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産地・産業振興に繋げる『6次産業化2.0』とは?

キーワードは「融合」
「6次産業化2.0」が地域産業を育てる!

仲野さんが提唱する”6次産業化2.0″は、”農商工連携”や既存の”6次産業化”を否定するものではない。むしろ両者の進化版と捉えるべきだ。”6次産業化2.0″とは「1次・2次・3次の事業者が”融合”することで”産地と産業の振興”というゴールを目指そう」という提案だ。

例として、岐阜県南東部に位置する恵那・中津川地域の70名の”栗生産者”と”株式会社恵那川上屋”とが見事に融合した結果、同地域の産業振興に成功した事例を紹介しよう。



恵那川上屋は、恵那・中津川地域で高品質な和洋栗菓子の製造販売を行っている。同地域の他の和菓子屋は、栗産地であるはずの同地域栗産業が衰退していたため、止むを得ず鮮度の低い他県産栗を使用していた。その状況に危機感を抱いたJA東美濃が、栗生産者と恵那川上屋とを結び付けた。

 <写真:恵那川上屋HPより

恵那川上屋は栗生産者に働きかけて、超低樹高栽培による高品質『超特選恵那栗』の栽培を実現した。栗生産者にとっては新しい栽培方法の導入はリスクであったが、日本一の栗栽培技術者と言われる塚本 實氏の栽培技術を導入することで、女性や高齢者でも安全に作業できる剪定技術を確立した。

生産した栗はJAを通して、市場価格の2倍近い価格で恵那川上屋が全量買い取ることにより、生産者の所得の向上に繋がっている。一方の恵那川上屋でもリスクを負い、高価なCAS冷凍システムを導入した。これにより、納入された栗を鮮度を落とさず長期間保存ができるようになった。



こうして高品質な『超特選恵那栗』は恵那川上屋の手で商品化され、岐阜県内各店舗のほか、東京でも販売されるようになった。このように恵那・中津川地域は、恵那川上屋とJA東美濃と生産者が”融合”することで、年間を通して高品質な栗菓子製造が可能となった。


<写真:恵那川上屋オンラインショップより

ここで見落としてはならない事柄が二点ある。一つは、既存の6次産業化とは異なり、生産者自身が加工・販売を手掛けてはいない、という事実。恵那・中津川の栗生産者は、生産者としての質を高める方向にのみ投資している。

もう一点は、それを可能にした恵那川上屋とJA東美濃の存在である。JA東美濃は70名から成る栗生産者(超特選栗部会)と恵那川上屋、双方の窓口となり、調整役を果たしている。生産者と加工・販売業者とが利益を確保できるようコミュニケーションを図り、プロジェクトを推進した恵那川上屋のリーダーシップとJA東美濃のフォロワーシップにより、高品質・新鮮な高級栗菓子による地域づくりが実現している。



“6次産業化2.0″のキーワードは”融合”である。恵那・中津川の融合に見られたような成功には、「産地と産業を振興するというビジョンの共有」、「強いリーダーシップ」、関係事業者が互いを支えあうという意味の「フォロワーシップ」、そして「円滑なコミュニケーション」が不可欠である。

最後に、6次産業化2.0を成功させる一つのヒントとして、農林漁業成長産業化支援機構をご紹介しておこう。

 

農林漁業者と2次・3次事業者とが6次産業化事業体(合弁会社)を設立した際、(一定の条件を満たしていれば)経済的支援や経営支援を受けられる仕組みだ。新たに設立した合弁会社が利益をあげれば、出資者(農林漁業者と2次・3次)は配当という形で利益を得ることができる。共同経営であれば目的は明確だ。利益配分のルールは明確化しやすく、また経営サポートを受けられるのも魅力だ。合弁会社設立が必要である点や、ファンドスキームが若干複雑なのが難点ではあるが、興味を持った方は調べてみてほしい。


野村アグリプランニング&アドバイザリー(株) 調査部 上級研究員

仲野 真人氏

2005年立教大学経済学部を卒業、野村證券(株)に入社。2011年野村アグリプランニング&アドバイザリー(株)に出向、現在に至る。アグリ業界(農業法人の経営課題、6次産業化関連等)の業界調査、全国の6次産業化に取組んでいる優良事例の調査を行うほか、6次産業経営力向上セミナー、6次産業化の支援に向けたワークショップ、6次産業化推進シンポジウムなどのイベントも手掛ける。


text:Reggy Kawashima

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