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【知って得する】植物工場に欠かせない「養液栽培」とは?

農業ビジネスの話題になると必ず出てくる言葉の一つに「植物工場」がある。具体的にどのようなものがそう呼ばれているのだろうか? また、「養液栽培」とは一体何なのか? 2つの関係性について解説する。

そもそも
「植物工場」とは何か?

まず、植物工場の正確な定義は下記の通りだ。

「植物工場とは、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設をいいます。 」

「植物工場の事例集(農林水産省及び経済産業省)」経済産業省ホームページ公表資料より

この定義を読むと、閉鎖的なビルの室内で葉物野菜がLEDに照らされながら育つ場面をイメージする方が多いだろう。もちろん、そのイメージも植物工場の一つとして正しいが、実はそれだけではない。植物工場の種類は主に下記の3つが存在する。

植物工場の3つの種類

①人工光型植物工場
太陽光を一切利用せず、LED等の人工光を利用する工場。見た目はビルの室内でクリーンルーム用の作業着を着た人がLEDに照らされながら作業しているイメージ。

メリット:完全閉鎖系の中なので農薬が不要。完全な計画生産を目指すことが可能。
デメリット:電気代などのコストが高い。

②太陽光利用型植物工場
これまでの施設園芸と同様に太陽光を利用しながらも高度な環境制御、管理を行う工場。見た目は大規模で立派なガラスハウスが並んでいるイメージ。

メリット:人工光型に比べて低コスト。
デメリット:天気の影響により太陽光の量が変化するため人工光型に比べて不安定な生産。

③太陽光・人工光併用型植物工場
上記2点の中間のようなイメージ。太陽光利用型植物工場にLEDなどを設置し、補光するタイプ。外から見ただけではこれまでの施設園芸と変わらないように見えるが、高度な環境制御と周年栽培が行われていれば「植物工場」に該当する。



植物工場に欠かせない
「養液栽培」とは?

つづいて「植物工場」を語る上で欠かせないのが養液栽培だ。

養液栽培とは、作物に必要な養分を水に溶かした液状の肥料(=培養液)を作物に与えて栽培する方法のことを指す。培地を全く使わない水耕栽培も、土の代わりに培地を利用する固形培地耕(ロックウール等)も養液栽培の一つだ。

いわゆる普通の畑(土壌)に養液を与えて育てる方法を養液栽培と呼ぶ農家もいるが、このような方法は養液土耕栽培と呼ばれ、養液栽培とは厳密には区別されている。

このことから、土壌を使用せず根域が隔離されている点が養液栽培の特徴とも言える。

参考:養液栽培のすべて(日本施設園芸協会・日本養液栽培研究会 共編)

植物工場は全て「養液栽培」

植物工場は、作物の地上部と地下部に関して高度な環境制御を行う。地上部の管理では特に光源(人工光か太陽光か)がポイントの一つで、光源によって植物工場の種類が分けられていることは先ほど確認した。

では、地下部の管理はどのように行なっているか。

地下部の管理ではどの植物工場も養液栽培の技術を利用して必要な養分、水分を制御している。つまり、養液栽培は植物工場を支える根幹技術と言えるのだ。

土壌を利用した場合、どれだけの有機物が土中にあって、どれだけの微生物がそれを分解しているのか等を把握することは困難だ。どうしても土壌を利用するとブラックボックス化してしまう。

作物に必要な養分の量や割合を把握し、地下部の管理を目指す養液栽培が植物工場の必須技術であることは当然と言える。


養液栽培は
植物工場を支える根幹技術

今回は植物工場の種類と、養液栽培の関係についてまとめた。

養液栽培を行なっているからと言って植物工場と呼ぶことはできないが、植物工場は全て養液栽培を行なっている。

養液栽培は植物工場を支える根幹技術であり、現在進行形でさまざまな手法が試行錯誤されている。農業ビジネスの中でも、養液栽培技術そのものが発展途上の最も面白い分野の一つと言えるだろう。

PROFILE

ウエノ リョウ
1989年生まれ。Webライター。横浜国立大学卒業後、政府系金融機関にて法人融資業務に従事。金融機関を退職後、現在は地方創生に関する仕事に従事する傍ら、金融・財務・農政関連を得意とするライターとして活動。

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