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1つ9,000円の”高級石鹸”で地域振興! 島民の思いを叶えた6次化成功事例

2018年6月、世界文化遺産に登録され、注目を集める五島列島。下五島の五島市では、地域活性に繋げようと、地元の有志達が特産品作りに取り組んでいる。島に自生する日本古来種・五島藪椿を原料とした石鹸「YABU」。その製品化に至るまでのストーリーを追った。

6次産業化をチームで実現!
島民の手でつくる本物の価値

五島列島で一番大きな島・福江島。藪椿は油が食用や美容と日常的に使用されるなど、古くから島民の暮らしに寄り添ってきた。

「日本で1番美しい海水浴場」にも選出されたことのある「高浜海水浴場」。

キリシタンの暮らしにも密接していた藪椿。島内の教会のステンドグラスや建物の各所に椿のモチーフがあしらわれている。

しかし地域の産業に結びついていない現状から、五島市市議会議員の網本定信さん達は、椿油普及のためNPO法人カメリア五島を2010年に設立。「メンバーの多くは昭和20年代生まれで、生まれ育った五島の活性化に寄与する事ば、やらないかんねと始めたわけです」(網本さん)。


プロジェクトの歩み
2015年 五島ヤブ椿プロジェクト指導。
2016年 「YABU」石鹸の製品化に成功。12月9日五島ヤブ椿株式会社を設立。
2017年 五島ヤブ椿「YABU」ブランドサイト公開。
2018年 7月10日より公式オンラインストアにて販売開始。

椿油の活用法を模索するも、10ml・1,000円で販売しても利益が出ないほど製造に手間暇がかかり、高くて買い手が少ないという悪循環。「付加価値を付けないと、経済の循環は難しいと感じていました」と藪椿農園を経営する佐々野俊男さんは振り返る。

そんな中、東京でプランナーとして活躍する板井徹さんからアプローチがあった。「オリーブ100%の『アレッポ』のような世界に誇る石鹸を、五島藪椿で作りたいと。我々の理想を形にした提案で、共に事業化することにしました」と網本さん。原料と製法にこだわり付加価値を高め、原料収穫から製造までは五島、販売は富裕層向けに都市部で行うことになった。

石鹸は、化粧品の製造・販売の免許を持つ立石光徳さんが開発。約2年の歳月を掛け、低温圧搾・低温製造という国内唯一の製法により、保湿力に優れた石鹸「YABU」が完成した。

右から、網本さん、板井さん、佐々野さん夫妻。佐々野さんの経営する農園で、「YABU」石鹸の原料となる藪椿の種を育てている。

「YABU」石鹸の製造と商品開発を行う立石さん(右)と、ブランディングを担う板井さん。

藪椿の種は良いものだけを一つひとつ選別。外から熱を一切加えず、圧力だけで搾る低温圧搾法は時間と手間がかかるが、高温圧搾法で抽出された油と比べて保湿力が2.5倍にもなる。


さらに自然の反応を利用して鹸化を進める低温製法で、保湿成分であるグリセリンを十分に閉じ込めることができる。

低温圧搾で椿油を抽出。

「我々小さい会社は、大手ができない製法で勝負しないと。種を蒸せば油の搾量を増やせますが、自然のまま、本物志向でいこうと決めました」(立石さん)。

保湿力に優れた石鹸「YABU」。

現在はネットショップでのみ販売を開始しており、2018年10月から五島市のふるさと納税返礼品になる。9,000円という高単価設定でも、国内外から贈り物として注文が入るという。


「板井さんの”五島で生産したい”という言葉が大きかったです。地元で種の収穫から製造まで行えば雇用を生み、経済の活性化にもなる」と、島で元気に育つ孫がいるおじいちゃんとしての顔も持つ網本さんは語る。「YABU」を通じてそれぞれが、五島の未来を作る種を蒔いている。

問い合わせ

五島列島藪椿100%石鹸 「YABU 100」ウェブサイト


photo: Chihiro Fuchigami text: Akiko Okawa

AGRI JOURNAL vol.9(2018年秋号)より転載

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