施設園芸で失敗しない7つのポイント。ハウス栽培を成功させるために

施設園芸は、環境制御により高い収益が期待できる一方、初期投資の大きさや運用の複雑さから、思うように成果が出ないケースもある。全国各地の事例から、ハウス栽培を成功に導くために重要な7つのポイントを整理した。

メイン画像:イチゴの施設栽培(写真提供 Rammy_Rammy@Shutterstock.com)

<目次>
1.栽培品目と販路を慎重に選定する
2.規模に応じた組織体制を整える
3.作業の見える化で効率を高める
4.環境制御の基本を理解する
5.品質管理の仕組みをつくる
6.物流と販売の計画を立てる
7.データを活用して改善を続ける

 

1. 栽培品目と販路を
慎重に選定する

2022年、品目ごとの施設栽培の割合(出典 農林水産省)

施設園芸を始める際、最も重要なのは品目選定と販路確保を適切に組み合わせることだ。地域の気候条件や市場ニーズ、販路確保の可能性を総合的に判断する必要がある。

トマトは栽培面積の57%、収穫量の74%を施設栽培が占め、イチゴは栽培面積の68%、収穫量の74%を占めるが、施設園芸に適した品目は限られている。売れる時期に売れる品種を、需要に応じて生産できるかが成否を分ける。

販路については、JA系統出荷、契約栽培(小売・外食・加工向け)、スーパーへの卸売、直売などがある。契約栽培は安定性が高いが、規格や品質の要求が厳しい。直売は高単価が期待できるが、販売に時間と労力がかかる。複数の販路を組み合わせることで、リスクを分散できる。いずれにせよ、栽培開始前に販路の見通しを立てておくことが失敗を避ける第一歩だ。

2. 規模に応じた
組織体制を整える

施設園芸の経営規模が拡大すると、家族だけでは対応できず雇用労働力の導入が必要になる。数名の雇用であっても、役割分担や作業手順を明確にすることが重要だ。

神奈川県のある農園では、従業員を増やす際、定着率の低さに直面したという。組織内のルールやデータが未整備で、経営者と従業員のあいだで意思疎通が十分に図られていなかったことなどが原因だった。そこで、企業理念や組織規則、作業の難易度などを1冊の手帳にまとめた「コーポレートカルチャーブック」を作成し、すべての従業員に配布し、3カ月ごとに内容を見直している。そうした取り組みなどにより、定着率の向上につながったという。

小規模であっても、作業の標準化や情報共有の仕組みをつくることで、作業効率が向上し、従業員の定着率も向上する。規模拡大を考えているなら、早い段階から組織運営の基盤を整えておくことが望ましい。

3. 作業の見える化で
効率を高める

次世代施設園芸の取組拡大に向けて(出典 農林水産省)

施設園芸の経営コストで人件費が占める割合は、全体の4分の1から3分の1と大きい。労働生産性を高めるには、工程別の作業時間を正確に把握し、効率化を図ることが重要だ。

従来は紙ベースで作業記録を収集し、表計算ソフトに手作業で入力するケースが多かった。しかし、この方法では集計に時間がかかり、記録ミスも発生しやすい。

ICTを活用すれば、作業管理を大幅に効率化できる。例えば、圃場にQRコードを設置し、スマートフォンで作業の開始・終了を記録するシステムを導入すれば、リアルタイムで作業進捗を把握できる。

ある農場では、独自開発した経営管理システムの導入後1年で、従業員の生産性が1.6倍に向上した。農場管理者にとっても、データの入力や解析の手間が減るというメリットもある。このようなスマート機器の導入には初期投資が必要だが、労働生産性の向上という成果につながる。

4. 環境制御の
基本を理解する

施設園芸の最大の強みは環境制御だが、適切に運用するには経験と知識が必要だ。季節や天候の変化の大きい日本では、こまめに設定を変更する必要がある。

環境制御で重要なのは、設定した値と実際の環境が一致しているかを確認することだ。例えば、昼の温度目標を26℃に設定しても、実際の平均温度が目標より0.5℃低い25.5℃になっている場合がある。この場合、設定値を修正することで施設内の温度を調節できる可能性がある。

0.5~1℃の違いが積算された場合、生育への影響は大きい。施設内の温度が1℃違うだけで、開花から果実の収穫までの日数は1~2週間も変わるという。

近年では、環境条件と品種特性から生育を「見える化」し、収量を予測するツールも開発されている。こうしたツールを活用することで、適正な環境制御が確実にできるようになってきた。

5. 品質管理の
仕組みをつくる

GAP(ギャップ)とは(出典 農林水産省)

消費者や取引先から選ばれる農場になるには、品質管理の仕組みづくりが欠かせない。食品の安全性向上、環境の保全、労働安全の確保につながるGAP(農業生産工程管理)の考え方を取り入れよう。

次世代施設園芸拠点を含む大規模施設園芸13農場の調査では、約7割の農場が「GLOBAL G.A.P.」、「ASIA G.A.P.」、または「J G.A.P.」のいずれかの認証を取得していた。取引先によっては、GAP認証取得を推奨したり、認証取得した農場の優先順位を上げたりしているケースもある。

GAP認証の効果が直ちに現れるとは限らない。GAPの取り組みを通じて計画、実施、点検・記録、見直しのサイクルを継続し、市場が求める品質基準を満たす生産体制を構築することで、結果的に取引先や消費者からの信頼を獲得できる。こうした地道な取り組みが、有利な販売契約の実現につながるのだ。

6. 物流と販売の
計画を立てる

施設園芸では、収穫した作物をいかに効率よく、鮮度を保ったまま消費者に届けるかが重要だ。物流コストは販売単価の10%以上を占めることもあり、収益を大きく左右する。

大規模施設園芸農場の多くは、既存産地から離れた場所に立地しているケースが多い。このため、遠隔地物流が課題となる。また、近隣の生産者と共同出荷することで積載率を高め、物流コストを削減する方法もある。

販売規格の設定も収益性を左右する重要なポイントだ。農場の経営規模や販路にマッチした規格を選択するとともに、作業時間の削減や可販収量の向上のために規格設定を見直すことも検討してほしい

7. データを活用して
改善を続ける

収集したデータは、活用しなければ意味がない。温度や湿度の記録、収穫量の推移、作業時間など、簡単なデータでもこまめに記録するようにしたい。

例えば、毎日の最高気温・最低気温と収穫量を記録すれば、温度管理と収量の関係が見えてくる。また、作業時間を記録すれば、どの工程に時間がかかっているかがわかり、改善の糸口が見つかる。

重要なのは、記録したデータを定期的に振り返り、「なぜうまくいったのか」「なぜ失敗したのか」を分析する習慣をつけることだ。この積み重ねが、経営判断の精度を高め、失敗のリスクを減らしていく。

DATA

農林水産省 施設園芸をめぐる情勢
日本施設園芸協会 大規模施設園芸・植物工場 導入・改善の手引き


取材・文:佐藤美紀

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