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今買えるEV軽トラから特定小型まで! 農業で活躍するモビリティを一挙公開!

この秋開催された『農業WEEK』と『Japan Mobility Show(モビリティショー)』で、農業に役立つ未来のモビリティが多数展示されていた。気になるモビリティをピックアップしてご紹介しよう。

ダイハツ
EV軽トラの『UNIFORM TRUCK』と
『ドローン載せ降ろしワンオペ化装置』に注目


東京モーターショーの時代から、魅力的な軽トラックのコンセプトカーを展示しているダイハツ。今回のジャパンモビリティショーでは、EV軽トラコンセプト『UNIFORM TRUCK(ユニフォーム・トラック)』と、軽バンEVコンセプト『UNIFORM CARGO(ユニフォーム・カーゴ)』を世界初公開した。両車は『ユニフォーム』シリーズとして提案されており、使いやすさなど働くクルマの原点を追求し、多様な働き方や用途に対応する未来の軽商用車シリーズであるという。

注目したのはEV軽トラの『ユニフォーム・トラック』。荷台に搭載されているのはアタッチメント式の『Nibako(荷箱)』。未来のEV軽トラではライフスタイルや用途に応じて、荷台を多用途で使えるようになる。

展示された『荷箱』は移動販売車に仕立てられていた。葉物野菜は棚に陳列されているのではなく、なんと『荷箱』内部に養液栽培キットが据え付けられているという。養液循環や照明のための電気は軽トラのバッテリーから供給できる。『UNIFORM TRUCK』は移動販売車であり、同時に移動する植物工場でもあるのだ。

ダイハツが『農業WEEK』で展示していたのは、『ドローン搭載ワンオペ化装置』。ダイハツ社内から上がった企画であるという。自動車会社であるダイハツでは、農業の現場を知るために、農業生産者のもとに社員が出向きドローンによる薬剤散布を手伝っている。その際、社員が「軽トラックからのドローンの載せ降ろしを一人でできたら便利なのに……」と感じたのだとか。

それを実現すべく開発したのが、この『ドローン搭載ワンオペ化装置』。ワンオペというとネガティブな印象を受けてしまうが、このワンオペ化装置は一人で載せ降ろしを可能にするもの。ぜひ商品化に期待したい。

問/ダイハツ

スズキ
ちょっとの移動に便利な特定小型原付に注目!


SUZU-CARGO

『ジャパンモビリティショー』でスズキが、実に興味深いモビリティを展示していた。それが新たな車両区分(特定小型原動機付自転車;以下、特定小型原付)に分類されるモビリティ『SUZU-RIDE』と『SUZU-CARGO』だ。

特定小型原動機付自転車とは、原動機付自転車のうち、以下に示す要件のすべてに該当するもの。最高速度:20km/h以下、定格出力:0.6kW以下、長さ:1.9m以下、幅:0.6m以下。これらすべてに該当すれば16歳以上であれば免許不要で公道走行できる。

特定小型原付が公道を走り始めて間もないことから、特定小型原付運転者による交通違反や、該当しない車両が特定小型原付として走行している、などとネガティブな印象を与えかねないニュースが流れているが、都市部ではラスト1マイル移動に便利だし、地方都市では高齢者や学生などの安全な移動に寄与できるはず。

展示された『SUZU-RIDE』・『SUZU-CARGO』は、電動キックボードのような手軽さを持ちつつ、転倒しづらく、四輪で安定した走行が可能な、一人乗りの電動モビリティとして企画された。

上に掲載した『SUZU-CARGO』は車体後部に大きな荷物載せ(カーゴ)スペースが用意されている。遊びや仕事、そして移動までも楽しくしてくれそうだ。


よりコンベンショナルな『SUZU-RIDE』にも、シート下にかなりの容量を持つ収納ボックスが用意されている。

両車は軽トラックの代わりにはなるものではないが、地方で生活する高齢者の移動手段として、心強い存在になってくれるはず。既に最高速6km/hまでの電動車いす(セニアカー)を市販しているスズキだから、高齢者へのニーズ対応や車両作りのノウハウはある。是非、市販化していただきたい。

スズキは『農業WEEK』では、『軽トラ用ラダー格納パレット』を展示していた。軽トラックの荷台に小型機械を載せて運搬する際、載せ降ろしにはラダーが必要となる。このラダーをスマートに格納すべく開発されたのが『ラダー格納パレット』。荷台上に農機を直接置かず、パレットを敷く。このパレット下にできる高さ10cmほどの空間にラダーを収納するアイデアだ。実用的なアイテムだから欲しい方は少なくないはず。こちらも製品化に期待したい。

