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【JGAP畜産】いい農場づくりが継続できるJGAP認証という「勲章」

「JGAP畜産」で畜産の問題を解決しよう。国内で5棟のみというアニマルウェルフェア(AW)対応の放し飼い鶏舎「エイビアリー」を持つのは、あさぎり宝山ファーム。“JGAP認証は自分たちのエンブレムみたいなもの”と語る。

<目次>
1.ワンランクアップへ JGAP認証の取り組み
2.(株)あさぎり宝山ファームのJGAP認証取り組みの一例
3.JGAP認証取得のヒストリー


ワンランクアップへ
JGAP認証の取り組み

富士山を見渡す、標高約900mの朝霧高原に佇むのは、国内で5棟のみというアニマルウェルフェア(AW)対応の放し飼い鶏舎「エイビアリー」。
「昼間は日光を浴びて風通しの良い場所で遊び、暗くなると巣に戻る」といった鶏の習性を活かした飼い方で、鶏たちは止まり木や爪とぎ、砂遊びなどのエリアを自由に行き来できる。

鶏舎に入らせてもらうと、人間を恐れることなく、近くに寄ってきて、つんつんとくちばしであいさつしてくれる。人懐っこくて愛嬌たっぷりでとてもかわいい。

高級赤卵で知られる「純国産鶏もみじ」を飼養。鶏たちは、鶏舎と半屋外の遊び場を自由に行き来し、日中を過ごす。

あさぎり宝山ファームを経営する(株)マルフクは、静岡県焼津市で1951年に卵問屋として創業。2010年から取引先だった契約農家から受け継ぎ、自社の養鶏場「あさぎり宝山ファーム」を設立。現在は加工工場も有し、生産・加工・流通までのすべてを手掛ける。

「卵は物価の優等生と言われますが、僕たちは値段ではなく、品質で評価される卵を目指しています」と話すのは、3代目社長の福﨑正展さん。大学卒業後、IT企業を経て家業を継ぎ、2015年に代表取締役に就任。多くの国内外の鶏舎を見て回った。
日本の鶏卵の大半がケージ飼い、もしくは一部で昔ながらの平飼いの中、福﨑さんは海外で主流の多段式平飼い・放し飼い鶏舎「エイビアリー」を2022年より採用。農場の2棟の鶏舎のうち、1棟が自社ブランドの卵のエイビアリー鶏舎(約1万9千羽)、もう1棟は従来のケージ飼いのバタリー鶏舎(約9万羽)でOEMの卵を生産する。

写真手前が、2022年に新設されたドイツ・ビッグダッチマン社製のエイビアリーシステム。今後はさらに1 棟増える予定。

福㟢さんは、「最近の飼料の高騰で、大量生産の安価な卵で利益を出すのは難しい。放し飼いという付加価値を持たせたワンランク上の卵で勝負したい」と言う。コロナ後、外国人観光が増えてホテルや飲食店の卵の需要が急増しているが、アニマルウェルフェア(AW)が進む欧州の人はケージフリーの卵が当たり前で、放し飼いの卵を求める声も大きい。

「AWを優先したのではなく、いい卵を作りたいという思いから放し飼いを選択しました。しかし、どれだけ僕らがこだわりの卵作りをしているといっても、それをデータなどで“見える化”するのは難しい。JGAP認証があれば、専門家により客観的に評価された養鶏場と自信をもって言えます。これは大きなセールスポイントですね。今は県外からの問い合わせが多く、営業エリアも広がっています」(福㟢さん)。

鶏たちは床から天井まで上下左右に動くことができる。巣箱で産んだ卵はコンベアで集卵。鶏糞は遊び場エリアと分離された床下に落ち、ベルトコンベアで舎外に搬送されるため、卵とは接触せず衛生的。鶏本来の習性を活かし、止まり木や砂遊び場、毎朝卵を産むための巣箱が設けられる。

JGAP認証の実務を担当したのが農場長の瀧通昭(みちあき)さんだ。JGAP認証後変わったのは、毎日のルーティンだという。「安全面や衛生面など、以前よりも農場を見る目線が変わって、ランクが一個上がるというのかな、今まで漠然と行ってきた日々の作業が、一つひとつ改善され、当たり前にできるようになります」。

“JGAP認証は自分たちのエンブレムみたいなもの”と瀧さん。JGAP認証は事務作業が多く、さらに作業量が増えると聞くが、農場スタッフは『僕らはJGAP認証農場だから』という、いい農場づくりを継続する自信=エンブレム効果で乗り越えられるとか。

2023年11月には自社農場産「富士山麓放し飼いたまご 福が、きた」が、イギリスの動物擁護団体によるコンテストでケージフリーの卵の生産・販売に積極的な企業に贈られる「グッドエッグアワード2023」を養鶏・鶏卵生産者として国内初の受賞。さらに今年から香港など海外取引も始まった。瀧さんたちの日々の努力が着実に実を結んでいる。

自社ブランド「富士山麓放し飼いたまご 福が、きた」。英国コンパッション・イン・ワールドファーミング主催の「グッドエッグアワード 2023」を受賞。

㈱あさぎり宝山ファームのJGAP認証
取り組みの一例

月1回のJGAP生産管理ミーテイング

JGAP認証でコンサルタントを担当した獣医師らとともに、管理点と認証基準が維持できているかなどを確認する。


出入り業者の車両の消毒を徹底

農場エントランスのコンテナ内に車両用の消毒が用意され、業者のトラックは必ずここで消毒作業を行う。


リスク管理のための入場者の記帳

農場の訪問者が事務所や鶏舎に入るときは、氏名、入場時間、退場時間を明記する。


健康な体を作る良質な飼料と水の給与

富士山のミネラル豊富な雪解け水と、焼津名産のかつお節を配合したオリジナル飼料で育てられる。

JGAP認証取得のヒストリー


2010年:(株)マルフクが自社農場の(株)あさぎり宝山ファームを設立
2014年:しずおか農林水産物認証取得
2019年:あさぎり宝山ファーム拡張
2021年:畜産JGAP認証取得(採鶏卵・鶏卵、飼養・取り扱い工程)
2022年:鶏舎リニューアル(エイビアリー、バタリー各1棟)

PROFILE

右:あさぎり宝山ファーム農場長

瀧通昭さん

左:(株)マルフク代表取締役

福﨑正展さん


取材・文:後藤あや子
写真:村岡栄治

AGRI JOURNAL vol.31(2024年春号)より転載

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