井関農機が2023年新商品発表「脱炭素社会と循環型社会の実現を目指す」
2022/12/16
「みどりの食料システム戦略」が動き始めた今、井関農機は「地球温暖化対策に向けた環境対応商品の充実」を掲げ、2023年上期新商品発表会を開催した。その中で井関農機の変革を象徴する3商品を紹介する。
環境を守り生産性を高めるための
農業機械メーカーの取組みとは
社会全般ではSDGsという考え方が社会に広く受け入れられ、日本農業界では『みどりの食料システム戦略』が動き出した。この二つに共通するのが「持続可能性」である。地球や地域の持続可能性を高める必要があるのは当然だが、農業は産業であるから、生産性は当然高める必要がある。そうせねば環境は守れても、農業活動そのものを維持できない。
この二律背反するニーズに対応するために、農業機械メーカーはどのような取り組みを行っているのだろうか? 2022年12月7日に井関農機つくばみらい事業所で開催された『井関農機2023年上期新商品発表会』では、発表会のコンセプトとして「脱炭素社会と循環型社会の実現へ -変革-」が掲げられていた。
カーボンニュートラルな企業へ
井関農機のエコ商品開発・販売
代表取締役の冨安司郎社長が、発表会のコンセプト、同社の基本理念(お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供を通じ豊かな社会の実現へ貢献する)、そして環境負荷低減の取り組みの概要を説明した。
同社は今、創業時の理念である「農家を過酷な労働から解放したい」を保ちながら、長期ビジョン「食と農と大地のソリューションカンパニー」へと変貌の途上にあるという。
同社は、「循環型社会を目指す環境保全」を果たすべき重要な社会課題として環境経営を実践している。気候変動をはじめ、脱炭素社会の実現が求められる中で環境ビジョンや環境基本方針・環境中長期目標を策定し推進するとともに、TCFD提言に沿った情報開示にも取り組んでいる。環境ビジョンを「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ、2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指す」としており、そのための具体策の一部が、今回の発表会の内容と密接に関係する。
同社では開発・製造・お客さまの使用・廃棄の各段階における環境負荷低減を目的に、すべての商品開発において環境適合設計*1を推進している。環境に配慮した商品・サービスの拡充を通して気候変動課題の解決や農業における環境負荷低減につながる取り組み指標として、エコ商品の国内売上高比率目標を2025年65%以上と設定したという。
井関農機の変革を象徴する3商品
発表会で「井関の変革を象徴する3つの製品がコチラです」とお披露目されたのが、10条田植機『PJ10』、『自動抑草ロボット アイガモロボ』、『電動モーア SXGE2』である。
■『PJ10』573万8,700円~660万2,200円(税込)
10条田植機『PJ10』は既存の10条田植機『PZ103』のフルモデルチェンジ機であり、最高能率を誇るフラッグシップモデル”Japan”シリーズに追加される商品だ。機体設計を基本から見直し、エンジンをフロントに搭載することでバランスの最適化と従来機比40kgもの軽量化を実現している。圃場が担い手へ集約化している近年、より高機能な大型田植機が求められている。
そこで『PJ10』には、10条植えによる高速・高能率作業をベース機能に、新たに直進・旋回アシスト機能を搭載することでオペレーターの疲労軽減と高効率化・高精度化を実現した。また、自動操舵により温室効果ガス削減に貢献するエコ商品である。
■『自動抑草ロボット アイガモロボ』55万1,100円(税込)
『自動抑草ロボット アイガモロボ』は、水稲の有機栽培で大きな問題となる除草の労力を慣行栽培並みに低減することを目標として有機米デザイン株式会社が開発したもの。これを井関農機が販売して有機水稲栽培農家を支援する。
本機は、スクリューで水中を攪拌して泥を巻き上げ、水をにごらせる。この”にごり”が光をさえぎり雑草の成長を抑制する仕組みである。また、スクリューが巻き上げた泥が土壌表面に堆積して雑草の種を覆うことで雑草の発生を防ぐ効果もある。
■『電動モーア SXGE2』(ヨーロッパ限定販売)
ヨーロッパ市場での限定発売が発表されたのが『電動モーア SXGE2』。同市場では、持続可能なEU経済の実現に向けた成長戦略『欧州グリーンディール』を背景に、景観整備機械においても電動化が急速に進んでいる。それに対応して同社は、14馬力のディーゼルエンジンを搭載するモーア『SXG216』をベースに、リチウムイオンバッテリ(容量7.92kWh)を搭載する本機を開発した。電動だからもちろんゼロエミッションであり、スーパーエコ商品でもある。
これら3製品が、井関の変革の象徴である。それ以外にも、フラッグシップコンバイン『HJ6130』に直進アシストシステムを新たに搭載した『HJ6130Z』が発表された。またロボット田植機『PRJ8D-R』には、土壌センサ搭載型リアルタイムセンシング可変施肥仕様FV型と、主に北海道地区をターゲットとした条間33cm仕様のAS型、それに直播・水田除草ユニット等に対応する多目的仕様のH型が、新型式として追加されている。
今回の発表会で、井関農機が新製品を通じて現在の生産性を向上させながら、中長期的・多面的アプローチで「カーボンニュートラルで持続可能な社会の実現」に向けて着実に歩みを進めていることが分かった。なお、今回発表された新製品は16品目21型式*2。ご興味を持たれた方は是非、記事末尾のリンクから井関農機のウェブサイトを覗いてみて欲しい。
*1 環境適合設計(エコ商品)への取り組み
*2 2023年度上期新商品を発表
DATA
文:川島礼二郎