問/スズキ

ホンダ
EV軽トラック登場を予感させる
着脱式可搬バッテリー採用EVバン


2021年に農道のNSXと呼ばれて親しまれた軽トラ『アクティ』の生産を終了したホンダだが、『ジャパンモビリティショー』で、着脱式可搬バッテリーを動力源とする軽EV『MEV-VANコンセプト』を展示していた。ホンダの交換式バッテリー『Mobile Power Pack e:(以下モバイルパワーパックe)』を8本搭載したEV軽バンである。

ホンダは着脱式可搬バッテリー『モバイルパワーパックe』を多用途な機械での共用を図っている。自社製の電動スクーターだけでなく、他社にも供給する。ヤマハやスズキ、カワサキの電動バイクにも採用される予定であり、市中にバッテリー交換ステーションを設置、バッテリーをシェアする仕組みを作ろうとしている。

コマツと共同開発(既に市販)した電動ミニショベル『PC05E-1』にも動力源として『モバイルパワーパックe』が使われている。

今回ご紹介する『MEV-VANコンセプト』の動力には、『モバイルパワーパックe』が8個搭載されている。
EVの軽バンは発売が近付いているが、EV軽トラは計画すらない。その原因の一つは、車両価格が高価になってしまうから、だ。もう一つの課題は、軽トラで必須となる4WDをEVで実現するのは困難、なのだという。充分な航続距離を確保するだけのバッテリーを積むとホイールベースを長くせざるを得ず、4WD化ができないのだ。

『モバイルパワーパックe』は違う。素人目には、現状のバッテリー搭載方法のままでもショートホイールベース化→4WD化できそうに見える。

担当者によると「『MEV-VANコンセプト』は航続距離が75kmです。運送会社の近隣配達に適した車両として開発したもので、これからヤマト運輸と実証を行います。この75kmという航続距離が農家さんにとって充分な距離なのか、つかめていません。一方で、農家さんであれば家庭でも200V充電が可能ですから、充電時間は短くできそうですね。今、EV軽トラを開発しているかと問われれば、していませんが、検討するための情報は欲しいです」とのこと。

航続距離が農業生産者のニーズに合い、その声が届けば、ホンダの軽トラが、着脱式可搬バッテリーを採用したEVとして復活するかも知れない。

『ジャパンモビリティショー』前に青森の果樹生産者をザワつかせたのは『Honda Autonomous Work Vehicle(オートノマス ワーク ビークル)』。軽トラのキャビンを切り落としたような外観が、果樹園で使われる通称『バゲ』に良く似ているのだ。

『オートノマス ワーク ビークル』はあらかじめ定められたルートを自律走行できるモビリティ。GPSによる位置情報、レーダーやライダーによる障害物検知機能、その他センサー類を駆使して自律的に走行する。アタッチメントを取り付けることでさまざまな用途に活用できるという。車体サイズは公表されていないが、軽トラックよりやや大きい。

さまざまな用途に活用できる、とはしているものの、担当者によると、主用途として想定しているのは現在のところは建設現場や工場内での運搬作業である、とのこと。『バゲ』が走行する果樹園内は未舗装であり凹凸が多く、無数の果樹が植わっている。そのため、より走行しやすく需要も多い建設現場や工場を想定しているのだろう。とはいえ、『オートノマス ワーク ビークル』で開発されている技術は、将来、農業用車両の自立走行にも応用できるはずだ。

問/ホンダ

HW ELECTRO
今すぐ買える!
EV軽トラがあった


最後にご紹介するのは海外製車両をベースに日本仕様に仕立てた、今すぐ買えるEV軽トラ。HW ELECTROの製品『ELEMO-K』だ。発売元のHW ELECTROのCEOをつとめる蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)さんは台湾に生まれ1986年に来日した。

担当者によると「この『ELEMO-K』は2021年に発売を開始したEV軽トラです。2WD仕様のみのため、現在のところキッチンカーでの利用が多いですね。EVですから給電できますから、便利にお使いいただいています。本格的な農業用には厳しいかも知れませんが、都市部で農業を営んでいらっしゃる方からはお問い合わせいただいていますよ」とのこと。

気になる航続距離は120km。200V充電なら満充電まで6時間。写真のピックアップ仕様は補助金なしの価格が267万3,000円。国の補助金は55万円であり、地方自治体からの補助金を活用できればもう少し下がる。まだ価格面ではエンジン搭載の軽トラに及ばないが、新たな選択肢として、EV軽トラが加わったことは押さえておきたい。

問/HW ELECTRO


取材・文:川島礼二郎

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