食品残さを活かしたエコすぎる農業〜福島の挑戦〜
2017/01/27
農業教育に活かし
新たな雇用を創出する
JAふくしま未来では、こうした取り組みを積極的に公開し、農業教育に役立てていくことも考えています。食品残さがどんなプロセスを経て肥料や飼料になるのかを実際に見てもらう見学会や、農業体験会などを開催する計画です。さらに、残さ加工場ができるJAファーム内に、研修者のための宿泊施設まで建設しようとしています。JAファームに隣接して牧場もありますから、牛や豚に飼料を与える体験学習も可能です。
まもなく、地元・福島大学に農学部が開設されます。やがては、この農学部とも連携し、JAファーム全体を演習場として使ってもらうことなども検討されています。
このように、食品残さを元とした循環型農業は、地元の人びとのつながりを強固にし、地域振興にも役立つものとなるはずです。6次産業化ともあいまって、仕事も生まれ、雇用を創出することにもつながるでしょう。
当計画は現在、最終段階にきており、2017年春には残さ加工場を中核としたオペレーションがスタートする予定。福島で始まる新しい循環型農業から、しばらくは目が離せません。
福島モデルとして海外へ
インドネシアと連携構想
じつは、このプロジェクトに注目しているのは国内の農業・食品関係者ばかりではないのです。東南アジアでも地域振興プロジェクトとして関心を持たれており、すでにインドネシアのバトゥ市では福島市との連携構想まで検討されています。
福島としては、農産物を輸出するのではなく、こうした取り組みのノウハウを「福島モデル」として提供するということになります。JAふくしま未来が中心となり、地元のリーダー農家や営農指導員の育成をサポートしていくことなども協議されています。インドネシアで成功すれば、さらにそこから、福島モデルが各国に発信されていくでしょう。
循環型農業を軸とした6次産業化の仕組みが、「福島モデル」として世界に拡がり、途上国の発展を支えることになる日もそう遠くはなさそうです。
福島モデル中核を担う
銀嶺食品に聞く成功の鍵
銀嶺食品は福島での6次産業化・循環型農業推進の中核を担うとともに、地元企業とJAふくしま未来のパイプ役としても重要な役割を果たす。
同社社長の岡崎さんは、福島モデルについて、「産地加工によって付加価値を最大化し、マーケットの要望に適った商品を、産地から直接出荷することがポイント」だと話す。「福島は震災でダメージを受けましたが、この5年間で、安心安全を担保する検査体制は最高水準のものになりました。厳しい状況だったからこそ、地域内での連携も強くなり、最先端の安心安全プログラムが確立できたのだと思います」。
杉浦宣彦さん
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
text: Kiminori Hiromachi
『AGRI JOURNAL』 vol.2 より転載