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酒造好適米には補助金が出ない? 日本酒の品質向上が難しい理由

日本酒の原料に向いている「酒造好適米」。これを使うことで、日本酒本来の味と香りがいきる。しかし、現制度では酒造好適米には農水省からの補助金が出ないため、費用削減ができない現状がある。

日本酒の原料に向いている
酒造好適米

心白が入って穀粒が大きいなど、日本酒の原料として向いている米の品種は、酒造好適米と呼ばれる。厳密にいうと、農産物規格規程(農産物検査法)に基づいて農水省が醸造用玄米に分類した品種を指し、一般米とは区別される、 山田錦や雄町のように戦前来の古い品種もあれば、きたしずくのような新しい品種もある。通常の飯米のように炊いて食べてもおいしくないため、主食用に使われることはほとんどない。



実は、味や香りにこだわらなければ、どんな品種の米を使っても、日本酒を造ることはできる。明治中期ごろまで、酒造好適米というジャンルは確立していなかった。当時は、庶民にとって米は「高嶺の花」で、特別な機会でないとたらふく食べられなかった。その米を食べずに飲み物にするというだけで贅沢の極みで、充分に満足できた。明治後期以降、庶民の所得水準が上昇し、酒蔵の間で品質の競争が激しくなって、酒造好適米という概念が普及した。

酒造好適米には
補助金が出ない!?

酒造好適米を使ってこそ、日本酒の本来の味と香りがいきる。ただ、酒造好適米は栽培が難しいため、高価になりがちだ。酒蔵によっては、酒造好適米ではなく「加工用米」と呼ばれる安い米を使うことで費用削減をしている。「加工用米」というのは、主食用以外の目的に販売先を限定して生産される米で、農水省からの補助金がある。2004年にそれまでの減反制度が廃止となり、それに代わる主食用米の生産抑制のために導入された。ところが、酒造好適米は主食に回らないにもかかわらず農水省は「加工用米」に認定せず、補助金も支給しない。このため、品質的には酒造好適米よりも見劣りするが、栽培しやすい米が「加工用米」として酒蔵に買われていく傾向がある。実際、2004年以降、酒蔵が酒造好適米から「加工用米」に原料を切り替えたという事例は少なくない。

日本酒は和食の伝統と醸造技術の革新が合体して進化し続けるすばらしい飲料だ。世界の高級飲料と競り合いながら、不断の品質向上に励むべきだ。そのためには、酒造好適米を活かすべく、制度の見直しが不可欠だ。

PROFILE

明治学院大学 経済学部経済学科教授

神門善久さん

1962年島根県松江市生まれ。滋賀県立短期大学助手などを経て2006年より明治学院大学教授。著書に『日本農業への正しい絶望法』(新潮社、2012年)など。


AGRI JOURNAL vol.10(2019年冬号)より転載

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