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その「二価鉄」効いてる? 専門家に聞いた、「鉄欠乏」に効くバイオスティミュラント資材とは

低温や低日照が続き環境ストレスが強まったときや、成り疲れを起こしたときに引き起こされる「鉄欠乏」。二価鉄を含む資材が多く販売されているが、「二価鉄ならどれも同じ」ではない。「効く鉄分」を含むバイオスティミュラントについて、話を聞いた。

関連記事:薄緑の葉色は「鉄欠乏」のサイン? 予防と対策は?

鉄欠乏を防ぐため
植物に必要な「二価鉄」

低温や低日照が続き環境ストレスが強まったときや、成り疲れを起こしたとき、植物の葉色が悪くなる。それは「鉄欠乏」のサインだ。

鉄は土壌中に多く含まれる元素だが、植物が吸収できるのは「二価鉄」のみ(イネ科以外)。ほとんどの植物は根の表面の酵素により「三価鉄」を「二価鉄」に還元して利用している。

しかし、低温や低日照などの環境ストレスにより植物が弱ってしまうと、「三価鉄」を「二価鉄」に還元する力が弱まり、鉄を吸収できなくなってしまう。

これによって引き起こされる鉄欠乏を防ぐため、鉄を含むバイオスティミュラント(以下、BS)資材が市場に数多く登場しているが、「二価鉄とか三価鉄とかよく分からない」という声も聞こえてくる。そこで、鉄の専門家に聞いてみた。

愛知製鋼株式会社 未来創生開発部 ソサイエティー材料開発室長 鈴木基史さん

「無機の二価鉄や合成キレート鉄(三価鉄)を有効成分とする鉄資材を多く見かけますが、どちらも植物が利用しにくい場合があります。無機の二価鉄は沈殿してしまうため使い勝手が悪いですし、合成キレート鉄は安定性が高く水に溶けるものの、植物の根の力が弱っていると吸収できないのです」(愛知製鋼株式会社 鈴木基史さん)。

そもそもBSとは、『栄養素の吸収効率の向上』と『環境ストレス(非生物的ストレス)耐性の向上』が、世界で言われている効果である。ところが“環境ストレスにより植物が弱っている時に効かないタイプの鉄”と思われる鉄資材もあるのだという。

酵素の働きを引き出し
三価鉄から二価鉄を作り出す

愛知製鋼が販売するBS「鉄力®(てつりき)」も二価鉄を有効成分としているが、こちらはどうなのだろうか?

二価鉄供給バイオスティミュラント資材「鉄力あくあ®F10」

「『鉄力®』は有機酸で優しくくるまれた二価鉄を含む資材。無機の二価鉄より安定しています。なので植物が弱っていても吸収しやすいのですが、それだけでなく、根が土壌中の三価鉄から二価鉄を作り出す酵素の力を引き出すBSとしての機能があります。
そのため『鉄力®』は根の力が弱まる環境ストレス(高温・低温・低日照など)に良く効きます。果菜類では着果負担で根の力が弱まる時も効果的です」(鈴木さん)。

鉄力®の効果の仕組み

『鉄力®』は、
①資材に含まれる二価鉄がそのまま吸収される効果
②植物の根にある鉄還元酵素を活性化させることで植物が三価鉄を二価鉄に還元する力を高めることで二価鉄吸収を助けるというBSとしての効果
を併せ持っている。
そのため、酵素の力が弱まる環境ストレス(高温・低温・低日照等)時の鉄欠乏を予防・改善できる。

鉄力®は20年以上前から販売が開始されており、実際に使用した生産者からの効果も数多く報告されている。

●イチゴ生産者(栃木県)
とりわけ2019年から生産を始めた栃木県の新品種「とちあいか」は、これまでの主力品種「とちおとめ」に比べて病気に強く、味も同等以上と評価を受けているが、苗作りの際にランナーの根が張りにくく活着しにくいという欠点があった。この苗づくりの際にF10を使うことで、「とちあいか」の欠点を補うことができ、より効率的に生産することができるようになった。
愛知製鋼サイト「となりの農家さん(2023.5)」より引用

●イチゴ生産者(栃木県)
B12は粒の大きさが揃っているため簡単に撒くことができ、根がしっかり張ってほしい厳冬期まで根張り効果の持続期間が長かった。それ以来、B12を使うハウスを徐々に増やし、現在では秋口の定植前にすべてのハウスにB12を手振りで畝立てをしている。それをすることで、12月から1月の厳冬期の根張りがよくなることを実感している。
愛知製鋼サイト「となりの農家さん(2023.8)」より引用

●トマト生産者(愛知県)
一定の時期に葉っぱの色が黄色くなる現象への対策だ。特に12月ごろは、それまで旺盛に実をつけた反動が出て、それに冬の日照不足が追い打ちをかけて、元気がなくなり葉が黄色くなりやすい。試してみると早速効果が表れた。そして、翌年も、その翌年も継続して効果が表れ、これまでのような厳密な管理をしていないのにも関わらず、長年悩み続けていた課題を思いもよらず解決することができた。
愛知製鋼サイト「となりの農家さん(vol.01)」より引用

鉄欠乏(左)、健康なトマトの葉(右)

低温や低日照にさらされると、植物は土壌や養液中の鉄を二価鉄に変える力が弱まり、鉄欠乏に陥る。新葉の色が薄かったり黄色くなっていたりしたら、それは「鉄欠乏」の症状だ。

そんなときは「効く鉄分」を含むBS資材を利用しよう。鉄が効率的に植物に吸収されて、葉緑素の合成・窒素代謝・エネルギー生産を向上させるから、植物はきっと復活するはずだ。


プロフィール

愛知製鋼株式会社 未来創生開発部 ソサイエティー材料開発室長
鈴木 基史さん

大学時代に植物の鉄吸収に関わる物質の研究を行う。2007年愛知製鋼に入社後も学術論文を多数執筆。今では鉄資材とBSの第一人者であり、二価鉄供給に注目したBS資材「鉄力®」の普及に努める。

問い合わせ

愛知製鋼株式会社
TEL:0120-603-937


文/川島礼二郎

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