生産者の取組み

お茶農家が世界をつなぐ!? 日本文化の魅力を広める国際交流のススメ

「茶道」に用いられる茶室や茶道具には、陶漆器、竹細工、畳、炭、などの職人技でつくられた品々が静息しており、日本文化の集結だ。国際交流を深められる文化である一方で、日本国内では、「茶道」の影が薄くなりつつある。現代農業の本質を、明治学院大学経済学部経済学科教授の神門善久氏が説くコラム。

国際交流としての「茶道」

私は、目下、シンガポールで妻と一緒に暮らしている。シンガポール国立大学から快適なオフィスとアパートの提供を受け、日本経済について研究報告をし、論文を書いている。

お世話になっている人たちに敬意と感謝を示したいと、妻と相談し、アパートで茶会を開くことにした。妻は裏千家のたしなみがあり、シンガポールにも裏千家の教室があると知って、着物と茶箱を持ってきているのだ。

とはいえ、建水などの小道具がないし、ティー・テーブルとソファーという洋室だ。香を焚いたり、風呂敷をテーブルクロスにしたりと、雰囲気づくりに工夫をする。お招きする方々は研究者、事務員、コックなどさまざまだが、興味津々で来てくださる。和装の妻は何度も事前に稽古をして心を込めてお茶をたてる。あえて苦みを抑えるなど、外国人の嗜好にも注意する。ラフないでたちのお客さんたちには、私が横から作法をごく簡単に説明はするが、総じて自由にしてもらっている。ひととおり、茶会が終わったら、妻の介助でお客さん自身が抹茶をたてることもある。


「茶道」をたしなむことは
様々なことに繋がる

本格的な茶会に比べてもの足りないのではと懸念していたが、やってみると望外に人気を博し、いろいろな感想がよせられる。「ミセス・ゴウドのジャパニーズ・ティー・セレモニー」は、毎週末、異文化融合の魅惑で華やぐ。

茶道の発祥にはキリスト教の祭礼の影響が多々あるといわれる。茶室の構造、ひとつひとつの道具や作法、それぞれに、世界観が秘められている。形式を遵守しながらも、亭主と客のやりとりには、機知や情愛を伝える術がある。詫びや寂びの言葉が示すように、茶会は経済力や立場を超えた交流の場だ。

茶室や茶道具には、陶漆器、竹細工、畳、炭、などの職人技でつくられた品々が静息し、日本文化の集結だ。残念ながら、日本国内では、茶道の影が薄くなりつつある。国際交流を深めるために、日本文化を学び育むために、何よりも、心豊かな自己研鑽のために、もっと日本人自身が茶道をたしなんでもよいのではないか。


プロフィール

明治学院大学
経済学部経済学科教授

神門善久さん

1962年島根県松江市生まれ。滋賀県立短期大学助手などを経て2006年より明治学院大学教授。著書に『日本農業への正しい絶望法』(新潮社、2012年)など。


AGRI JOURNAL vol.12(2019年夏号)より転載

関連記事

特集企画

アクセスランキング

  1. 2020年3月末で経過措置が終了、新「食品表示法」の注意点とは?
  2. あれ、切れてない……? を防ぐために。チェンソーを使ったら必ず行うべき”目立て”のやり方
  3. 製品回収の50%以上は表示ミスが原因! 「食品表示法」正しく理解していますか?
  4. 増税対策、あなたは万全? 農家が知っておくべき「軽減税率」と注意点とは
  5. 若者新規就農者が3年連続で2万人超 後継者不足は?
  6. ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
  7. 「”いのちのてざわり”を体験してほしい」音楽家・小林武史が見出した農業の可能性とは
  8. 病気を防ぎ、効率的なイチゴ育苗へ! 革新的なトレイ“カタツムリポット”がスゴイ!
  9. 最強の次世代水稲栽培へ! ドローン×バイオスティミュラント×水稲栽培の夢コラボが実現!
  10. 成功する農業! 有機肥料と化成肥料の基本とやり方
 

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.14 / ¥0
2020年1月27日発行

お詫びと訂正