生産者の取組み

「新しい手法とシステムでより良いものを」4Hクラブ島根県会長が語る、工夫と試行錯誤を繰り返す理由とは

出雲大社やシジミの漁場として名高い宍道湖を有する島根県。島根県の隠れた特産品が、シクラメンや紫陽花といった花きだ。「島根県4Hクラブ」の会長・曽田寿博さんも、こうした花きの生産に携わる一人。自身のユニークな取り組みや地域の特色などを、曽田さんにご紹介いただいた。

メイン画像:「島根県4Hクラブ」の会長・曽田寿博さん

チャレンジングな姿勢と
発想力が注目の的に

島根県では、キャベツや青ネギといった野菜類に加え、花きの栽培が盛んに行われている。

島根県出雲市にて「曽田園芸」を営む曽田寿博さんも、祖父や父から引き継ぐかたちで、シクラメンやアジサイなどの栽培を手がけてきた。

伝統的な栽培方法を生かしつつも、新たな手法を積極的に取り入れるのが、曽田さんのスタイル。就農とほぼ同時に、クリスマスローズの栽培をスタートさせたのが、それを象徴するエピソードだ。

「就農したのが2003年なので、栽培歴は16年くらいになりますね。はじめの5年間は、試作と研究を繰り返す日々が続きましたが、自家採種しながら、やがて安定的にオリジナルのクリスマスローズを生産できるようになりました。また、今シーズンから、新しい手法を用いた栽培を本格的に始めています」。

2011年作出のクリスマスローズ「利休」

2015年作出のクリスマスローズ「二段咲ピコティ」

クリスマスローズは、冷涼な気候に適した植物。そうした性質に目をつけた曽田さんは、出雲市からおよそ60km離れた広島県高冷地に土地を借り、クリスマスローズの栽培地とした。

その結果、平均して3年ほどの栽培期間を2年にまで短縮することに成功したが、栽培地への移動と管理に多大な費用と時間を取られるように。

この問題を解決するため、曽田さんが生み出したのは、オリジナルの遠隔監視システムだ。

「温室に設置している温湿度計をネットワークカメラで撮影し、その映像をスマートフォンで見ています。また、ネットワークカメラの『首振り機能』をオンにすれば、水やり装置のスイッチがONになる仕組みも作りました。」

現在はさらに発展させたシステムになっているそうだが、いつでも温室の状態が確認できるうえ、水やりもできるため、費用と時間が大幅に削減されたそう。

また、このユニークな遠隔操作システムは、複数のメディアで取り上げられるほど、注目を集めた。

遠隔操作システムの見取り図。島根からスマホのアプリで操作をすると、広島農場に設置したモバイルWIFIルーターを経由して、監視カメラやスプリンクラーが作動する仕組みとなっている

 

栽培地に設置されたスプリンクラー

また、曽田さんは、「島根県アジサイ研究会」に所属し、島根県オリジナルアジサイの栽培に取り組んできたという。

「『島根県アジサイ研究会』では、各生産者の栽培技術をすり合わせながら、品質と規格を統一するという地道な作業が行われています。そうした積み重ねが実って、これまでに県が作出した品種を安定的に生産販売しています。中でも、花びらの色が美しいグラデーションになっている『万華鏡』が、その一つですね」。

「万華鏡」は、2012年に発売された品種だが、いまだに根強い人気を誇る。栽培が難しいため苦労が多いが、開花時期を迎えると、各地から注文が殺到することもあるのだとか。



島根県の立地を考慮し、
独自の工夫をする農家たち

新種の開発に携わったり、遠隔監視システムを自作したりと、試行錯誤しながら農業に取り組んでいる曽田さん。積極的に工夫をする一因として、島根県の立地があるという。

「島根県は、東京や大阪、福岡といった大消費地から離れた場所にあります。当然ながら、大消費地に生産物を出荷する場合、輸送費が高くついてしまいます。きちんと利益を上げるためには、生産物の付加価値を高め、経費を賢く抑えるのが大切なんです」

「島根県4Hクラブ」でも、独自の工夫を取り入れている人が見受けられるそう。

「例えば、ブランド野菜を手がけている人や、潜在的なニーズのある生産物を作っている人がいますね。なかでも僕が注目しているのは、10年近く前からアロエベラを手がけ、ある大手通販サイトでカテゴリトップを獲得した農家です。アロエベラは、マーケットは大きくないけれど、確かにニーズがある生産物だと見抜いたのでしょう」

また、「こうしたアイデアマンたちと情報交換をできるのが、4Hクラブの最たる魅力」と、曽田さんは続ける。

「県内にもユニークな農家がいますが、全国規模で考えれば、もっと先進的な農家がいます。彼らと交流できる『全国青年農業者会議』の開催を、今から楽しみにしています」

PROFILE

曽田寿博さん

1980年島根県生まれ。曽祖父の代から続く「曽田園芸」の4代目、自称「農場長」。専門学校で園芸を学び、群馬県にあるシクラメン農家にて修行したのち、2003年「曽田園芸」に就農。シクラメンやアジサイ、クリスマスローズなどの栽培を手がける。

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


Text:Yoshiko Ogata



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