生産者の取組み

<若手農家の挑戦>限界集落への移住、成功なるか?

地方に移住したい————。働き方が多様化し、田舎暮らしに憧れる若者が増えている。しかし、誰もが地方に行けば、理想の暮らしが手に入るわけではない。幸せな移住生活を実現させるために必要なものは何だろうか。 2014年、限界集落に移住した田畑勇太さんが語る地方移住のリアルとは?

一目惚れした
この土地で暮らしたい

人口約70人、平均年齢は72歳ほど。高知県大豊町の怒田(ぬた)集落は、限界集落の定義を大きく上まわる。幾重にも連なった小さな棚田には、南国高知の明るい太陽が降り注ぎ、たわわに実る柚子が木々を黄色く染めている。

「美しいこの景観に心奪われ、移住を決意しました」話すのは、愛知県出身の田畑勇太(28歳)さん。きっかけは、大学2年生のゼミ活動で限界集落の勉強に訪れたことだった。教授の車に乗り急な坂道を登ると、目の前に広がったのは人の営みが作りあげた里山だった。
「この風景を守りたい……」。込み上げた想いが、田畑さんを動かした。

田畑さんは在学中、週に1度ほど通っては、農産物の商品化や販路開拓、日曜市での販売などを積極的に行っていた。それは、地域の魅力を発見し、住民との交流を深めることにも役立っていた。

大学を卒業した翌年の2014年、同じく愛知県出身の恵莉さんと結婚し移住した。地方移住を実現するには、住民の受け入れ体制が整っていることは必要不可欠だ。田畑さんは、密なコミュニケーションで信頼関係を築き上げていた。二人の祝宴は集落の会場で行われ、住民と仲間ら100名ほどが集まった。

地域を守る仕事と
有機農業の両立

田畑さんは、自身が惚れ込んだ景観を守りながら、自活する方法として有機農法を選択した。

まずは一年間、近隣の農家に研修生として就農に必要な基礎知識を学んだ。2015年に就農すると、研修で得た知識をひたすら実践した。ようやく3年目に入って、自分のスタイルが見えはじめたという。

現在は、トマトをメインに多品目栽培を行い、農協やスーパーの直売コーナーなどで販売する。学生時代から販売に参加している日曜市では「トマトの味が濃い!」と、お客からの高い評判を得て売れゆきは好調だ。

また、耕作放棄地を作らないために大豆や麦を育て、古くから栄えてきた柚子の手入れも始めた。

「有機農業で生活の基盤となる150万円を稼ぎながら、地域を守るために必要な取り組みを仕事にしていく予定です」と、田畑さんの挑戦は始まったばかりだ。


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photo: Kentaro Kumon text:Tomoko Kotaka

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