9月1日に新法律施行! 「都市農地」の貸し借りがスムーズに
2018/08/31
都市農地の貸し借りをスムーズに行うための新しい法律が、9月1日に施行される。それに先駆けて農林水産省は省令で、具体的な条件などを明示。借り手と貸し手、双方にメリットのある仕組み作りを目指す。
借り手の条件を明示
ハードル低く設定
市街地の中にある都市農地の貸し借りをしやすくなる新しい法律「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が、9月1日から施行される。その具体的な条件などについて、農水省が8月28日に省令を出した。
都市農地を借りるには、以下のいずれかに当てはまることが条件となる。
●都市農地で生産された農産物やその加工品を、主に都市農地の近辺で販売する
●都市住民の農作業体験や、都市住民との相互交流の場を設ける
●都市農業の調査研究、または農業者の育成や確保に取り組む
●災害発生時に、都市農地を一時避難場所として提供したり、生産物を優先的に提供するなど、防災に協力する協定を地方公共団体などと締結する
●耕土の流出を防止したり、化学農薬を減らすなど、環境保全に取り組む
●地域特性に応じた作物を導入したり、先進的な栽培方法に取り組むなど、都市農業の振興を図る
このうちのどれか1つ、ということであれば、さほどハードルは高くないだろう。都市農地を借りて積極的に営農をしたいと考えている都市農業者にとっては、大きなメリットのある法律となる。
貸す側にもメリット
相続税の猶予が継続
都市農地を貸す側にとっても、新法律のメリットは大きい。
都市農地の土地の所有者は、税制上の優遇措置を受けられるが、そのためにはいくつか条件があった。例えば、都市農地を相続した場合には相続税の納税猶予があり、自分で営農していればその間は相続税を支払わなくて済む。しかし他人に貸す場合には、その猶予がなくなり、相続税を支払わなければならなかった。
また、農地の賃貸借の場合には、借りた側が契約更新しない旨を通知しない限り、ずっと同じ条件で借り続けることができる。貸す側にとっては、一度農地を貸すと半永久的に返してもらえない恐れがあり、これもまた貸しづらい要因の1つとなっていた。
新しい法律では、こうした条件を緩和。都市農地を貸しても相続税の納税猶予は延長され、賃貸借契約の期間が終われば都市農地は所有者に返す仕組みとする。
このように新しい法律では、借り手・貸し手の双方のハードルを下げることによって、都市農地の貸し借りがスムーズに行わるよう配慮されている。
農業従事者が高齢化などによって減少している昨今、都市の中にある貴重なスペースである都市農地を守っていくためには、新しい制度づくりが不可欠だった。今回施行される新法律によって、都市農地の新たな利活用への道筋が見えてきた。