草マルチを圃場全面に施すには、その面積の2~3倍の草地が必要です。そして、1年ごとに草マルチを補給することも大切です。周辺にある畦畔や耕作放棄地、ゴルフ場などの雑草をチェックし、その所有者に除草を許可してもらいましょう。きっと積極的に協力してくれるでしょう。
 

草のマルチ化に使える!

OREC 雑草刈機シリーズ ブルモアー

「草と共に生きる」をコンセプトに掲げるオーレックによる、長い雑草はもちろん、小笹も細かく粉砕するブルモアーシリーズ雑草を刈り取ってマルチにする際、重宝する一品だ。また、粉砕した雑草は土壌にすき込んで、スムーズに還元することもできる

車体が小さく扱いやすい「HR402X」から、馬力、刈幅ともに最大の「HRC805」まで全10種類が用意されており、圃場や草地の環境に合わせて最適なものを選べる点も魅力。

 

PROFILE

伊藤幹二さん

持続可能な緑地管理を目指す人たちに専門的なサポートを行う「マイクロフォレスト リサーチ株式会社」の代表。「NPO法人 緑地雑草科学研究所」の理事でもある。

問い合わせ

株式会社オーレック
TEL:0943-32-5002


文:緒方佳子
イラスト:岡本倫幸

AGRI JOURNAL vol.23(2022年春号)より転載

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