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耕作放棄地を有効活用! エネルギー作物「エリアンサス」を核に脱炭素化に挑む

農業・畜産の総合展「第14回 農業WEEK(通称 J-AGRI TOKYO)」の展示物のなかから、電源開発が展示していたエネルギー作物「エリアンサス」を核にした脱炭素に向けた取り組みをご紹介。

耕作放棄地を活用する
エネルギー作物「エリアンサス」

電源開発株式会社(Jパワー)が電力会社であることは説明不要だろう。電力会社であるJパワーがなぜ農業WEEKに出展しているのかと言えば、それは耕作放棄地を有効活用する実証中の技術を紹介するためだ。

農業従事者の減少と高齢化が同時進行することで、日本の農地面積は減り続け、耕作放棄地の面積は増え続けている。
そこでJパワーは、耕作放棄地にエネルギー作物「エリアンサス」を植えてバイオマス燃料等として発電に用いることでCO₂の地域循環サイクルを構築し、脱炭素化に貢献できないかと実証を行っている。技術開発部研究推進室課長の古澤友紀子さんが教えてくれた。

「『エリアンサス』は聞きなれない植物かも知れませんが、熱帯・亜熱帯地域に自生している、成長速度が速いイネ科の多年生植物です。毎年300t/10aもの収量が見込めるのですが、それでいて栽培管理が極めて容易で手間が掛からない、という特徴があります。
植え付け1年目は、梅雨入り前に苗植えした後に夏場は雑草対策を行いますが、その後はほぼ手間がかかりません。越冬立ち枯れ時に収穫しますが、その後「エリアンサス」は切れ株から自然に萌芽して、毎年冬に収穫するというサイクルが約20年続くと言われています」

Jパワーはこのエリアンサスを耕作放棄地に植えて、一つにはバイオマス発電の燃料として利用してCO₂地域循環サイクルを、もう一つは炭化させて農地に戻すことで長期のCO₂固定(カーボンネガティブ)を行うべく、実証で進めている。

「エリアンサス」を活用した取り組みは、遊休農地や耕作放棄地で行う前提にしているというから、食料生産と競合することはない。また、エリアンサスのCO₂吸収量は、なんとスギ林の約5倍もあるというから、社会実装への期待は高い。遊休農地や耕作放棄地がこれ以上増えないのが良いに違いないが、人手は限られている。Jパワーの「エリアンサス」取り組みは、耕作放棄地の有効活用の一つの解になるかも知れない。

DATA

電源開発(Jパワー)


文/川島礼二郎

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