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いつものトマトが「高GABA」に育つ!? 霧を使った噴霧水耕システム

普段作っているトマトを高GABAに育てることができる!そんな夢のような栽培システムが今夏、本格販売される。試験農場で高GABAトマトを生産している開発元の株式会社いけうちに話を伺った。

高GABA、高糖度のトマトを
生産できる噴霧水耕システム

農業資材や燃料の価格は上昇を続ける一方で、農作物の価格は上向く様子がない。これでは、どんなに大規模化や効率化を実行しても利益を残すのが難しい。そんな厳しい状況に置かれた施設園芸生産者に知って欲しい、大きな可能性を秘めた新製品が開発された。

それが『霧のいけうち』こと『株式会社いけうち(以下、いけうち)』のセミドライフォグ噴霧水耕システム『IKEUCHIPonics(イケウチポニックス)』だ。ごく一般的な中玉トマトを、高GABAや高糖度に、狙って生産することができる画期的な栽培システムだ。アグロ事業部の彦坂陽介さんが教えてくれた。


株式会社いけうち アグロ事業部 彦坂陽介さん。「入社から12年、『イケウチポニックス』一筋で頑張ってきましたが、ようやく製品化に漕ぎつけました。少しでも多くの生産者さんに知っていただきたいです」。

「6月にプレスリリースを発表しましたが、弊社のハウスで『イケウチポニックス』を使って栽培した中玉トマトにはGABA機能性が付与されているとして、機能性表示食品として認められました」。

■霧のGABAトマト

いけうちの自社ハウスで栽培された、中玉トマト『霧のGABAトマト』。可食部27g(1~2個)を食べると、機能性が報告されている1日当たりのGABAの量の50%を摂取できる。『イケウチポニックス』を導入すれば、そのノウハウをそのまま利用して、誰でも簡単に高GABAトマトを生産できる。

『イケウチポニックス』とは、養液の代わりに『霧』を使った栽培システムのこと。養液を微細な霧=セミドライフォグ(平均粒子径30μm以下)にして根域に充満させるのが最大の特徴だ。

「『イケウチポニックス』は養液が微細な霧だから、養液を与える・与えない、を秒単位の緻密さで制御できます。だから植物には可哀想ですが(笑)、従来にないくらい厳しいストレス栽培管理が可能となり、その結果、糖や、GABAなどの機能性成分を大量にトマトに蓄積させることができるんです」。

 

セミドライフォグ®噴霧水耕システム
IKEUCHIPonics®(イケウチポニックス)

養液を微細な霧にして与えるのが『イケウチポニックス』の特徴。霧状の養液を多く捕集しようとして吸水効率が高い根が育つ。また根域に酸素が豊富なため、根の呼吸が活性化され、光合成速度が向上。高GABA・高糖度の元になる、光合成産物を安定的に蓄積することが可能だ。


栽培函内に培地はなく、霧を充満させることで給液を行う。根は霧を多く捕集すべく側根や根毛を発達させ、吸水効率の高い根系を形成する。滞留水分がないことも特徴だ。培地栽培では、滞留水分が緻密な水ストレス管理を妨げたり、養液組成を乱す懸念がある。滞留水分がないイケウチポニックスは、給液量をより緻密に管理でき、日射比例灌水で水ストレス管理の自動化も可能だ。


栽培函の中の様子


栽培システム全体図。設定値に基づいてpH、ECを自動で調整する「肥料管理機」、日射量に応じて噴霧サイクルを自動で制御する「給水制御ユニット」、セミドライフォグを噴霧するスプレーノズルや栽培函(かん)がセットになった「栽培ユニット」、余分な養液を回収し再利用のための除菌・水処理が行われる「リターンユニット」などで構成される。


誰でも簡単!地球に優しい
トマト栽培が始まる

この『イケウチポニックス』の本格的な発売が今夏、いよいよ始まる。システムには、デフォルトとして、高GABA化を実現するいけうち秘伝の給液レシピが搭載されている。だから、これまで知識や経験を必要とした高付加価値栽培を、誰でも簡単に始めることができる。それでいて販売価格は一般的な養液栽培システムと同程度。また、培地を使用しないからゴミの排出を大幅に削減できるうえ、養液使用量も削減できる。省資源かつ地球に優しい、持続可能な栽培方法であることも魅力である。

いけうちでは現在、トマトを高GABA化できる機序を学術的に証明すべく、千葉大学と共同研究を行っている。いつものトマトを高付加価値化できる『イケウチポニックス』は、大きな可能性を秘めている。

 

DATA

<問い合わせ>
株式会社いけうち
電話:0120-997-084(平日9:00~17:00)

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