人が集う果樹園に! 背景にもくもくと草刈りをする『グラスミーモ』の姿があった
2022/02/24
昨夏にホンダが発売したロボット草刈機『グラスミーモ』に興味を持っている方は少なくないはずだ。今回は【体験レポート】の第2弾として、福島県の果樹生産者に実機を体験していただいたレポートをお届けしよう。
ロボット草刈機
『グラスミーモ』とは?
いかに草刈・除草作業が大変であるかを今さら説明する必要はないだろう。重い刈払い機を抱えて延々と雑草を刈り続ける作業は、肉体的にも精神的にも大きな負担だ。乗用タイプの草刈機も市販されているが、障害物が多く存在する場所での作業は効率的ではない。農業生産者なら誰しも「自動で草刈をしてくれる機械があれば……」と願ったことがあるはずだ。
そんな農業生産者の願いを叶えてくれる製品が2021年夏に登場した『グラスミーモ(Grass Miimo)』だ。『グラスミーモ』は、ロボット芝刈機『ミーモ(Miimo)』の技術を発展させたロボット草刈り機。その機能は「ロボット掃除機の草刈機版」と言えば伝わりやすいだろう。
草刈をする区画にエリアワイヤーを張って、充電ステーションを設置。圃場に『グラスミーモ』を置き、初期設定をしてスタートさせれば、自動でエリアワイヤーで囲った範囲の草を刈り、必要なタイミングで充電ステーションに戻り自分で充電してくれる。草丈(20~60mmの範囲)や稼働時間などは任意に設定可能であり、スマート農機にあり勝ちな難しい設定が必要ないのも魅力だ。
『グラスミーモ』を体験!
まるせい果樹園とはどんな農園?
今回、グラスミーモを体験してくれたのは、福島県福島市で9haの果樹園を営む『まるせい果樹園』の佐藤清一さんだ。
『まるせい果樹園』の特徴は多品目栽培にある。春先のさくらんぼに始まり、桃、なし、ぶどう、りんご、ラフランス、柿と、6月から12月~1月まで管理~収穫作業が続くという。また、国道沿いでは直売所や観光農園を営んでいる。販売先は、この直売所での直販のほか、全国各地のお客さん、また大手スーパーへの直販と、売り先も手広い。これだけ多種多様な作物の栽培と売り先への発送など販売業務を、季節に応じて10~20人ほどのスタッフでこなしている。広大な敷地と、多品目の果実を育て収穫し、潰れないよう慎重に発送することはどれをとっても手がかかることだ。
さくらんぼの果樹園で
草刈モニタースタート!
2021年5月の圃場の様子。全体的に草が長く伸びている。
草刈をはじめるロボット草刈り機『グラスミーモ(grassmiimo)』。
『まるせい果樹園』では、多品目栽培、販売など多様な作業の合間をぬって、圃場管理も欠かさずに行ってきた。これまでに年に4~5回、草刈作業を行っており、刈払い機と乗用草刈機を併用していたが、樹木の根や雨除けの柱が多い果樹園の草刈り作業は容易ではなかったという。佐藤さんが教えてくれた。
「これからの果樹栽培を変えていきたい……という思いを、ずっと持っているのです。当園は果樹100%ですが、栽培管理全般を俯瞰してみると、ほとんどが手作業なんですよ。米や野菜ではスマート化、自動化が進んでいますよね? ですから果樹栽培においても、直接栽培管理に関わらない部分なら、省力化できるのでは、と考えていました。そんな時、グラスミーモ体験の機会があり試してみました」。
『まるせい果樹園』で『グラスミーモ』が働き始めたのは2021年5月のこと。その約4ヵ月後にあたる9月の圃場は……
ご覧の通り、確かにシッカリと刈れているようだ。
「『グラスミーモ』に働いてもらったのは、さくらんぼのエリア。面積は約1500㎡です。そして稼働していたのは日中の12時間。酷暑のなかでも文句も言わず、黙々と働いてくれました。そのうえで実感したのは、とにかく効率的である、ということです」。
さくらんぼのエリアは、収穫期(6~7月)は果実により多く太陽光をあてるため、地面に反射シートを敷き詰める。例年、そのシートを敷く前に草刈が必要なのだが、今年は不要だったそう。収穫を終えた後はシートを外すので、例年だと8月以降も何度か草刈が必要なのだが、これも不要に。
「今年は『グラスミーモ』のお陰で、常にゴルフ場のように綺麗な状態をキープできました。これが自動なのですから、その能力の高さには驚かされました。電動なのでパワー不足で本当に刈れるのだろうか……と心配していましたが、杞憂に終わりましたね(笑)。状況にもよりますが、ひざ丈くらいの草まで刈り取ってくれていました。根元の草はグラスミーモでも残ってしまうが、部分的な刈払い機作業なので、これまでと比べるとだいぶ楽になった。とにかく人手が掛からない、というのは素晴らしい!」と、草刈りから解放された驚きを語ってくれた。
言うまでもないことだが、刈払機を用いた草刈作業には、事前・事後の作業がつきまとう。ガソリンの混合・廃棄、防護服の着脱、もちろん刈払い機の洗浄やメンテナンスが欠かせない。『グラスミーモ』を利用することで、それら煩わしい作業が軽減される。これもまた作業の効率化に大きく寄与する。佐藤さんの狙いである、栽培管理以外の効率化の実現に貢献しているようだ。
ロボット草刈機を使いこなす
スマート農業のコツとは
『グラスミーモ』が作業効率を向上させてくれることは分かったが、実際に使ってみて物足りなかった点や改善してほしい点は、まったくなかったのだろうか?
