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認定生産者に聞いた!「環境負荷低減事業活動実施計画」の作成と認定のメリットは?

農業生産者が「みどり戦略」に賛同して支援を受けるには、地方自治体が策定した基本計画に則った計画書を提出して認定される必要がある。滋賀県で誕生した全国初となる認定生産者に、そのメリットや認定を受けるコツ、認定を目指した想いを聞いた。

参考記事:「『みどりの食料システム法』のメリットは? 認定制度を分かりやすく解説!」はコチラ

申請を提案してくれたのは
みらいの農業振興課の担当者

2022年10月末に滋賀県が全国に先駆けて「みどり戦略」の基本計画を策定して公表、認定申請の受付を開始した。今年度末までに、概ね全国の地方自治体がこれに続くと思われるが、先陣を切ったその滋賀県で、全国初となる『みどり戦略』認定農業生産者が2者誕生していた。そのうちの1者が、『中道農園』だ。

写真提供:中道農園

中道農園は、琵琶湖畔に広がる滋賀県野洲市の水稲生産者。40haの圃場面積のうち、25haが有機で7haが減農薬、8haは無施肥無農薬で生産を行っている。中道農園の代表、中道唯幸さんに認定申請のリアルについて聞いた。

「当園は米作り一筋200年。江戸時代の終わりに当たる1800年頃から、先祖代々、田を耕し続けて現在に至る、生粋の水稲生産者です。父が農薬が原因で体調不良に陥ったことを切っ掛けに、1970年代から農薬を減らす取り組みを始めました。
有機栽培は農業のなかでも、特に奥が深いものです。私も何度も失敗しましたし、今でも試行錯誤の連続です。ただ、長年有機栽培を続けた過程で、外部の優秀な方々と繋がることができました。そうした皆さんに栽培から販売、経営まで、なんでも聞けるようになり、ようやく経営が安定してきました。今回の滋賀県グリーンファーマー(※)についても、私に『目指しませんか?』と提案してくれたのは、そんな外部の人脈の一人である県の担当者さんなんですよ」。

※滋賀県グリーンファーマー
環境負荷の低減に取り組む農業生産者が「みどりの食料システム法」に基づく「滋賀県みどりの食料システム基本計画」等に沿って環境負荷低減事業活動実施計画を作成して申請する。それが滋賀県知事に認定されると、環境負荷低減事業活動実施計画認定者=滋賀県グリーンファーマーになれる。



『みどり戦略』が始まった今
有機栽培拡大のチャンス

『みどり戦略』の計画認定者になることで優遇税制を受けることができることについて、中道さんは以下のように語った。
「もちろん優遇税制はありがたいことです。ただ、私は基本的に出来るだけ補助金に頼らないで頑張ってきました。有機栽培なら、それでも楽しく営農できる事実を広げたい。コロナ前はよく農業仲間と飲みに行きましたが、慣行栽培の人の多くは『補助金がなければ赤字になる』と愚痴を言ってました。それでは面白くない。『農業を諦めないで!』と言いたい」。

中道農園 農園長 中道唯幸さん

「だから僕は、滋賀県から頂いた『滋賀県グリーンファーマー』という称号を、有機栽培の良さを広げるのに活用したい。今後は全国で地方自治体の基本計画が発表されるでしょうから、多くの方に続いて欲しい。そして若い人が中心になって、『みどり戦略』に書かれているように、持続可能で楽しい、そして儲かってしまう農業を目指してもらいたいのです」。

先輩生産者に聞く!
計画認定のQ&A

Q.なぜグリーンファーマーを目指したの?


農水省の発表があった直後、懇意にしている県の担当者から説明を受けたのがキッカケです。ただ僕は常々「有機栽培でもっと頑張りたい」「多くの人に有機栽培について知ってほしい」と願っています。有機栽培は奥が深くて、やればやるほど新しい発見があり、上手く動かせば農業が経済的にもさらに面白くなる。申請すれば全国発となり話題になるかもしれないと思い、有機栽培の魅力を多くの人に伝えられればと申請しました。

Q.申請とは実際に何をするの?


お住まいの地域の普及センターなどに相談するのが第一歩。そして“地方自治体が築定した基本計画に則った生産をする”ということを示す計画書の作成が必要です。
ここで特に重要なのは「自分自身がどんな有機農業をしたいのか?」という明確な計画イメージを持つことです。基本計画を良く読み、自分の計画を落とし込んでいきます。この作業は簡単ではありませんが、自分の生産計画を口頭でもメモでも構わないので、とにかく担当者に伝えましょう。それを専門的な言葉に書き換えることで、計画書はブラッシュアップされます。自分一人では難しい作業でしたが、普及員さんと二人三脚で行いました。

Q.どんな計画を立てた?

中道農園の5ヶ年計画(クリックで拡大)

これまで行っていたもみ殻ぼかし肥料や土壌診断をさらに有効活用することで水稲の有機栽培面積(有機JAS認証)拡大を目指す、という計画を立てました。現在30haの有機JAS認証の面積を37haまで増やします。そこで、下記のように計画しました。

①有機質資材の施用を増やす:自家製のもみ殻ぼかしともみ殻くん炭の増産と施肥量増
②化学肥料の施用量を減らす:土壌分析(Drソイル)による圃場特性把握面積を30%から90%にまで上げる
③化学農薬の使用量を減らす:ケイ酸入り資材の増量、乗用除機の追加(オーレック)、抑草ロボットの追加

Q.認定を受けたい生産者の方へ
アドバイスをお願いします!



慣行栽培を続けてきた方からすると、『みどり戦略』でいきなり農薬を減らせ、化学肥料を減らせ、有機面積を増やすぞ、と無理難題を言われているように感じるかもしれません。しかし、これまで有機栽培や減農薬栽培を積み重ねてきた人にとって『みどり戦略』は大チャンスです。将来的に米価の上昇は見込めませんが、有機米には強い需要があり、大きな未来があります。少しでも興味を持った方には是非、挑戦してほしいです。



DATA

農林水産省HP みどりの食料システム法について


取材協力:中道農園
文:川島礼二郎

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