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J-クレジット制度を活用した『水稲栽培の中干し期間延長』って? 省庁担当の方に聞いてみた!

J-クレジット制度を活用して水稲栽培の中干し期間を1週間延長することで、収入を得ることができる。それを実現するための方法やメリット等を省庁担当者に説明していただいた。

地球温暖化の一因となるメタン
全体で発生する4割が水田から…


水田で発生するメタンが地球温暖化の一因となっている。水田に水を張ることで、土壌中の微生物が、二酸化炭素の25倍の温室効果を持つガスであるメタンを発生させるからだ。その量は日本全体で発生するメタンの4割に達する。農業生産者に負担のない範囲で、メタン排出を削減したい。

農業生産者が主体的にメタン排出削減に取り組む動機となりそうなのが、J-クレジット制度。定められた方法(方法論と呼ぶ)で温室効果ガス排出を削減すると、その削減量をクレジットとして国が認証する制度で、認証されたクレジットの販売により収入を得ることができる。農業現場でのJ-クレジット制度の活用は、農林水産省が2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」においても、国の重要施策の一つとして掲げられているものだ。

方法論に沿って温室効果ガス排出削減を行うこと、取り組む前に事前にプロジェクトを登録すること、が必須だ。現在の方法論の数は全部で69。分類別でみると省エネルギー関係(ヒートポンプの導入、園芸施設における炭酸ガス施用システムの導入など)が42、農業分野は4(バイオ炭の農地施用など)であったが、2023年4月、新たに農業分野に『水稲栽培における中干し期間の延長』が加わった。そして6月28日、中干し期間延長に関する3つのプロジェクト(それぞれをクボタ大地のいぶき・三菱商事(株)・Green Carbon(株)が取りまとめる)が承認され、運用が始まっている。

農業生産者は今回承認されたようなプロジェクトに参加する(プログラム型)か、自身単独でプロジェクトとして認証を受ける(通常型)かで、J-クレジット制度を活用した『水稲栽培における中干し期間の延長』の活動を実施できる。

J-クレジット制度ってなに?

農業生産者や農業生産者が参加するプロジェクトの取りまとめ団体・企業は温室効果ガス削減量をクレジットとして販売することで、売却益(収入)を得ることができるほか、温暖化対策に積極的であることをPRできる、制度に関わる企業や自治体等と関係を構築できる、などのメリットがある。クレジットを購入する企業・自治体は環境貢献団体としてのPRや自社製品・サービスの差別化等に活用できる。



プロジェクトの申請から認証まで
どう進めればいいの?

『プログラム型』と『通常型』2つのタイプから選ぼう!

JA、自治体、企業等、コンサル、商社等がとりまとめることが想定される『プログラム型』プロジェクトに参加する方法と、1人の生産者から申請できる『通常型』プロジェクトを始める、という2パターンある。『プログラム型』なら、プロジェクト登録やクレジット認証・発行の手続きをとりまとめ団体が代行してくれるので、比較的簡単に取り組みやすい。

『水稲栽培の中干し期間延長』に参加したら実際に何をするの?

事前に準備すること

①中干しの実施日数のデータ(直近2年分)
②稲わらの持ち出し量のデータ(直近の稲作分)
③堆肥の施用量のデータ(直近の稲作以降)

プロジェクトへの参加が決まったら、必ず①~③を提出する。普段からJA等で求められる様式(生産管理記録)に含まれていることも多いが、中干し期間を書いていない農業生産者は少なくないはず。「記録していないけど記憶では……」は許されない。記録で証明できなければ、まずは2年分、いつも通りの日数で中干しの実施日数を記録して、再来年から参加しよう。

圃場で行うこと・記録すること

①中干しを実施し記録(開始日と終了日、実施日数)
②出穂日
③稲わらの持ち出し量・堆肥の施用量など

事前準備で用意した過去2年の中干し実施日数の平均より7日間長く中干しを実施して記録する(①)。取り組んだ圃場について出穂日を記録する(②)。さらに③と、圃場の所在地域、取り組み面積、排水性(必須ではないが記録しておくと削減量を増やせる可能性あり)の情報から、メタン排出削減量を計算する。計算は取りまとめ団体が行うのが基本。生産者は漏れなく正確に記録することが大切だ。

クレジットはどうやって販売するの?

『プログラム型』であれば、取りまとめ団体が販売を担ってくれる。販売額から手数料を引いた分が農業生産者の収入になる。相対取引と入札販売という二つの販売方法があるが、多いのは相対取引。入札販売は単価が安くなる傾向があり、相対取引の成立を目指すと良さそうだ。

幾らの収入になるの?


同じ面積で取り組んでも、得られるクレジット量は水田の所在地域・排水性・施用有機物(稲わら・堆肥)量により異なる。またクレジット単価は相対取引で決まる。だから事前には収入は分からない。そこで目安として、モデル水田での収入*の目安が示されている(『プログラム型』の場合はここから手数料等が引かれる)。参考にしていただきたい。

*モデル的な水田:排水性が十分良い水田で、前作の稲わらを全量すき込んでいる場合。過去の類似クレジット単価(1万円/tCO2)を適用。

7日間の中干し延長が不安な人は
ココから始めよう!

中干し期間を延長することで減収する不安があるのも事実(過去の栽培試験では、地域によっては増収した場合もあるものの、平均3%程度減収した一方、登熟歩合、タンパク含量といった品質は向上したという報告がある)。そんな方におススメしたいのが『グリーンな栽培体系への転換サポート(みどりの食料システム戦略推進交付金)』の活用だ。中干し期間の延長で収量に影響が出ないか、地域の一部の圃場を使って試してみることができる。交付金は水管理システム、営農支援アプリ導入等に使うことができる。中干し期間の延長による影響があらかじめ分かっていれば、J-クレジット制度の取組も不安なく始めることができるはずだ。関心があれば都道府県の普及組織に相談してみよう。



お話を聞いた人

大臣官房みどりの食料システム戦略グループ

大津山賢人 係長

農産局農業環境対策課

奥村啓史 係長

DATA

J-クレジット制度
「水稲栽培における中干し期間の延長」のJ-クレジット制度について

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