「物足りなかった、ということは、ありませんでした。ただ、導入初日は『グラスミーモ』が地面の凹みにはまってしまい、何度か動かなくなってしまいました。ですが、その凹みを平らにしてあげることで、それが2日目には3回、3日目には1回、という感じで減っていき、1週間も使用するとコツがわかってきました」。
ロボット草刈機が動きやすいということは、人もつまずくことなく動ける場所ということがわかり、安全に繋がった。
「スマート農機は現場で使いづらい!なんていう声を聞くことがありますが、スマート農機を使いやすいように圃場側を整備する、という考え方も必要だと痛感しました。実際、『グラスミーモ』が働きやすい環境にした=足元の凹凸がなくなったので、私たち人間も作業しやすくなりましたからね」。
働く環境の整備にも貢献
省力化に『グラスミーモ』
『まるせい果樹園』は福島県の果樹栽培生産者だ。だから震災の影響を少なからず受けた。
「いわゆる風評被害というのは、少なからず受けました。放射能に関する数値が通常に戻った後も、しばらくは販売が9割減でしたから……。それで、お客様になんとか安心・安全な果物であることを知っていただきたくて、2つの活動を行いました。
一つはGAPの取得です。JAGAP/GLOBAL GAPを取得したのです。農業生産者の方には説明不要だと思いますが、GAPを取得するには少なからず手間が掛かります。ですが、当園が安心・安全を確保していることを公的に証明したかった。私たちは被災したことで、むしろ今まで以上に食の安全、作業上の安全、それに環境の整備などなど、果樹栽培をより良くするよう、努力するようになりました。『グラスミーモ』は電動ですから、化石燃料を使いません。また、ボタンを押せばあと自動でもくもくと草を刈ってくれるので省力化に繋がり、そうした面でも当園に貢献してくれたと思います。
コントロールパネルの様子。設定は簡単、各種項目を選択してボタン操作で完了。
もう一つは、一部の樹園地を公園風に改修して、果実の生育現場を自由に散策できるようにしたことです。震災の直前、直売所の近くに2haの土地を手に入れていました。そこを公園のような果樹園を作ったのです。まず道を切り開いて、その左右に果樹を植え、直売所に気軽に遊びに来てもらえるように……と願いを込めて、整備を進めました。
当園では、愛情をもって果樹を栽培していますし、美味しいものを作るために日々勉強しています。当園が作った作物は、全国のお客様に召し上がっていただいており、当園は福島の代表という誇りがあります。「福島の果物は美味しいね!」「これなら安心だね!」と思っていただけるように、と願っているんですよ」。
福島県で多品目の果樹を安心・安全な方法で栽培している『まるせい果樹園』を、『グラスミーモ』は静かに支えていた。佐藤さんからは、機械に圃場を合わせることが大切、という示唆に富んだアドバイスをいただけた。非常に有意義な体験レポートであったと思う。
製品データ
ロボット草刈機 Grass Miimo(グラスミーモ)
HRM3000
刈幅:250mm
刈高さ調整:20~60mm(5mm刻み)
最大登坂能力:25゜※
最大作業エリア:4000m ※
価格:643,500円(税込)
※Honda調べ。条件によって異なります。
お問い合わせ
TEL:0120-112010(平日:9時~12時/13時~16時・土日祝日:9時~12時/13時~17時)
文:川島礼二郎
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